インターネット上で気軽に交流できる「SNS」は、例えば年配の人たちも「LINE」で家族や友人とやり取りするなど、すでに日常のツールです。
ところが、便利でお手軽な半面、危険も潜んでいます。
SNSを通じて知り合った相手をうっかり信用して少女が誘拐されるなど、社会問題となる事件もあり、あらためて「情報弱者」という言葉が浮かび上がっているのです。
でも、「情報弱者」として被害に遭うのは、世間を知らない子どもだけではありません。
「ストップ高銘柄を当てます!」なんて宣伝文句を笑う、経験豊富な個人投資家でも、「驚異の的中率」と具体的な数字が示されていると、少なからず気になるものでしょう。
今日は、相場の世界で生まれる「商業的ウソ」を取り上げ、うっかりと錯覚しないためのオトナの知恵を考えます。
金融マーケットで価格がつくのは、売りと買いが“出合った”からです。
当たり前のことですが、ここに真理があります。
真剣に「売りだ」と考えている参加者と、確信をもって「買いだ」と考えている参加者が(株数的には)同じ数だけ存在している、ということです。
私たち投資家は、いろいろな理論で「上がる」「下がる」と予測を立てますが、根本にある理論では……どんなときでも「上か下かの確率は必ず2分の1」なのです。
しかし、そんな理屈を前面に出してしまうと、ちまたの「情報屋」の商売が成り立ちません。
「当たりまっせ!」「儲かりまっせ!」という雰囲気をかもし出し、「どこかに秘密があるのではないか」と期待する大衆に迎合するのが、最も効率の良いビジネスなのです。
あからさまなウソもありますが、いわゆる悪意のないウソも生まれる──株式市場には、そんな構造があります。
投資情報に「ウソ」が生まれるカラクリが、厳然と存在しているのです。
ただ、残念がる必要はありません。
また、小さな正義感を持ち出して憤る必要もありません。
プレーヤーは、そんな偏った情報の中に身を置いている現状を認識し、怪しげな情報に注意したり、自分の行動をコントロールする最善の方法を考えればいいのです。
情報を発信する者の真の意図はなかなか見えませんが、ベタな方法に気づくことはできるでしょう。
例えば、「切り取られた情報」です。
株価チャートの短い期間だけを見せて、「ほら、こうして買い場が見つかるんですよ」みたいな説明だったら警戒すべきですね。
どんな銘柄でも天底を当てる……あり得ません!
銘柄を絞れば、さまざまな場面でカッコよく泳ぎきれるのでは?
これも実現不可能! 生産性ゼロどころか、マイナスの価値しかもたない妄想です。
でも、勝率を高める、俗にいう「当てる」ことを目指すのは自然なことです。
例えば「上でも下でもいい、動いたほうについていく」と、事前の予想なしでトレードに臨んだとしても、行動の瞬間では必ず、未知の未来を「当てよう」としているのです。
“投資情報に「ウソ」が生まれるカラクリ”は、業者側に問題があると読み取れたかもしれませんが、「予測的中」を求める投資家側の心理こそがカラクリの根幹かもしれません。
「頭ではわかっているんだが……」と、つい望ましくないほうに傾く投資家心理を理解したうえで、「自分もそのひとりだ」と考えるべきです。
その謙虚な(現状を正確に計る)姿勢が、合理的なやり方、実践における注意点など、現実的な対応に気づかせてくれるのです。