良い練習拠点の重要性:ムーアタワーズ&マリナロ組の引退ニュースを受けて | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

オークビルの練習拠点に飾られたバナーと一緒に撮った写真が三浦選手・木原選手のツイッターに掲載されましたね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これって一時的にこの位置に貼ってあるのかな?

じゃないと客席からリンクが見えにくくなりますよね。まあ、それはどうでもいいか。)

 

 

そして三浦選手も木原選手も、「チーム」への感謝をコメントとして添えています。

 

オークビル市の Sixteen Mile Sports Complex (SMSC)はりくりゅうのコーチのブルーノ・マルコットさんが「ペア競技プログラム」のヘッドを務める Skate Oakville というスケートクラブの本拠地です。

 

このスケートクラブの事務局長がジョニ・マクフェイルさん、非常に有能で心配りの出来る人です。これまで色々とりくりゅうペアのためにも便宜を図ってくれています。

 

 

 

 

そして2019年のNHK杯にはりくりゅうと一緒にキスクラに座っていたのがブライアン・シェールズさん。

 

 

 

 

 

 

いつも笑顔で明るく、リンクで指導しています。

 

そしてもちろん、マルコットコーチの妻、メーガン・デュハメルさんもチームの重要な一員です。(愛娘のゾーイちゃんも!)

 

 

 

 

メーガンはルールやスコアの分析にも非常に長けていて、現役時代は演技が終わる度にいつも細かいところまでしっかりとチェックをして、どうすれば次の大会に活かせるのか、を考えていたと言います。

 

またメーガンが三浦選手を特に目にかけていることは、演技動画を見ての厳しい批評やオフアイスのトレーニング時のスパルタ指導からもよく分かります。

 

しかしりくりゅうペアが2019年の8月に初めてオークビルに移ってきた時、彼らを暖かく迎えてくれたのがリンクメイトのカースティン・ムーアタワーズ&マイケル・マリナロ組であったことも忘れてはいけません。

 

カースティンたちは当時(デュハメル&ラドフォード組が平昌後に引退したこともあって)、カナダのペア界ではナンバーワン、そして世界でも常にトップ6~8位につけていました(平昌では11位でしたが)。

 

そこに日本から新しいペアがやって来た。しかもブルーノとメーガンが直々に面倒を見る、という。

 

自分の練習しているリンクに新しい選手が移籍して来る時、受け止め方は様々だと思いますが、特にメインのコーチを分かち合うことになる場合は必ずしも「大歓迎!」と心の底から思えるとは限りません。

 

実質的に自分(たち)へのアテンションが分割されるわけですから。

 

ただ、その一方で力のある選手やチームが同じリンクで滑るようになることで、モチベーションが上がったり、参考になることも否めません。

 

上手く行った例としてはアイスダンスのデュブルイユ&ローゾン夫妻のIce Academy of Montreal (テサモエ対パパシズのせめぎ合いは除いて)や、一時期の(ユヅ&ハビ時代の)クリケット・クラブなどが思い浮かびます。

 

何はともあれ、りくりゅう達がまだ組んで日が浅いペアだったこともあり、先輩ペア(実質的に年齢は木原選手と変わらないのですが)としてカースティンたちは新しいリンクメイトを何かと気にかけてくれたのでした。

 

 

それから数カ月後、両ペアが一緒に出向いた2019年のNHK杯。

 

りくりゅうたちは最初のGP大会で総合180点を切るスコアで5位になり、大喜びしていた。同じ大会でカースティンたちは2位、総合で208点余り。

 

次に対戦したのは2020年の四大陸選手権で、カースティンたちは絶好調、SPは首位で総合3位、スコアはトータルで201点。一方、りくりゅうたちは少し失速して167点。

 

この頃はまだ余裕でカースティンたちがりくりゅうに勝てていたのです。

 

ところが調子が狂いだしたのがたった一カ月後、自国開催のモントリオール・ワールドがコロナパンデミックのせいで中止になったことからでした。この点についてはマルコットコーチもインタビューで言及していましたが、せっかく上り調子になっていた矢先の大会中止は(特に)カースティンにとって大きな打撃だったようです。

 

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ここでちょっと横道に逸れますが

 

 

カースティン自身、マイケルと組む前はディラン・モスコヴィッチがパートナーで、こちらとの方が実は成績が良かったんですよね。いっときはデュハラドと実力で拮抗して、今後はどちらがトップになるのか、という議論もあったほどでした。(実際、ソチ五輪ではメーガンたちの8位を抜いて、5位になっていました)

 

でもソチのすぐ後、「絶対にあと二回はオリンピックに行きたい」とカースティンが主張して、年の離れたディランよりもマイケルを選んでパートナーをいきなり変えた時にはけっこう皆、ザワついたものです。

 

 

 

 

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というわけでカースティンは非常に勝ち気で上昇志向、とも思われたのですが、マイケルとはなかなか思ったほどには成績が上がらなかった。それがようやく2019年頃から四大陸選手権でメダル(銀・銅)を獲るようになり、2020年のモントリオール・ワールドでも表彰台を目指せるところまで調子が上向きになっていたのです。

 

せっかくここで勢いを付けて北京オリンピックへと持って行きたかったところ、思いがけない世界規模のコロナ感染拡大が始まった。それから1年以上も実戦がなく、カースティンはどんどん落ち込んで行ったとインタビューで言っていました。

 

 

 

 

 

 

パンデミックのあおりを受けてりくりゅう達も大変な目に遭い、カナダで黙々と練習を積んでいたわけですが、彼らの場合はその甲斐あってストックホルム・ワールドで会心のSPを披露します。

 

アメリカやカナダのペアを抜き、いきなり6位発進。トータルでこそ10位に順位を落としましたが、とにかくこの初々しい日本のペアが世界の注目を集め始めた大会でした。

 

その後の三浦&木原ペアの快進撃についてはここで繰り返す必要もありませんが、躍進するリンクメイトとは逆に、惨憺たる2021‐2022年シーズンを送ったカースティンたちでした。

 

オフシーズン中にまさかと思われたヴァネッサ・ジェームスとエリック・ラドフォードの復帰もショックだったでしょう。カナダの連盟やCBCなどのメディアがやたらこの新しいペアの結成を盛り上げたのも不思議でした。

 

このせいでカースティンたちが仲良くしていたもう一つのペアチーム、エヴリン・ウオルシュ&トレント・ミショー組のオリンピック出場枠が急に脅かされることになったのですが、何故か共倒れのようにカースティンたちまでもがシーズン開幕から調子を崩してしまいました。

 

年明けのカナダ選手権ではようやく、本来の実力通りの演技を見せて優勝したムアータワーズ&マリナロ組でしたが、ドラマはまだありました。

 

コロナ感染の後遺症を理由に大会を途中棄権したヴァネッサたちが、良い演技を見せたエヴリンたちをさしおいて五輪チームに選出されたことから、かなり多くのメディアやファンが疑問を呈したのです。この時もカースティンがかなり勇敢にツイッターでエヴリンとトレントたちへのサポートを示し、連盟の決断に対する不満をあらわにしています。

 

 

 

 

この件に関する動揺もあってか、せっかく取り戻したように見えた調子は北京五輪まで持続することがありませんでした。キャリアの終盤を飾ると思われたオリンピックで実力が出せなかったのは本当に悔しかったに違いありません。


にも関わらず、木原選手たちによると、北京五輪の団体戦や個人戦で誰よりも大きな声で「リク―!リュウイチ―!!」と叫んで応援していたのはカースティンとマイケルだったそうです。

 

CBC放送の映像を見返しながら、三浦選手などは「リフト中、応援席が見えてそこでカースティンたちがすっごい応援してくれてたんですよ。それが見えてめちゃめちゃ嬉しかったです」と胸が熱くなったことを話していました。

 

そして木原選手も、個人戦のフリー演技後、キスクラでスコアが出た時のことについて

 

この場面ですが:

 

 

 

 

 

三浦選手も、木原選手も自分たちの左側に向かってしきりにガッツポーズをしていますが、これは先に滑ったカースティンとマイケルたちがキスクラ裏から戻って来て、祝ってくれているのに応えているのだと言っていました。

 

ちなみにこの個人戦フリーでカースティンたちは不本意な演技をしてしまい、おそらく非常に辛い思いをしていたことでしょう。だけど、リンクメイトたちの頑張っている姿を見届け、一緒に喜びを分かち合いたい、と思ったのでしょう。

 

 

…書いていてもちょっとグッと来ます。

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの一カ月後、カースティンたちはモンペリエの世界選手権に出場しない、と発表します。

 

オフシーズンに入ってからはスターズ・オン・アイスのカナダツアーに出ていたのを私も観に行きましたが、久しぶりに彼らの生き生きと滑っている姿を見ることができたのが嬉しかったです。

 

 

 

Figure Skating Online のロビン・リトスさんのお写真

 

 

一方、木原選手たちは5月になってカナダに戻った時、「リンクに行ってカースティンたちがいないのが一番、寂しいです」と言っていましたが、その翌月には正式な引退発表がありました。

 

 

 

 

ただ、ちょっと嬉しいことには今でもオークビルのリンクに顔を出して、りくりゅうの練習に付き合ってくれたりしているのだそうです。それが何カ月かしたら始まる2022-2023年のシーズンにどう、反映されるのか?

 

楽しみにしたいところです。

 

カースティンとマイケルのこれからの人生が幸せなものでありますように。心から祈っています!

 

 

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なお、ご参考までに、ですが

 

 

オークビル市には実はこの他にも6つの市営のアイスアリーナがあります。

 

一つのアリーナ内にアイスリンクが2~4つある施設もあり、ここに私営のアリーナも含めるとけっこうな数になります。(なお、ここには冬限定で運営されている屋外のリンクや、カーリング用の氷などはカウントされていません)

 

アイスホッケーが国技のように思われているカナダですが、人口3000人に一つのリンクがある、と言われているのも頷けます。

 

そしてどうやら今後、このSMSCの周囲がさらに開発され、増加しつつあるオークビル市北部の市民のために大きな図書館やプール、ジム、テニスコートなどが2024年までに出来るそうです。

 

 

 

 

ますます充実した練習拠点になるのが楽しみです!