ちょっと株数が多いために、「あれ、ダメかも……」と感じながらもポジションを維持して、結局は損切り……「株数を抑えていれば」などと後悔する。


株数は多くないけど、損切りが遅れて放置した結果、まあまあの値幅のヤラレ……ダメ玉の維持に長い期間とエネルギーを費やし、ほかのチャンスを逃してしまう。

小さな悪循環でも、蓄積すると、かなり大きなマイナスとなります。
躊躇(ちゅうちょ)せずに行動する、ポジションを維持するべきときはジッとする。
株価そのものはコントロールできず、予測の的中率もままならない現実の中で、売買にメリハリをつけることで「結果をコントロールする」するのが、実践家の狙いです。

それを可能にする、いや、どうにか実現するための工夫が「分割売買」なのです。

当てようと躍起になっても、なかなか当たらない。
だから、真剣な予測で「売りか買いか」を決めて行動しながらも、その後の値動きに応じて予測を変化させる、その変化をポジションに反映させる“対応”が重要です。
そのためには、「分割売買」が不可欠なのです。

狙いすまして「よしここだ!」という“一点狙い”は、なにかとギクシャクした状態を生みます。

柔軟に対応する姿勢が、どうしても薄らいでしまうのです。

決め打ち、一点狙い、気合いを入れた予測、自信たっぷりの読み……これらには「当たったら気持ちいい」という期待があるだけで、実際に当たってもカンタンに大きな利益につながるわけでもないし、曲がったときは対処が遅れます。
“やってる感”たっぷりで、その瞬間はいい感じでコーフンするんですけどね・・・。

最初から、当たったり外れたり、まあ予測なんてそんなものだ……とユルく構えているほうが、素直な対応を実行できるというもの。

だから、「分割売買」なのです!

ものごとには必ず、好循環の時期と悪循環の時期があります。
なんだか知らないけどうまくいくときもあれば、それほどヘタを打っていないのに結果が出ないときもあるわけで、運というか巡り合わせというか、どうしてもコントロールできない、読むことのできないブレがあるのです。

相場の予測がかなりの確率で当たるのなら、不測のブレが影響する度合いも小さいのですが、当たったり外れたりなので、相乗効果でブレまくります。
だから、ビギナーズラックで大儲けとか、迷いながらモタついたら結果的に大成功、なんてことも起こるのです。

好循環と悪循環、どちらもあるんだと考え、好循環のときはガンガン攻める、悪循環のときはお茶をにごすようにガマンする……一定の経験があれば、こういった発想をもつでしょう。
でも、「好循環のときは……」という発想には、警鐘を鳴らしたいと思います。

たしかに、「取れるときは取る」というイメージは大切です。
悪い玉は早めに切り、良い玉はさっさと利食いせずにねばるのが正しい考え方です。
でも、いわゆる「好循環」のイメージは、たいした流れでもないのに期待を膨らませてしまう状態、おかしな妄想だけで行動してしまう過ちを招きます。

「分割売買」は、こういった好ましくない過度な期待を、そもそも発生させないための工夫、“安定”と“安全”を第一に考えるプロのワザなのです。

ギリギリの線を歩んで大儲け──そんなドラマチックな売買なんてありません。
あったとすれば、「あぶなかった」と反省すべきケースです。

めいっぱい買ってギリギリまでねばり、大暴落直前で売り抜けた……映画やドラマには出てきますが、実は、決してカッコいいトレードではありません。「あと少しで息の根を止められるところだった」と猛省すべき結果です。

プロのワザというものは、ものすごく地味で、説明しても「おぉっ!」と感じてもらえない、だけど、それなりの経験と大きな覚悟がなければ実行できない行動です。
値動きを見ながら、それなりに手を出し、しかし絶対に大負けしないギリギリを進む、意外な“スゴワザ”なのです。