私の娘が「相場やってみたいな」とつぶやいたので話を聞いてみたところ、「1回でも損をしたくない」みたいな考え方でした。
私は、「だったらやるな」と即答しました。

 

半分は勝ち、残り半分は負けるという前提で臨まないと、弱みの部分が増幅して大負けしてしまうからです。

弱みにも目を向け、堂々と容認する必要があります。
自分の軸を保ち、弱みを容認する“強い姿勢”が求められると思うのです。

といっても、「どうにでもなれ」という開き直りではありません。
日常で、他人に大迷惑をかけるような振る舞いは、誰も個性とは認めません。
でも、細かい欠点をいちいち、あげつらうことはないでしょう。

ある程度まで個性と認識します。

そんなバランス感覚と、同じようなものだと思うのです。

利用している手法について、「ここが強みだ!」としっかり意識すると同時に、「ここが弱みなんだ」と同じように目を向けることが大切です。

どんな手法にも、メインの“狙い所”があります。

その狙い所そのものが手法の「核」であり強みですが、必ず表裏一体の弱みもあります。

例えば、低位株を対象にする手法、つまり「人気の圏外にある安い時期に仕込もう」という狙いは、下値不安が少ない、上昇した際の率が大きい、といった点が強みです。でも、動くまでに時間がかかってしまうケースも少なくない、といった弱みもついてくるのです。

そこで、人気の圏外にある銘柄に目をつけておき、「動き始めてから乗ろう」とか「上げの直前を探ろう」といったアイデアを思いつきます。

実は、その対応にも新たな弱みがついて回るという、いわば堂々巡りが現実です。
だから、絶対に外せない狙いを中心にして強みの部分を固め、セットの弱みを受け入れる、妥協点を探る、といった発想が重要です。

強みを最大限の利益につなげ、一方で、弱みは可能な限り損失につなげない……実に都合のいいことを考えるのがテーマですが、弱みを隠さない、存在しないかのように無視してはいけない、といったことがポイントだと考えます。

日常生活の「外食」を例に考えてみます。
同じ場所、同じサービスならば、おいしいものは高い、それほどおいしくなければ安い、これが原則です。

毎回おいしいものを食べたいところですが、ふだんはリーズナブルなものを選ぶでしょう。値段が手ごろだという強みを選び、それほどの味ではないという弱みを素直に受け入れるわけです。
おいしいものを選ぶときは、値段が高いというマイナス面を納得します。「たまにはいいでしょ」とか、「特別な日だから」という具合に。

おいしいものを食べながら「高いなぁ……」とつぶやけば、「じゃあ来るなよ」という話になりますし、お手ごろ価格の食事について「素材の質が……」と文句をつけたら、「それなら高い店に行けよ!」と言われてしまいます。

トレード手法で、確固たる強みがあるのに、弱みの部分だけが表に出てしまう、つまり、うまく機能しなかったときのケガを大きくしてしまうことがあります。
まさに「相場あるある」ですが、弱みの部分を軽んじてしまうことが大元の原因ではないでしょうか。