ストイコさんの "Warrior vs. Performer" の後日談 | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

 

8月末にアップした記事:「羽生ファンは忙しいのだ:怒涛の一週間の前に書いておきたい記事その②」でご紹介したカナダのターミネイターことエルビス・ストイコ大先生のエッセイを憶えていらっしゃいますか?

 


 

 

この中で、私が特に印象深いと思ったのは試合当日、本番に挑む姿勢についてストイコさんが説いてるところなんですが、大事な試合前に"Let go" (=力を抜いてリラックスしろ)、というアドバイスをしてくる奴はものすごい重圧のかかった大一番に出たことがないか、出たとしても大した成績を納められなかった奴だ、と断言しているのが爽快。

 

力を抜いている場合ではない、その時こそ内なる戦士を呼び出すべきなのだ、と。

 

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自分の身体が自分のものではないように感じられ、神経中枢が「前に進むのか、膝を抱え込んで丸く縮こまるのか、はたまた走って逃げるのか」と決断を迫って来ても。持てる限りの意志力をかき集めて「俺は成功してやる」と言ってみろ。そして文字通り、体を持ち上げて、背伸びをして、降参したくなる衝動に打ち勝て。

 

(訳は私によるものなのでご参考までに)

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そんなところが羽生選手の(チビッ子スケーターたちからの質問に応えて)言ったことと似ているな、と思ったわけです。

 

そしてそのことをクオンさんを通じてストイコさんに伝えてもらったところ、Skate Ontario (オンタリオ州連盟)のYouTubeチャンネルに上がった動画でストイコさんが反応してくださいました。

 

(なお、この動画がアップされたのが9月5日。もっと早くにこのことについて書きたかったのですが、なかなか余裕がありませんでした)

 

この動画の12分30秒辺りから、ストイコさんの持論「Warrior vs. Performer」を羽生選手に当てはめて言及しています。

 

 

 

 

 

 

Hanyu has the perfect balance. He goes out there as the Warrior, and then performs. And does not have the Performer attitude first. If you have the Performer attitude first, you will get destroyed in competition, hands down. I've seen it all the time.

羽生は(Warrior と Performer の両方の)完璧なバランスを保っている。試合に出て行く時は Warrior として挑み、そして Performer として演技をする。でも Performer としての姿勢で試合に挑んでいるのではない。それをやる者は試合においてはぶっ潰されてしまう、文句なしに。何度もその光景を見て来たから分かる。

 

その後、リラックスしようとするのは間違い、と言って、

 

Being calm, that's what you want to be.

心を静かにする、それが望ましいことだ。

 

競技前には誰しもが色々な葛藤だとか、不安だとか、渦巻くものを胸に持っているけれど、それを全てコントロールして、支配して、静める。それとリラックスすることとは違う、と言いたいようですね。

 

まあ、この動画ではストイコさん、エッセイの時とは違ってフリー・トークなのでちょっと論点があっちこっちに飛びがちですが、なかなか興味深いお話をされています。

 

ひとつ前の記事で書いたようにオータムクラシック大会が終わってからすでに三週間以上が経っている訳ですが、羽生選手が大会中・大会後に受けた取材に関してはニュースで、雑誌で、ずいぶんと小出しになって、徐々に、徐々に伝わって来て、ようやく全貌が見渡せた感があります。

 

最後に出てきたのがフィギュアスケートTVの映像だったり、NHK杯出場に向けてのビデオ・メッセージだったかと思いますが、羽生選手の表情が極めて静かで、澄んでいるのが見て取れます。

 

でもあれって、試合終了後からまだ数時間しか経っていない時点で撮影されてるんですよね。なのに、まさに修行僧か仙人のような悟りと落ち着き。

 
24才にして、波乱万丈の競技生活を送り、怪我も対戦相手も様々な困難や重圧も克服して、フィギュアスケート界における比類なき地位を築き上げたアスリートです。その経験から徹底して自己管理をし、情報を収集・分析して自己完結する能力が備わっている。羽生選手はもう他の選手とは全く違う次元でシーズンを通しての戦い方や、自分のキャリアの方向性を考えているのでしょう。
 
 
二週間後、ケロウナで「戦う修行僧」に会えるのを心から楽しみにしています。