寿町関係者への取材で訪れる機会があるビル。その店はビルの1階にある。ドヤ街に隣接するため、周辺環境は決して良くはない。だが、店に一歩足を踏み入れた途端、店外の殺伐とした雰囲気が一変する。照明を落とした店内は薄暗く、ヨットの操舵輪がディスプレーされていたりと、横浜らしくマリン風味。テーブル席の他にウェイティングバーもある。また、夜が早いこの界隈には珍しく、深夜営業をやっていたりする。
実は、これらは横浜の古い洋食レストランの流儀。つまり、この店は結構な老舗で、今はなき本牧のリキシャルームや関内のオリジナルジョーズとかと同じジャンルの店ということになる。昔のリキシャほど真っ暗ではないけど、この店も相当暗くて、テーブルにあるキャンドルのおかげでメニューの文字がギリ読めるぐらい。

いかにも格調高げだけど、値段はそんなに高くない。そもそも寿町のすぐそばだし。。注文したカツレツとオニオングラタンスープは、昔ながらの洋食の味。
来店客はこの界隈に似つかわしくない年配の紳士が多く、奥さんとおぼしき女性と黙々と食事を楽しんでいる。満席に近かったが、店内は驚くほど静か。一説によると、人は暗い場所だと声が小さくなるそう。照明を落としているのは、静かに食事を楽しんでもらうための配慮なのかも。食事を終えて外に出ると、夜近い夕方であるにもかかわらず店内より明るかった。