2019年NHK杯:エキシビション他に関する感想 | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

NHK杯の感想の続きです。幾つかのポイントに分けてまとめられたら、と思います。

 

1)NHK杯とGPスケートカナダの違いについて感じたこと

 
今回、改めてNHK杯の会場について気づいたのは「天井が広くてライトが綺麗」ということでした。
 

北米でのリンクはほぼ全て、アイスホッケーに使われることが前提で作られているので、必ずと言って良いほど天井の中央に大きなジャンボトロンという四面スクリーンが設置されています。選手紹介や、試合のタイマーがそこに表示され、観客席のそこかしこからはっきりと見えるようになっているのです。

 

例えば来年の三月にワールドが開催されるモントリオールのベル・センターでもこんな感じ:

 

 

http://montrealvisitorsguide.com/the-bell-centre-le-centre-bell/

 

 

ご覧の通り、NHK杯が開催された真駒内リンクに比べると、下から見上げた時に天井のライトが綺麗に見えません。(しかも地元で大人気のNHLチーム、モントリオール・カナディアンズのリーグ優勝バナーや、代々のレジェンド達の背番号が吊るされているし)

 

 

こちら、ジャパンスポーツのツイッターより

 

 

かなり印象が違いますよね。

 

そう言えば前回のさいたまスーパーアリーナでの世界選手権もそうだったのですが、天井がバーッと開けていると、会場がものすごく広く感じられます。他の国でのGP大会がどんなリンクで開催されているのか、あまり気を付けて見たことがなかったのですが、こういった比較も興味深いです。

 

NHK杯とGPスケートカナダの他の相違点としては、エキシビションの構成が挙げられます。今回、ライストで観ていて3部構成であることに驚いたのですが、司会がえらく盛り上げていて何だかアイスショーの様な感じだな、と思いました。マスコットの参加があったり、休憩時間にはトークショーあったり、そして優勝者たちにはアンコールがあるなど、かなり凝ったフォーマット。

 

そこへ行くと、GPスケカナではエキシビションの当日にフィナーレの振り付けを参加選手全員でそそくさと練習して、あとは非常にあっさりとしたアナウンスの下にどんどん、順番に演技を行い、最後に練習したフィナーレがあって、終わり。

 

選手たちがアップしている画像を見る限りでは、NHK杯のバンケットがホテルの大宴会場の様な所で、かなり改まった雰囲気だったのも、GPスケートカナダのざっくばらんとしたバンケットとは異なります。昨年のバンクーバーでのGPF大会や、来年のワールドともなるともう少しフォーマルになるのでしょうが、日本ではどうやらグランプリ大会でさえも、そういった主要大会並みに全てが大掛かり、豪華なのかも知れません。日本のGP大会に海外の選手が行きたがるのも理解できる、というものです。

 

 

2)エキシビションでは選手の演技が観たい

 

NHK杯のエキシビションが3部構成で驚いた、というのはすでに書きましたが、二回のトークショーも入れるとたっぷり3時間以上あったと記憶しています。自国の出場選手が全員、出番を用意され、しかも特別ゲストに話題のアイスダンスのジュニア選手、うたしんたちの演技があって、ノービスの選手も出してもらって、と、これだとお客さんもさぞ満足度が大きかっただろうと思いました。

 

その中で羽生選手がエキシビションでは何を滑るのか、ということが注目されていたと思いますが、「春よ来い」と来ましたか。

 

となるとトリノのGPFでは?全日本では?そしてモントリオール・ワールドでは?と次々と予想の楽しみが増えて行きます。

 

だからこそモントリオール・ワールドのエキシビション、いや何ちゃらアワードショー、やっぱりすごく違和感があります。試合終了後のこの日は、大会で頑張った選手たちが競技を離れて伸び伸びと演技するところを見たいですよね?それこそカナダで開催されるなら、自国の出場選手を全員出したって良いだろうし、最近、引退したスター選手を呼ぶのも良い。でもメインはつい前日まで火花を散らして戦った選手たちであってしかるべきでしょう。会場にいる観客、そしてライストや中継で観ているファンもそうだと思います。

 

ああ、ユーツ。

 

 

3)フォトグラファーさんたちの熱すぎる戦い

 

これまでカナダでの大会を手伝って来て、羽生選手の出る大会はいつもメディアの方々もフォトグラファーさん達も熱気がすごい、とは思っていたのですが、ここに来てちょっと「熱すぎる」かな?と思えてきました。

 

私も度々このブログにて、フォトポジションを巡ってのドローでのせめぎ合いとか、羽生選手の一挙手一投足を捉えようとして右往左往するカメラマンさんたちの様子を軽いタッチで描いて来ましたが、自国開催のNHK杯ではいっそう、大勢の方々が集まったようでした。ネット上で出回っている画像の数、スポーツ紙の第一面やポスターや特別見開きページなどを見ても注目度が推測されます。

 

また、これまでずっと長年、羽生選手をフォローして来た方々に加え、新聞社や雑誌、通信社に派遣されて大会に赴くカメラマンの数が増えています。中にはファンに名前を覚えられ、それぞれの持ち味を比較されるほどに親しまれているフォトグラファーたちもいます。それはもちろん、喜ばしいことだし、プロの仕事人としては冥利に尽きるでしょう。ただ、それを見てどんどん競争に参加しようとする人が増え(しかも日本から、だけの話じゃないですからね)、大会でのアクレディテーションが取りにくくなったり、会場で良いポジションを獲得するための競争も激化したり、試合以外のより珍しいショットを狙っての位置取り、あるいは似通ったような構図やポーズの写真が増えたり、などの色々な問題も起こって来るかも知れません。モントリオールでのフォトグラファーさんたちの闘いを思うと、今からちょっと恐ろしくなって来ました。

 

それにしても羽生選手ほど膨大な数の写真を撮られたスケート選手って過去にいたのでしょうか?大会の現地入り、現地出、会場入り、会場出、リンク入り、リンク出、練習、試合、記者会見、ウオーミングアップ、エキシビション。。。今や芸能人や政治家やロイヤルファミリーでさえ顔負け、という気がします。

 

 

4)アスリートの本分とは?

 

ケロウナのスケカナ振り返り記事でも触れましたが、羽生選手の言葉をなるべくたくさん、ファンに届けようとフィギュアスケート・マガジンの山口さんが始めたトレンドがすっかり定着して、スポーツ紙などが「一問一答」記事を我先にとアップするようになって来ました。あまりにも多くて時にはどれがどれなのか分からなかったり、比較してみると微妙に違ったりして困惑もしますが、まあそれでも、ファンにとっては情報量が多い、というのは自分で取捨選択・分析・判断をする材料があるということで、やはり有難いことです。

 

もう一つ、山口さんの完全レポートのおかげで明らかになったのは、試合時に羽生選手がどれだけ多くの取材に応じているか、ということかと思います。

 

ケロウナの大会で、一緒にメディアセンターを手伝っていたカナダ人のボランティアのSさんに、「日本の選手ってどうしてあんなに何回も取材されるの?一体、記者たちは何をそんなに質問することがあるの?」と聞かれました。

 

このSさんは、過去に幾つもの大きなスポーツイベント(主なところではバンクーバー五輪、パン・アメリカンゲームズ、等々)にプロのメディア・コンサルタントとして関わって来ている人です。そんな彼が実に不思議そうに聞くところを見ると、日本のスケート選手の取材光景はよっぽど特殊なのかも知れません。その中でも、羽生選手に対する注目度は、写真撮影においてもインタビューにおいても、他の選手とは段違いのレベルです。

 

試合前のまだ色々なことが不確定なタイミングで、そして演技後のまだ興奮冷めやらぬ内に、コメントを求められる。(特に後者の状況においては、まともなセンテンスで答えられるだけでも天晴れ、って思っちゃうんですけどね。)
 
一夜明けたら今度は演技を振り返りながら、何人もの取材者が代わる代わる向けて来る同じような質問に答える。(これって国際映画祭で取材攻勢を受ける大ベテランの映画監督さんでもしんどい作業なんですよ。彼らは営業目的もあるので頑張りますが。)
 
大変だなあ、と思っていつも見ていますが、NHK杯の場合は日本での開催ということで、テレビの生出演、幾つかの個別インタビューなどなど、さらに多くの取材が入っていた様に推察されます。
 
アスリートの本分は、試合で良い結果を納めるための練習、そして本番でのパフォーマンス、のはず。それが色々な事情から昨今ではメディア対応が重要性を帯び、スポンサーやファンの要望に敏感であることも求められます。
 
彼・彼女たちが上述の様な状況の中で発した言葉は活字になり、映像に残り、何度も何度も再生されて行きますが、それはすでに本人たちにとっては過去の事であって、特にシーズン中はすぐ次の試合へと気持ちが走り出している(あるいは走り出したい)のじゃないかと思います。私もつい、グジグジと過ぎたイベントに関してブログ記事を書き続けたりしていますが、ここいらですっぱりと切り替えて、ファイナルへと目を向けて行きたいと思います。
 
 
最後に、過去記事をひとつ再掲させていただきます。ご参考までに。