今年の夏にJohn Wilson Blades社がアップロードした動画にスティーブン・ゴゴレフ選手のインタビューがありました。
2004年12月生まれのゴゴレフ君は、ずいぶんと昔から「ブライアン・オーサーの秘蔵っ子、カナダの次世代のホープ」としてその存在が知られていましたが、年齢制限のため、なかなか表舞台に出て来ることがかないませんでした。
2017年1月に弱冠12歳と1カ月でカナダのジュニア・チャンピオンに輝きながらも、ようやくJGP大会で本格的な国際デビューを果たしたのがその翌年の2018年8月のブラティスラヴァ大会でした。初めてのジュニア・グランプリ大会でいきなり優勝し、前評判に匹敵する実力を見せつけました。
カナダ連盟の次世代のホープ「NextGen」の一員として紹介されているスティーブン
さて、ゴゴレフ君はインタビューの中で「あなたのスケートにおけるヒーローは?」と聞かれて
「YUZURU HANYU」
と答えています。
どのジャンプも綺麗に降りるから。そしてコンプリート・パッケージを持っているから。つまりスピン、スケーティング・スキル、そしてジャンプ、全てにおいて優れている。
さすがブライアン・オーサーが小さい頃から手塩にかけて育てて来た選手だけあって、クリケット・クラブで重要視されている「全ての面において優れていなければならない」という哲学が根付いています。
カナダ代表の強化キャンプでブライアン・オーサーコーチにゴゴレフ選手について取材をした時、全く予期しない話の流れから「ユヅはスティーブンが一番、憧れているスケーター。ユヅのやることなら何でも真似をしたがる」と言っていたのを思い出します。
その一方で、先週末、GPヘルシンキ大会で優勝した後の記者会見で、羽生選手は四回転ジャンプを増やして(3アクセル以外の三回転ジャンプを無くして)行く可能性について質問された際、自分はそのようなことは無理だと思うけれど、クリケットクラブにはスティーブン・ゴゴレフという若い選手がいて、その子はすでに四回転ジャンプをほぼ全種類、跳べている。とても未来のある子なので楽しみにしている、といったようなことを答えていました。
26分57秒辺りからゴゴレフ君に言及
もしもゴゴレフ君がこのコメントを聞いたなら、きっと喜んだことでしょう。私には、(ゴゴレフ君が誰かに教えてもらったり、自分で聞くかも知れないことを想定して)羽生選手が自分の後輩に対する思いやりを示し、励ましている様に思えてなりませんでした。
奇しくもそのヘルシンキ大会と同じ週末に、羽生選手の競技とほぼ重なるような時間帯でオンタリオ州のセクショナルズ大会(=カナダ選手権に向けての最初の選考会)が開催され、ゴゴレフ選手はシニアの部門で出場しました。
会場は9月にオータムクラシックが開かれたSixteen Mile Arena、四回転―三回転のコンビネーションを含む素晴らしいショート・プログラムを演じて好スコアを叩き出しました。
日曜日のフリーでは冒頭の四回転ルッツをパンクしたものの、その後は持ち直して滑り切り、圧勝しました。
(予選会の演技の動画はSP/FS両方とも、ゴゴレフ選手のファンクラブのHPに掲載されています。上記のような背景を知っているからか、どことなく、ヒーローの面影を漂わせているように思えるスティーブン君の滑りです。)
もちろん、このオンタリオ州のセクショナルズにはナム君は出ていなかったし、コンラッド・オーゼル君はフリーを滑らなかったのですが、それにしてもものすごいプログラム構成、そして質の高い出来栄えです。
残念ながらゴゴレフ選手は12月のJGPファイナルの出場を逃してしまいましたが、その分、世界ジュニア選手権では悔しさをぶつけて良い演技を見せてくれることでしょう。
そしてその前にはカナダ選手権があります。ここでもシニアの部で参加することが決まっているので、どのような戦いを見せるのか、楽しみです。
ちなみにゴゴレフ選手のご両親はロシア出身、もっと小さい時には彼の髪型が金髪でもっと長かったことからも同年齢の選手や保護者たちの中では「ミニ・プルシェンコ」というニックネームが付いていたそうです。
11才でノービス・チャンピオンになった時のスティーブン (Skate Canada HPより)
プルシェンコに憧れて、世界の頂点を極めた羽生結弦選手を、ミニ・プルシェンコと呼ばれたゴゴレフ選手が尊敬し、目標としているのに、不思議な縁を感じます。
ここでもやはり羽生選手の言っていた「コンティニューズ」、次世代への継承が起こっているのでしょうね。ゴゴレフ選手がヒーローを追いかけて、これから世界の頂点を目指して行く姿を楽しみに見守りたいと思っています。




