マーケティング眼鏡 -3ページ目

ビールのマーケティングは高倉健と菅原文太に学べ

近頃のビール系飲料のCMを見ていると、どれも「うまい」「おいしい」の連発。いささか聞き飽き、見飽きた観がある。いや、それ以上に、あまりしつこく言われると、「本当にうまいの?」って疑ってしまう。

 

 

 

うまい」「おいしい」は文字や言葉に表さないと伝わらないのだろうか?

 

本当に飲んでみたくなるビールのCMとは?ただただ飲んだ時の顔の表情だけでそのおいしさを表現できないんだろうか?そんなことを考えたら、まさにピッタリの場面に出会った。

 

『幸福の黄色いハンカチ』で、刑務所から出所してきた男が店で久しぶりにビールを一気に飲むシーン。

 

 

これはビールのCMではない。だけど、このシーンを見てしまうと、「うまい」「おいしい」を連発するCMは何かわざとらしく、軽く見えてしまう。

 

ちなみに、高倉健と菅原文太が飲むビールは、赤星と言われるサッポロの『ラガービール』。ぼくの一番のお気に入り。彼らのあの表情に嘘はない!やはり「男は黙ってサッポロビール」だなぁ……

 

 

 

ブルックス・ブラザーズは、ぼくの青春そのもの!

新型コロナウイルス感染者の増大、大雨による大災害など、暗い話でもちきりなのに、先週ぼくにとってはさらにショッキングなニュースが流れた。あの老舗紳士服のブルックス・ブラザーズが経営破綻した。

 

ブルックス・ブラザーズと言えば、故ケネディー大統領も愛用していたアメリカを代表する紳士服。特に、アメリカ東部のアイビーリーグの学生が来ていたアイビールックの代表格でもある。

 

ぼくは、そんなブルックス・ブラザーズのネイビーブルーの3つ釦ジャケットに憧れ、そしてそれを着こなす学生がいるアイビーリーグの大学に憧れた。将来アメリカ留学をしたいと心の底から思ったのはその時だ。

 

ぼくが通った日本の大学には、アイビーリーグの一つ、ダートマス大学(Dartmouth College)との交換留学制度があり、ラッキーと思ったが、成績が全くダメで断念。

 

ただ、幸運なことに、入社した会社で海外研修生に選ばれ、自然豊かなコロラド州のデンバー大学大学院ビジネススクールに留学することができた。

 

ぼく自身の、ブルックス・ブラザーズのアメリカならではの思い出はというと。

 

一つ目は、留学を終えてサンフランシスコ支店に勤務になった時のこと。ユニオンスクエアに面するオフィスの斜め前にブルックス・ブラザーズのお店があった。着任当日、自分に合うスーツを買うために喜び勇んでそのお店を訪ねた。そして、店員に話しかけると、ぼくに合うスーツは“ボーイズコーナー”にあると言われた。ぼくは当時26歳、子供に見えたのかなぁ。グレーのスーツとネクタイを買った。そのブランドが、Brooksgate、ブルックス・ブラザーズの入門ブランド。スーツは処分しちゃったけど、ネクタイだけは今でも大事にとってある。

 

 

二つ目は、シカゴに本社があるアメリカの製紙メーカーの東京事務所に勤務していた時のこと。出張で本社を訪れた時、早速現地のブルックス・ブラザーズのお店に寄った。ボタンダウンの定番シャツを買うため。お店でぼくのサイズを言うと、店員は不思議そうな顔をして、そんなサイズはないと断言する。そのサイズとは15 1/2 & 31。つまり、首回りが15.5インチ(約39センチ)、袖の長さが31インチ(約79センチ)。

 

その店員は、袖の長さが31インチなんてブルックス・ブラザーズにはないと言い張る。そんなはずはない、現にその時に着ていたシャツが31インチだったから、彼に見せたら何とも不思議そうな顔で、こんなサイズは見たことがない、とのこと。袖は32インチからだと言う。つまり、31インチは、ブルックス・ブラザーズが日本向けに特別に作った日本だけで販売されている袖のサイズのようだ。本場アメリカにないことに驚くばかり。結局、ネクタイを2本買って店を出た。

 

他にも思い出がたくさんあるブルックス・ブラザーズ。まさに、ぼくの青春そのものだったなぁ。

 

また、親父と飲みたいなぁ

時々、無性に飲みたくなる。親父とだ。だが、親父は8年前に他界し、それは叶わぬ夢。

 

父の日にウィスキー(Maker’s Mark)を持って実家に帰ってきた小栗旬演じる息子が、親父役の火野正平と二人でウィスキーを飲むテレビコマーシャルを見た。

 

 

久しぶりに会う息子を見て、親父は嬉しさのあまり、めったに出さないグラスを棚から持ってくる。息子はハイボールを作り、二人で向かい合って飲む。「うまい?」と小栗旬が聞くと、「お前も、息子にウィスキーもらったらわかるよ。」と火野正平が返事をする。そこには、息子と飲める親父の嬉しい気持ちがよく現われている。

 

実は、父の日のために作ったこのテレビコマーシャルには、30秒バージョンと60秒バージョンの二つがある。

 

ぼくが好きなのは、60秒バージョンの方。飲みながら、火野正平が「今度いつ帰ってくんだ?」とポツリと聞く。「正月かなぁ~」と小栗が答えると、一瞬言葉を失った火野が「遠いな」と寂しげにつぶやく。

 

 

この部分は30秒バージョンにはない。だが、この会話が一番心打たれる。寂しいけど、ストレートには言えず、また表情にも出せない親父。「遠いな」という一言が、親父の気持ちの全てを言い現わしている。

 

コマーシャルでは、紹介する商品のベネフィットや価値を伝えるのが一般的。つまり、その商品を買えばこういうことができますよ、だから買ってください、というメッセージを視聴者にアピールする。

 

でも、このコマーシャルでは、Maker’s Markを買ってくれ、とか、Maker’s Markはこんなに美味しい、とかは一言も言わない。ただ、父と息子が向かい合って飲んでいる。それだけなのに、なんだかMaker’s Markが飲みたくなる。

 

ぼくはあまりウィスキーを飲まない。でも、天国の親父と今度飲むんだったら、Maker’s Markかな。親父もそう思うかい。