2017年WTT男子FSのCBC解説ハイライト | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

 

 

一つ前の記事:

 

2017年CBC解説WTT羽生結弦FS: "Houston, we have a launch"

 

で聞き取りのちょこっとした間違いに気づきましたので訂正しておきました(意味的には大した影響はないところですが)。

 

 

さて、カートさんのCBC解説はこれまで男子の場合、主に羽生選手に関するものを取り上げて来ましたが、今回、他の選手について彼が言ったことで幾つか印象に残ったものがありますのでご紹介します。

 

 

まずはパトリック・チャン選手の演技について:

 

一年の休養期間を取った後、よくここまで戻してきた、ということにカートさんは感心していました。特に二つ目の四回転ジャンプ(サルコー)をレパートリーに加えたのは特筆に値する、ということでした。

 

彼のコレオ・シークエンスは他の誰にも負けないほどの質の高さであると指摘。

 

そしてチャン選手の演技終了後はしみじみと、「かつてパトリックが世界選手権を連覇していた頃に比べてもクワッドを一本よけいに跳んでいるのに(勝てないんだからね)。彼は今や全く違う男子フィギュア界に身を置いているんだよね。」というようなことを言っていました。

 

ヘルシンキ・ワールドでは昨年のボストン・ワールドと同じ5位という順位だったけれど、全然違う感触だった、とパトリックが言ったことにアンディさんが言及すると

 

"I don't think he's done. I think he's ready to fight"

 

と、パトリックがこのまま表彰台から離れたまま終わっても良いとは思っていない、とカートさんは言い、「彼はまだ戦う気満々だと思うよ」と締めくくりました。

 

 

次はボーヤン・ジン選手

 

今日は本調子じゃないみたい、というのがミスが続く演技を見たカートさんの感想でした。

 

特に最初の4ルッツについては、とても期待していただけにジン選手のミスが出ると残念がり、スロー再生を見ながら

 

4 Lutz, only two revolutions.  He basically looked like he was dropped out of an airplane with nothing to do but trying to figure out what to do without his four revolutions.

四回転ルッツ、二回転しかできなかった。なんだかまるで飛行機から落っことされて、四回転が出来ずにさあどうしよう、って思ってる感じ

 

今日は全てがスムーズに行かずに、しんどそうだった、というのがカートさんの結論でした。

 

 

ネイサン・チェン選手について:

 

クワッドを4,5本跳ぶということの他にも、しっかりとしたスケーティング・スキルを持っている選手、というのが評価。

 

最初の四回転フリップを見て

 

Beeeeautiful quad flip! You can hear the ice accept the blade, when he landed. Hardly no toe pick scratching at all 

キッレーイなクワッド・フリップ!氷がブレードを「受け入れてる」のが聞こえてくるでしょ、着氷した時に。トウピックが(氷を)引っ掻く音はほとんどなし。

 

と感嘆。

 

コレオ・シークエンスを見て

 

That whole section, the last 20 seconds for me shows a lot of potential. If I could add one word as a bystander who has an opinion it would be "PATIENCE".  

この部分、ここ20秒間の滑りを見れば彼のポテンシャルが分かるね。一応、意見を持った傍観者としてひとつ、言うことがあるとすれば「時間をかけて」かな。

 

そして、ジャンプとジャンプのつなぎになる動きに関してPATIENCE(直訳すると「気長さ」)を見せろ、つまりゆっくりと時間をかけて、"showcase it for the judges" ジャッジにたっぷりとアピールすること、をチェン選手にアドバイスしたい、とカートさんは言っています。

 

プログラムの構成については、チェン選手の作戦が、「前半にクワッドを集めておいて、その後は勢いに乗ってトリプルを幾つか跳んで、最後はスピン」みたいだけど、来シーズンは変えて来るだろう、そうじゃないとハニュウやウノと競えないから。

 

でも演技のほぼ最後の方でのステップを見て、トウピックでくるっとピボットして回して見せるなど、けっこうリスクの高い動きも見せている、これはすごく好き!と、カートさんのツボにはまった模様。

 

Change of plan for next year, and stand back! This guy's dangerous.

来年は作戦変更。そうなったら皆、気を付けろ!此奴は危険だぞ。

 

↑ この様なカートさんの言い方は、かつて羽生選手がまだベテランを追い上げる若手だった頃によく使われていましたね。チェン選手にも似たような勢いを感じているのかも知れません。

 

 

さあ、そして宇野選手の演技について:

 

何度かこのブログでも書いているように、アンディさんは大のショーマン・ファン2015年のGPFですっかりメロメロになってカートさんにも放送中にからかわれたほどです。

 

彼女は2016-2017年シーズンの宇野選手のFSが大好きで、おそらく自分の中ではランキング・トップじゃないか、と言っていました。

 

さて、カートさんは宇野選手の演技を見て、三つ目のジャンプがちょっとエッジ・エラーじゃないか、とさすがに素早く指摘しますが、その後のステップ・シークエンスはじっくりと見て

 

Just finished a footwork sequence.

If you see a skater moving, changing directions, keeping in time with the music, giving you artistic impression and NEVER ONCE looking like they're worried about the next step, that's when you know you got a great skater. And you got one, right in front of you now.
フットワーク・シークエンスが終わったけどさ。

あるスケーターを見てて、動いている中で、(さんざん)方向変換して、音楽にもぴったりと付いて行って、芸術的表現もしっかり出して、それなのに、たったの一回も次のステップに対して不安を見せない、ってなったら、そいつが偉大なスケーターだって分かるよね。そんなスケーターがいるだろ、目の前に、今。

 

と、大絶賛していました。

 

その後、演技が終わるとチーム・ジャパンの応援席が写り、アンディさんがこんなことを言ってました:

 

Shoma Uno of Japan picking up a lot of ground, you can see, with his technical score behind fellow countryman Yuzuru Hanyu, who's just "I-spy-with-my-little-eye" * watching him,

日本のショウマ・ウノがずいぶんと追い上げて来ましたね、ご覧の様にテクニカル・スコアは同朋のユヅル・ハニュウのすぐ下ですが、(そのユヅル・ハニュウは)彼(ウノ)を何気にしっかりと*目でとらえています。

 

 

 


(訳注*:「アイ・スパイ~」は子供の遊びで、「私はこのオメメで何を見ているでしょうか?」と問いかけ、お互いに部屋の中の何を見ているのかをあてっこするゲームです。問いかける側は、相手に何を見ているのかが悟られないようにしなければいけません。普段の会話では、「見ていないふりをしつつもしっかりと視界に捉えている」という意味で使うのでこの場合、アンディさんは羽生選手が旗の陰から見え隠れしつつも、宇野選手を見ている様子を指して、茶化しているのですね。)

それを受けて、笑いながらもカートさんは:

 

Andie I agree, I'm gonna miss that program. It is a work of art, and so filled with technical difficulty as well. If there's one word I would use it would be CONVICTION. He is SOOO full of purpose in his skating.

君の言う通り、ぼくもこのプログラムは名残惜しいな。芸術作品でありつつ、技術的難度も目一杯、詰まってる。(彼の演技を)一言で表すとしたら「信念」。彼のスケートは、本っ当に使命感がこもってる。

 

そしてキスクラで耳飾りをつけた宇野選手を見てアンディさんが大喜び:

 

He's willing to wear the ears, Yuzuru Hanyu didn't want to.

あ、彼は耳飾り、付けるんだ!ユヅル・ハニュウは嫌がったのに。

 

 

 


またまた宇野選手のカワユサにはしゃぐアンディさんでした。


ところで、実は私、2016-2017年のシーズンにおいては、男子のFSの中で宇野選手のプログラムが一番、好きでした。見るたびに完成度が増して行き、音楽の一つ一つのニュアンス、一つ一つの音に宇野選手の動きがハマって行くのを見るのは快感でした。

パトリック・チャン選手の雄大なフリーも良かったし、ジェイソン・ブラウン選手の繊細なプログラムも良かったけど、宇野選手の場合、手や上半身の動きのディーテールが半端ない細かさで唸りました。

来年に大いに期待しています。