いらっしゃいませ。そしてお帰りなさいませ。
庄内多季物語工房へ、ようこそおいで下さいました。
山形県庄内地方は、澄んだ空気と肥沃な土壌、そして清冽(せいれつ)な水に育まれた、新鮮で滋味豊かな野菜や果物の宝庫です。
それに加えて、時に不思議な現象に遭遇する土地でもあるのです。
今回、物語収穫人である私、佐藤美月が遭遇致しました不思議な現象は、前編後編に分けてお届け致します。
それでは前編を、どうぞこちらから、ご堪能下さいませ。
決して、その時が初めてというわけではありませんでした。
それでも、澄み渡った青空の懐にすっぽりと抱かれる度に、こんなに綺麗な風景が存在する世界で生きていたんだな、と改めて実感せずにはいられないのです。
それというのも、私の勤務先のシフトサイクルは、通常四勤二休で、一日の拘束時間も長いので、仕事のある四日間は、どうしても仕事一色で占められてしまうからです。
そのため、自然豊かな庄内地方に暮らしていながら、青空や森林の存在を忘れがちでした。
ただ、青空や森林の存在に意識を戻せば、それらの澄明(ちょうめい)さに、すぐに心を合わせることが出来ました。
つまり、その時にどんな世界で生きるのかを決めているのは、当人の意識であり、住んでいる場所自体は、然程関係がないのでしょう。
とは言え、豊かな自然を身近に感じたいとなった時に、特別に時間を割いて山奥にまで出掛けなくても、それらがすぐに目に入る場所に暮らしていることは、確かでした。
その時私が腰掛けていたのは、田圃の一部を潰して作られた、広大なデパートの外にある、木製のベンチでした。
取り立てて絶景スポットではありませんが、そこからでも、澄み渡った青空と、新緑に萌えるこんもりと生い茂った木々が、駐車場を取り巻いている様子が、悠々と臨めたのです。
そもそも、何故そんな所にいたのかというと、四日間に渡る夜勤を終えて、漸く一息吐いたところでしたが、食事を作るのも億劫だったので、デパート内にあるファーストフード店で軽く腹拵えをしてから、帰宅しようと思っていたからです。
近隣の住人達から親しまれているそのデパートは、勤務先と自宅の丁度真ん中にあり、食料を調達するために、毎日のように寄るポイントとなっていました。
ただし、ファーストフード店が開くのは、朝十時からとなっており、それまでの時間を持て余した私は、麗(うら)らかな日和に誘われて、デパートの外にあるベンチに腰掛けて、待つことにしたのです。
それはたった十五分ほどの間でしたが、そんな短い時間であっても、不思議な現象に遭遇する時はあるものです。
そこから仰ぐ、澄み切った水色の空には、柔らかな白い雲が、マーブル模様のように繊細に溶け込んでいました。
新緑に萌える木々は、若草色の硝子細工で出来ているように、透明感に溢れています。
色とりどりの車が並んでいる駐車場には、蒲公英の綿毛らしき物が幾つか、ふわふわと空中浮遊散歩を楽しんでいました。
エレガントなロングスカートを履いた若い母親が、二歳くらいの丸坊主の男の子が無邪気に動き回るのを相手にしながら、デパートの入口へと近付いて行きます。
そこから姿は見えませんでしたが、鳥達の可愛らしい囀(さえず)り声が、姦(かしま)しいほど、辺りに響き渡っていました。
つい先程まで、大量の仕事に慌ただしく追われていたのが嘘のような、ゆったりとした時間が流れていました。
・・・ 澄み渡った青空と、心を合わせた日。〈後編〉へと続く ・・・
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佐藤美月は、小説家・エッセイスト・ライター・コラムニストとして、活動しております。
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