利が乗っていたら、機を逃さずに利食いしろ──こんな教えが込められているのが、「利食い千人力」という相場格言です。
「利食い千両」という表現もありますね。

最近は「利益確定」という言葉がよく使われますが、私からひとこと言いたい!

「利益確定」という表現は、そもそも、無責任なメディアが後講釈の市況解説で使ってきた言葉です。
相場が下がったとき、見出しの先頭につける言葉は決まっていて、「円高を嫌気して」「高値警戒感から売りが先行して」「先物売りで」と、いくつかのパターンがありますが、そのひとつで「利益確定売りが出て下がった」と説明するのです。

机で原稿を書く経済記者に、売られた原因がわかるはずもありません。

最前線にいるプロでも、投資家全体の動向を正確につかむことなどできないのです。

しかし、便利だから使う、それを読む読者も便利に受け止める……いつしか、とても軽いノリで便利に使われるようになり、「利益確定」という言葉を頭に思い浮かべるたびに、トレードの本質から離れていると感じてしまうのです。

ちょっと脱線して、相場用語についての注意点を述べましたが、以前から使われる「利益確保」は、「機を逃さずに勝ち逃げしなさい」という、まっとうな戒めの言葉です。

さて、現実をリアルに想像しましょう。
買った、上がった、利が乗った……いつ売っても利益です。

とっとと売れば「勝ち」が確定します。

ですが、問題は勝ちの「値幅」です。

小幅利食いに徹していたら、避けることのできない見込み違いの損、つまり「経費としての損失」をカバーしきれません。
そこで、必然的な損失をカバーするために、「大きなうねり」に乗って「利益を伸ばす」ことが必要になってくるのです。

「うまく乗れた!」と感じたときに行う、利を伸ばすためのガマンですね。

ですが、利食いによって、単なる評価益(絵に描いたモチ)を“ふところに入れる”ことの重要性は否定できません。

デリケートな問題で、ちょっと混乱しやすいかもしれませんが、「利益を確保する利食い」と「利益を伸ばすポジション維持」について、もう少し掘り下げてみましょう。

波に乗れたときの“ねばり”を実現する「待つ」は、利食いせずにポジションを放置(維持)することです。

一方、うかつに手を出さずに“機をうかがう”場合の「待つ」は、現金の状態を継続することです。しかし、“機をうかがう”ということは、狙い目と出動のポイントがハッキリしているということ。

言い換えれば、機敏に行動できるということです。

この機敏な行動が「ポジションをつくり直す」ことにつながるならば、利食いせずにポジションを維持する「待つ」を少しゆるめて、「利食い千人力」を実践してもいいではないか──こんな考え方も成立します。