羽生選手のファンである私達は、何とラッキーなのでしょうか。
2018年の平昌五輪後、彼が競技を続けると言ってくれただけでも当時は有難いと思っていたのに、2021年12月になって、再びオリンピックに挑む、そして勝ちに行く、という言葉を彼が発してくれるとは。
2018年9月にオータムクラシックの会場に羽生選手が現れた時のことを思い出します。
あの頃、彼はもう全てを成し遂げてしまったのだから、あとは念願のクワッド・アクセルを習得することだけを目標とするのだろうな、と私を含め多くのファンやメディアが確か思っていましたよね?
オフシーズンの忙しさのせいか、とても疲れている様に見えたこともあったのかも知れません。当時の記事で、私は羽生選手の滑っている姿をあとどのくらい観ていられるのだろう、と寂しく思ったことを綴っています。
このオータム大会が終わってから、コロナ・パンデミックによってフィギュアスケート界が頓挫するまで、私は何度か大会で羽生選手を見る機会に恵まれました。
その2シーズンの間でさえも、まだまだ彼にとって三度目となる北京オリンピックへの出場が現実的であるようには思えませんでした。
なのに
2021年の全日本選手権が終わってから羽生選手が数々のインタビューや会見で語ってくれた言葉は、私達の心を躍らせるようなものでした。
四回転アクセルを決めて
オリンピックを勝ちに行く
その意志を
迷いのない、澄み切った瞳で
静かな自信を漲らせ
はっきりと口にした彼の
何とも言えず、楽しそうな表情。
お正月の過ごし方は?と聞かれて
4Aの習得に費やす、って。。。
本年もありがとうございました。
— 公益財団法人日本スケート連盟 (@skatingjapan) December 31, 2021
良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いいたします。#フィギュアスケート #羽生結弦 #JSF年末カウントダウン #2021年大トリ #YuzuruHanyu pic.twitter.com/ihqo9vLGkK
こんなのを見たりを聞いたりした私たちは
「よっしゃあああああああっ!!!」
と叫ぶしかありません。
同じ大会に出場する選手たちをはじめ、会場に足を運ぶ観客やメディア、日本だけではなく世界各国でスクリーンに釘付けになるファン・解説者・ユーチューバーたち。何千、何万、何十万人というスケートファン、スポーツファンが一気に彼の影響を受けずにはいられない。
ここで特筆に値するのは、周りの選手たちが彼の存在に威圧され、委縮するのではなく、自分達も良い演技をしたい、という意欲を掻き立てられること。
それが羽生結弦の出場する試合に独特な緊張感をもたらすのです。
また、フォトグラファー達は彼の演技の一瞬をも逃すものかと覚悟を決めて撮影に挑む。(「ここ数年、羽生選手の写真で大失敗をするという悪夢をよく見ます」と笑いながら教えてくれた方がいらっしゃいました。羽生選手の素晴らしい演技を前に、「自分も期待に応えないといけないというプレッシャーを感じているのだろう」、とも。)
記者も詳細なレポをしなければ、と必死でリンク内の彼の姿を追い、演技後は取材に走って彼のコメントをメモする。
そしてメガスター・羽生結弦の演技やコメントの一つ一つが貴重な出来事として、記録され、記憶され、拡散され、
ニュースは賑わい、スポンサーは喜び、出版界は潤い、ファンは勇気を得て…
などといった具合に、とてつもなく巨大な渦が巻き起こる。
このような現象を。たった一人で起こすことのできるアスリートを私は他に知りません。
<全日本フィギュアスケート選手権 男子フリー>
演技を終えスタンディングオベーションに包まれる羽生結弦(撮影・小海途良幹)
私には今、心の中ではっきりと見えている光景があります。
それはまだ、ここで述べることをしたくありませんが、きっと、きっと、現実のものになるのだ、と信じて、
これから一カ月余りを過ごして行きたいと思っています。
ありがとう、羽生結弦選手。
老体に鞭打って、まだまだ応援させて頂きますからね。