バックテストは、しょせん過去データによるもの──とても実践的な考え方で、実際に売買したときに起こり得る「最適化のワナ」を警戒する姿勢です。

例えば……過去1年間の株価変動を分析して、「こういう動きがあったら短期で大きく上伸する」なんて傾向を見つけ、それをルール化(数式化)することを想像してください。

他人との競争を意識すればするほど、短期的な視点に限定され、「たまたまの現象」を拾って「今後も再現する」と決めつけてしまうことがあります。

特に注意すべきは、「直近の過去」です。
長期間のデータがない場合に限らず、「直近の傾向=まだ通用する=すぐに儲けられる」と考えがちなのです。

そこで、過去の動きを検証したあと、すぐに本チャンの売買をスタートさせるのではなく、少ない株数で実地の売買を試みて“仕上げのテスト”をしようと考えます。
これを、「フォワードテスト」と呼びます。

これだって、実践家が昔から行っている「試し売買」と同じで、特に新しい発想ではありませんが、とことん“計算に偏りがち”なシステムトレードの世界で、「盲点を消す」ために、あえて「フォワードテスト」と名称をつけているのです。

上記のフォワードテストは、
「過去データによる検証」→「実地のテスト売買」(数量を抑える)
ですが、もう1種類、別の考え方によるフォワードテストがあります。

「古い過去データによる検証」→「直近の過去データで再検証」
という方法です。

例えば、過去5年間の株価データを持っているとします。
この5年間で利益になるロジック(基本ルール)や設定で、いきなり本チャンの売買をするのはキケンだ……こんな二重の慎重姿勢から、では「数量を抑えた実地テストをしよう」というのが、前項の説明でした(フォワードテストA)。

もうひとつは、例えば過去5年間のうち、直近1年を除いた期間(5年前~1年前)の4年間のデータで最適と思われる設定を決め、その設定を直近の過去1年間のデータでテストするという方法です。
直近の過去1年間を、「架空の未来」として考えるのです(フォワードテストB)。



最適値(最も利益になる設定)を求める際、つまり「売買の数式を決める」ときは、直近の過去1年間を見ません。
だから、「結果論で儲かる設定になる」というような誤り、一般的にいうカーブフィッティングに陥りにくい、というアイデアです。

実地によるテスト売買でないとわからないこともあるのですが、単に過去の動きに合わせて設定してしまうミスを少しでも避けようとする工夫です。
理論上は、本チャン売買のスタート時期を早めることができます。