チャートを見ると、この銘柄は上がりたがっている──。

株価そのものを事象として観察しているのに、擬人化したような、とても情緒的な、味のある表現が使われることがあります。株式市場の「文化」と呼んでいいでしょう。

こうした情緒的な表現は市況解説でも使われますが、使い方に疑問を感じることがあります。
例えば、上げが鈍くなった状況を示すために「買い飽きた」とか……。

マーケット参加者はみな、儲かるのなら、とことん儲けようとします。
買い飽きるなんて、ないでしょ!

商業的に“万人ウケ”を狙った情報は、たいてい次の2つのどちらかです。

  • 読者(投資家)の不安をグサッとつく
  • 現実離れした期待を読者(投資家)に与える

私たち人間は感情の生き物です。
株式投資・トレードにおいても、情緒的な言葉を使って考えることが自然です。とはいえ、感情をかき回すような表現には警戒すべきです。

冷静さを維持するうえで、株価が動くメカニズムを考えてみます。

株価が上昇するのは、買いが集まるからです。
では、弱気筋のカラ売りが下げ相場を引き起こすのでしょうか?

通常は、「買い人気」で上昇し、その買い人気が膨らんでいく動きが止まることで、自然に下落トレンドに移るのです。上昇した時点から、下げを狙うカラ売りも増えるのですが、彼らは決して主役ではないのです。

「買い飽きる」ことなんてありませんが、上昇を疑問視していた投資家までもが強材料に納得した段階で、すでに新規の参入者は激減しています。ここが、天井を打って下落に向かうタイミングです。

ということは、個別の銘柄でも、マーケット全体でも、参加者の買い余力がなくなってきた、つまり、すでに多くの参加者が買いついて「上がってくれ」と強い期待を抱いている状態で黄色信号、赤信号が点灯するということです。