2018年TIFF(トロント国際映画祭)レポートその① | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

 

秋らしくなったかと思いきや、二日前ほどからいきなり晩夏のような陽気がぶり返してきました。紅葉はどうなるんだろう。

 

いよいよオータムクラシックが近づいて来ましたが、その前に今週、携わっていたToronto International Film Festival (TIFF=トロント国際映画祭)のレポートをささっと書いてしまいます。

 

映画祭の仕事をするようになって今年で5年目です。初回、2014年は様子が分からずにドギマギしていましたが、毎年5月に開催されるドキュメンタリー映画祭(「HOTDOCS」)も含めると7回目のイベントになるのでさすがに慣れてきました。

 

事前にIDを受け取り、首から下げるとその数日間だけ、ちょっと業界に足を踏み込んだような錯覚にとらわれます。でも本当に皆さん、独特なファッション・センスをお持ちなので、やっぱりそこはフツーの感覚しか持たない私はきっと浮いているのだと思います。

 

女優さん、俳優さんたちは当然、ドレスアップして化粧も隙がない。映画監督さんたちはそこまで決めまくらず、適当に着崩してさりげないオシャレ加減を醸し出す。そこへいくと広報や営業や映画祭プログラマーの方々は「裏方的」黒の服装が多く、その中でどこか主張をしのばせる(「デカダント」派、「モード」派、「かっちり」派、などなど)。

 

私のお友達の中ではゴージャスなオシャレでナンバーワンのNちゃんにその話をすると、

 

私ら、(女優さんたちに)完敗するのん分かってても出来るだけ差が付かないように頑張る」

 

と笑い、

 

「当たって砕けろ」

 

の強い気持ちで挑むのだと言います。さすがNちゃん。(「私ら」って言ってくれてますが、私は全然、張り合おうなんて思ってませんけどね。)

 

さて、すでにお知らせしましたとおり、今年のTIFFでは二本の映画の通訳を担当することになりました。

 

塚本晋也監督の「斬、」(KILLING)

 

 

 

 

そして濱口竜介監督の「寝ても覚めても」(Asako I & II)

 

 

 

 

でした。

 

まずは9月10日に国際交流基金の主催する「ジャパン・フィルム・ナイト」で日本人監督の紹介があり、大いに盛り上がりました。(以下、画像はJapan Foundation of Toronto ツイッターより)

 

 

 

 

在トロント・伊藤総領事の歓迎のスピーチのあと、近浦啓監督が流ちょうな英語で挨拶をなさいました(よって私の通訳は不要)。

 

初の長編「COMPLICITY」がこの映画祭でワールドプレミアを果たしました。

 

 

 

 

 

その後、塚本監督がジョークを散りばめたスピーチで会場を沸かせ

 

 

 

 

 

濱口監督が、トロント空港から直行して疲れていらっしゃるにも関わらず、しっかりと締めのお言葉を。

 

 

 

 

ここからは肝心の上映会のレポートです。

 

「斬、」の初回の上映は11日の夜21時45分から23時半まで。

 

舞台挨拶と質疑応答があったので、私自身、終電に間に合うかと心配するような時間でしたが、満員御礼の大盛況でした。(以下、お写真は塚本晋也監督のツイッターより。それ以外のソースはその都度、記載してあります。)

 

 

 

 

 

 

(このお写真は映画情報どっとこむより)

 

私は2014年に塚本監督の「野火」の上映会でも通訳を務めさせて頂いていたので、今回、監督のお話のリズムやスタイルを追いやすく感じました。しかし、非常に細かく深いコメントをなさいますので、↑このように壇上に立ちながらノートを取るのがけっこう大変で、その上にマイクも持つとなると至難の業です。

 

手が大きくて良かった、レニーの散歩で足腰が鍛えられてて良かった、と痛感したことでした。

 

二度目の上映会は翌日の12日、会場はスコシアバンク・シアターの2番上映室で客席が大きく、お昼間の時間帯でしたが、これまた満員御礼。塚本監督も嬉しそうにしていらっしゃいました。

 

 

 

 

 

(このお写真は↑ヤフー・ニュースの斎藤博昭さんの記事より。

斎藤さんのツイッターはこちら

 

 

ここでちょこっと私の鑑賞後の感想を:

 

私は映画祭での「斬、」の上映を二度とも監督のお隣りで観ました。事前のプレビュー版は家で準備のため、見ていたのですが、やはり大画面・大音響で体験するのとは全く違います。

 

ネタバレになるので細かい所は飛ばしますが、比較的、短い(80分)作品であるにも関わらず、私は三度見ても新しい発見があり、

 

「ああ、なるほど、あの時のあれがこれだったのね」(←訳わからん)

 

と、ようやく気が付くポイントがありました。

 

前回の「野火」に関しても思った事ですが、塚本監督の描く戦いのシーンはとてつもなく斬新です。戦争映画、時代劇映画、のそれぞれのジャンルには優れた作品が多々ありますが、その中でもなかなか見られないような展開、動き、色、効果、で観る者を驚かせてくれます。

 

またまたあまり上手く言えないのがもどかしいですが、

 

「ちょっと待って、こんな風にこんなもんがぶっ飛んで良いの?」

 

と思うような殺陣も見どころです。私はとにかく何度も見ているのに、気が付くとペンを握り締めて(上映中も何かとメモろうとしていた)固まってました。息をするのも忘れる、とはこのことです。

 

そして俳優陣も素晴らしい。私は中でも蒼井優さんの演技に心を動かされました。昨年、TIFFで担当した「彼女がその名を知らない鳥たち」にも出演されていましたが、目や眉毛、唇やこめかみなどのほんの小さな動きで内面を描き出せる女優さんだな、と思いました。いや、ほんと、すごいです。

 

ところで塚本監督は俳優としても輝かしいキャリアをお持ちで(近年ではスコセーシの「沈黙」にキャスティングされて話題になりました)、今回の作品にも自ら重要な役どころで登場されます。

 

なので壇上の質疑応答にしても非常に落ち着きがあり、絶妙な間で観客とのコミュニケーションを楽しまれます。それを損なわないよう、通訳するのに苦心しましたが、なんとか無事に終わってホッとしました。

 

(つづく)

 

 

 


 

映画祭の動画チャンネルに初日の上映会の模様が掲載されています。ご興味のおありの方は検索してみてください。