相場を張っていると、いつのまにか“イマイチ”のポジションが手の内にたまります。

限られた資金で売買し、効率を考えて一定以上を稼働させているので、「資金が余ってこまる」なんてことはありません。でも、自分がやっていることを客観視する意味で、すぐに現金が足りなくなる、窮屈(きゅうくつ)な感じになってしまう理由を明確にしておきましょう。

よくないポジションがたまる(現金が少なくなる)要因は、2つあります。

1つめは、私たちの心にある、利益への期待です。
ポジションがないと利益は生まれない──いきおい、少し幅広く手を出してしまうのです。

2つめは、前述した「期待」とつながる問題ですが、判定の基準が甘いことです。

「買いのチャンスかな?」と思い立って検討した結果、「ちょっと不安」だったとします。でも、買わずに上がったら悔しいし、不安だという自分の判断もあいまいだし……とりあえず、ということで、「やめる」選択肢よりも「ポジションを取る」選択肢を選びがちです。

「そうならないよう気をつけている」との反論もあるでしょうが、ほんのちょっと基準が甘いと、「建てる」→「手仕舞いしない」という流れで、ポジションは増える一方です。口座に現金が勝手に入ってくることはなく、自分の意思で売り手仕舞いしてはじめて現金残が増えるのです。

相場は「売りと買いだけ」なんていいますが、本当に難しい作業なんですよね。
利益を求めてガツガツしなければならないのに、逆向きの力、ギュッとブレーキを踏むことも求められるのですから。

ふだんから私は「建てたあとの対応がすべて」などと述べていますが、ポジションを建てるときは、銘柄やタイミングを厳選して、「もう、これしかない!」「やるっきゃないぞ!」という状況だけを採用する、これを当たり前の習慣にするのが第一なのです。

ただ、中源線では少し事情が異なります。

中源線は、書籍『新版 中源線建玉法』でも述べているように、「規格化された出発点を決める方法」です。

これを受け、書籍の「第四部 実験と実践」では、慣れるための方法として「転換時は必ず建てる」ことを勧めています。
(利が乗って裁量で手仕舞いはOK、ダマシと判断して裁量で手仕舞いもOK)

手がける銘柄を決める時点で丁寧に考えているわけですが、中源線の転換ではサッと建てる、少なくとも初心者のうちはそうしろ、ということです。

ちょっとした観点ですが、こんなふうに立ち止まって考えてみると、「中源線は、うまく組み立てられているな」とか、「裁量の目玉は、建てたあとの手仕舞いか?」などと、思考が広がっていきます。

「儲かる」「儲からない」から離れ、落ち着いて考えてみることの価値を再認識できます。