これを書いているのは競技三日目の朝、バンクーバー現地時間の12月8日、土曜日です。
昨日の朝、書き始めた記事が最初の数パラグラフにさしかかったところでとん挫して、そのまま二日目の競技に進んでしまいました。
木曜日は本当に忙しく、ずっとバタバタし、しかも最終の二競技がシニア男女のSPだったものであまり気の休まる時がありませんでした。
すでに皆さんご存知の通り、あの日は男子で宇野選手がちょっと残念なミスが響いて二位、そして女子では紀平選手が見事、素晴らしい滑りで首位に立ちました。記者会見ではお二人の通訳をさせていただきましたが、特に女子の会見の模様を写真とかで確認した時、華奢な若い女性たちに混じってなんか座高の高い、ミシュランのタイヤのマスコットみたいなのがドカンと座っていて驚愕しました。別に言い訳するつもりはありませんが(ってしてるやん)、リンク裏がかなり寒いのでユニフォームの下にダウンベストを着ているのです。まあそんなことはさておき。。。
ちょっとここでまず、昨日の朝に書いたことを入れ込んで、その後を続けますね。
********
あっという間に初日の競技が過ぎました。
本当にこのファイナルというフォーマットは豪華です。素晴らしい演技をする選手たちが次から次へとテンポよく、リンクに登場する。これはもう、観ている方はたまらんでしょう。
ジュニア選手たちの初々しい表情を見るのはとても新鮮です。私はジュニアの大会は数年前のカナダ選手権以来なので、なんだか取材エリアに連れて行く途中もつい、「ほれ、足元気を付けてね、大丈夫?」とでも言いたくなるような気持ちになります。
しかしそんな彼・彼女たちがいったんリンクに出ると燃えるような視線でプログラムに挑む。ペアの Kostiukovich and Ialinが良い例で、滑っている間はシニアのペアも顔負けの技を披露するのに、裏に戻って来るとコスティウコヴィッチ選手は本当にあどけない少女。ファイナルの大きな舞台で、たくさんのメディアから取材を受けるのがちょっと嬉しそうでした。
*************
その点では驚異のロシアジュニア女子たちも同じ。シニア大会のミックスゾーンはきっと、ジュニアの大会では見られない大がかりな物なのでしょう。大勢の記者から、スポットライトの当たる中で質問攻めに遭い、テレビにも写され、すっかり高揚している様に見えました。そんな時、彼女たちが浮かべるはにかんだ笑顔が、男子を時にはしのぐ四回転ジャンプを跳ぶとは言え、本当に幼い少女たちを相手にしているのだと思い出させてくれます。
ジュニア選手はやはりシニアの先輩たちよりも喜怒哀楽のふり幅が大きく、失敗をしてしまった時は本当にこっちの胸がつぶれるような悲しそうな表情を浮かべ、キスクラから裏に戻って来た後もカーテンの陰でしばらく立ち止まっています。反対に良い演技が出来た時はスキップでもしかねないような様子で取材エリアへと向かいます。
大会の裏方をするようになって、この点をいつも再認識させられます。私たちが観たり、批評したり、崇拝したりしている選手たちは生身の人間で、多くはとても若く、皆一生懸命きつい練習に耐えて試合に挑んでいるのだ、と。名前を良く聞くから、メディアの書くもので戦績を知るから、自分のブログで取り上げるから、と勝手にその点を忘れているのはいけないな、と反省します。
さて、話は競技に戻りますが、やはり今大会で最も大きな話題となっているのは紀平選手のSPでの演技だと思います。正直、他の種目はそれぞれ妥当な選手が妥当な順位についたように思えるので、あのような世界記録の更新、それも「新星」となると話題性がぐんとアップします。
海外のメディアからの注目もすごくて、ミックスゾーンでは質問攻めに遭っていました。これからきっとワールドに向けてその勢いは増して行くことでしょう。
これまで手伝った大会に比べるとちょこちょことキスクラ近辺で演技を観ることは出来ていますが、やはり記者会見や表彰式の準備が絡んでくると他のスタッフに選手の送迎は任せなくてはいけないので、二日目の競技に関してはあまり多くのことが言えません。でも宇野選手のショートとフリーはしっかりと観て、記者会見での通訳ができるよう予定の構成と比べながら追いました。
宇野選手の試合は昨年のスケートカナダ、今年のスケートカナダでも経験しているのでだんだん、雰囲気がつかめてきましたが、今回は最初の練習の日から緊張しているかな、という印象を受けました。やはりキャリアを積んでいくにつれて色々なプレッシャーなども圧し掛かって来て、自分のペースをしっかりと守っていると言われる宇野選手も精神的にしんどいことがあるのかな、と思います。
まあでも考えてみたらどんな選手でもアップダウンはあるし、これまでずっとコンスタントに実績をあげて来た選手ですから、私などが心配するまでもありませんよね。
その他、ネイサン・チェン選手のウルトラ・ターボ速度のトーク。あれはすぐ横で聞いていても頭がクラッと来そうです。本人の完璧に落ち着いた横顔、浮かべた笑みはあくまでクール、なのとは面白いほどのコントラストです。
三位に入ったジュンファン君。オータムクラシック、そしてスケートカナダからの定位置、と思えるのはそれほど今シーズン彼が安定している証拠でしょう。なによりも怪我がないのが嬉しい、と何度も言ってるので、昨シーズンはよっぽど辛かったのかな、と思いました。
さあ、そして話がジュニアにまた飛びますが、男子のSP・FSではゴゴレフ君の演技をドキドキしながら見守りました。このファイナルに出られたからにはそれにふさわしい演技をしたかった、と後に語っていましたが、史上最年少13才での優勝という、その目標を大きく上回る結果となりました。アメリカのトルガシェフ選手の棄権により順位が繰り上がって出場がかないましたが、それが「ラッキーだけで終わらないように」と記者会見で言ったのが印象に残りました。
ゴゴレフ選手が最も尊敬しているスケーターはユヅル・ハニュウ。その大先輩のお誕生日にとても良い成績を収めることができてきっと喜んでいることでしょう。
今回、表彰台に乗った三人の男子選手にしても本当に初々しい。インタビュー慣れしていなくて、エキシビションのナンバーは、と記者会見で聞かれても「まだ分からない」と答えたのがグメニク選手と島田選手。ゴゴレフ選手もとても小さな声で、記者からの質問に戸惑いながら、演技の時よりも緊張してるんじゃないか、と思えるような面持ちでした。
ところで島田選手、三位入賞が決まって本当に良かったです。間近で見るのは初めてだったんですが(っていうかジュニア選手は誰も彼も初対面)伸び盛りの子馬みたいな外見とは対照的にとっても骨太で落ち着いた青年という印象でした。ファイナルという舞台でも全く動じることなく、目ヂカラ強く、そして笑顔も晴れやか。ランビエール先生の教えのおかげか持ち前のパフォーマンス力が開花している感じです。
そういえば今大会には豪華なコーチ陣も目立ちましたね。ステファン・ランビエールさんの他、ブライアン・ジュベールさんの姿もあり、なんだか往年の世界王者たちが集まっているようなキスクラエリアでした。
あ、そうそうパトリックも競技の合間に会場を盛り上げるために登場していたのですごいことになっていました。ここにタラカノワ選手のコーチであるプルシェンコさんが加わったらどうなる?という感じで。
まあ、オーサーさんや、アイスダンスのパトリス・ローゾンさんたちはいつも大会でお会いしているのでもうそれほど驚きませんが、それもずいぶんと贅沢な話です。
と、とりあえずここまで書いて時間が来ました。また色々と思い出したら書き足していきたいと思います。
今日はシニア女子、そしてジュニア女子の競技が注目です。もちろん、アイスダンスとペアもちゃんとフォローしています。私の大好きなペアのジェームス&シプレ組がSP四位から巻き返せるのか。アイスダンスはとうとう、ハベル&ドナヒューの初GPFタイトル獲得となるのか。
それらについてはまた後ほど。