トレードには、ほかのビジネスのように大きな設備投資がありません。

環境を整えるのに多少の経費はかかりますが、会社を興してオフィスを構えたり、店舗を新設するような大掛かりな経費は必要ないのです。

最大の経費は見込み違いをしたときの損失ですが、「これがなければ……」と考え、現実を無視して避けようとします。
損失を喜ぶなんてムリですが、ある程度までは受け入れる姿勢が大切です。
そのうえで、「次はうまくやろう」と前向きな気持ちをつくるよう努めたいのです。

「また損しちゃった……」
つい、こんな言葉を使ってしまいます。

口に出さなくても、頭の中に思い描きます。


すると、その言葉が先々の行動に影響します。

自らの行動と結果を決定づけるといっていいでしょう。

自らの言葉によって「損する自分」というイメージが自然なものになるのが、人間の不思議な心理作用なのです。

トレードで損を出したとき、「やっちゃった」と言葉が浮かびます。
ここまでは当然の反応です。
そのあと、「よし次は!」と自分自身に言い返し、成功のイメージをつくります。

心持ちだけで結果は出ません。

根拠のある戦略が必要です。
でも、不必要な錯覚をはねのけるためには“根拠のない自信”、踏ん張らなくても前に進めるエネルギーを生み出す底力も欠かせません。

トレードの結果が生々しすぎるので、不要な混乱が起こることがあります。
混乱を避けるためには、情報の整理が重要です。

外部の情報については、自分のやり方、狙いどころなどを考えて、即座に「必要」「不要」を判断するべきです。そうしないと、抜け出せない「迷い」の世界に入ってしまいます。
哲学のない情報集めは、とてもキケンです。

ふと、他人の相場観に耳を傾けると、「迷い」から抜け出せなくなります。
自分の戦略があれば他人の意見は不要ですが、真剣に考えて「本当にこれでいいのだろうか……」と感じることはしばしばあります。
ところが、周囲に情報を求めたとたん情報が増えすぎてどうにもならなくなる……“相場あるある”です。

もっと確率の高い判断基準はないだろうか、本当に今の方法が適しているのだろうか、せめて数回に1回でも明日の値段がわかれば……トレードの悩みは誰でも同じで、どうやっても解決しないものばかりです。

でも、悩みながらも、迷わずに行動することはできます。
プロが大切にしているのは、この点なのです。

練習の売買だろうが、一定の資金を動かす“本チャン”の売買だろうが、期待と不安の両方を抱えて「それっ!」と行動することを求められます。
どんなときでも、いつも通りに「悩み」だらけですが、「迷い」を生まずに行動するしかないのです。

仕掛けるべきかどうか……これは、悩みではありません。あってはいけない「迷い」です。「仕掛けてヤラレるかもしれない」と考えつつも「見逃したら儲け損なうかもしれない」とも思う、これは永遠に答えの出ない「迷い」なのです。

仕掛けるべき場面ならば、迷わずに仕掛ける。
手を出すべきでない状況なら、迷わずなにもしない。
結果が良くても、はしゃがない。
結果が悪かったら、迷わずにポジションを閉じてから悩む。

人間は、外部からの情報を瞬時に評価し、さらに発展させていくので、内面で情報が際限なく膨らんでしまいます。
そのため、「自分の頭の中にある情報」を整理することは、外部の情報を整理するよりも重要度が高いのです。

その情報整理でポイントとなるのが、トレードに関するモヤモヤの区別です。それが「悩み」なのか「迷い」なのかを判断するのです。

悩みは解決しません。積み上がっていくだけです。
迷いは、その迷いが生じたプロセスを見直すきっかけとなります。
ただし、いざ決断というときに出てきてはいけないのです。