最も安全な乗り物とされているのが飛行機。

特に大型の旅客機は、設計だけでなく、運航のマニュアルまで厳格です。
エンジンが4基ある機体で3基がストップしても飛びますが、1基にトラブルがあっただけで、念のため最寄りの空港に降りると決めています。

上空で自動操縦にしているときも、パイロットはコックピットでボサッとしているのではなく、機体の状況を逐一確認しながら、「今この瞬間、トラブルがあったらどう対処するか、降ろすならどこか」と考えているのです。

徹底した安全管理によって、まず間違いなく目的地に到着するのに、大げさにいえば、常に「落ちる」ことも想像しているということです。
各種のスイッチだって、操作性を考えるだけでなく、「人間はミスをする」という前提で設置されています。

考えてみれば、例えば日常の待ち合わせで早めに着くようにするなど、不測の事態を想定しておくのが常識です。
飛行機は落ちる、車は事故に遭遇する(だから保険に入る)、アナウンサーはかむ、酔っ払いは寝過ごす……実はすべて当たり前なのです。

それなのにトレードでは、「損をしない方法」を求めてしまいます。
理屈ではわかっているのに、ちょっとの見込み違いさえも感情が受け入れられないのです。

上手にやろうというイメージは人間の創造性を刺激する大切な要素ですが、「当てるんだ」と意気込むと、盲点が生まれてしまうと考えられます。

行動範囲を狭くしたほうが精度が高くなりますし、経験による質の向上も期待できます。

でも、視野は広く保つべきです。
「儲けるぞ」と自分を信じながらも、「ミスはある」「対処方法を考えておくことが不可欠」との認識を捨ててはいけないのです。

こういった複雑なことを、“自分の頭の中”だけで議論して解決するのが、相場で最も大切な活動です。

株は「買い」だけではなく、下げを狙う「カラ売り」もありますし、ポジションの取り方ひとつで戦略は無限に広がります。
でも、わかりやすく「買うときの方法」に限定して考えてみます。

経験ゼロの人が考えると、「どの銘柄を買えばいいの?」となるでしょう。


もちろん、本格的なトレードであっても銘柄選びは重要ですが、初心者は単なる“当てもの”として「どれ?」と考えます。ところが、考えを進めるだけの知識と経験がないために思考が止まり、他人の情報に頼ります

しかし、ひとたび「手法」という発想が生まれたら、「どこで買うか」と考えるでしょう。

すなわち、「どんな局面で出動するか」「何を基準に買いをスタートするか」という切り口です。

こういった発想を突き詰めていくと、だんだんと視野が広がっていきます。


「あえて休むべき場面はどこか」といった考え方も生まれますし、選別投資の手法でも、有望な銘柄を持ちっぱなしにするのではなく、「資金全体の稼働率を調整する」なんてアイデアが出てくるわけです。