Those who can elevate their game:2015年世界陸上より | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...





スポーツ観戦が大好きな母が先週末から

「24時間テレビの羽生クンもあるし、世界陸上は見ないといけないし、バレーボールもあるし…」

「嬉しい悲鳴」をあげています。



母と同じスポーツファンである私は「世界選手権」となると、たいていどんなスポーツでも観てしまうので、当然のことながら現在、北京で開催中の世界陸上大会をライストを駆使してフォローしています。


陸上ではさほど有名な選手が出て来ないカナダですが(まあ過去にベン・ジョンソンとかいましたけどね)、今大会はなかなかの健闘を見せています。


大会三日目ではいきなり男子棒高跳びでBARBER選手が金メダルを獲得。この他、女子の五種目競技で銀メダル、そして男子20KM競歩でも銅メダルをカナダの代表選手が獲っているのです。


しかし何よりも驚いて嬉しかったのは男子100メートル走で20才のANDRE DE GRASSE選手が銅メダルを獲ったことでした。


だって、1位があのボルト、そして2位がガトリンですよ。


その二人に続いてデグラース選手ともう一人、アメリカのブロンメル選手(こちらも20才)が短距離競技では珍しい同タイム・タイで仲良く3位に入ったのです。二人は昨シーズン、アメリカの大学リーグでも良きライバルでした


しかもこのデグラース君、まだ陸上競技を始めて3年目



今後が楽しみな逸材です。


右端がデグラース選手(カナダ)、その隣がブロンメル選手(アメリカ)





それにしてもボルト選手、怪物です。


最盛期の圧倒的な爆発力はちょっと影をひそめた感がありますが、最大の舞台ではやはり負けない、その勝負強さがいつまでも印象に残ります。


2008年の北京オリンピックでボルトが(まだ22歳になるかならないかの若さで)100メートル走を制した時の衝撃は忘れられません。


一人だけ異次元の走りを見せつけて、他の選手たちは2位争いに必死になっているかのようでした。








ドラマのセリフではありませんが


「なんじゃこりゃ」


と言いたくなるような勝ち方。



その後は2009年ベルリン世界選手権で、今後しばらくは超えるのが無理かも知れないと思われる9.58秒というとてつもない記録をたたき出し、2012年のロンドン五輪、2013年の世界選手権でも優勝。


(この記事では100メートル走にしか言及していませんが、皆さんご存知の通り、ボルトは各大会で200メートル走でも、4X100メートルリレーでも優勝してるんですよね)


しかし先シーズンは故障が響いて長期休養、今シーズンも序盤はイマイチの調子でした。そんなわけで北京での世界選手権での下馬評としては今年、絶好調のガトリンが優勝候補。


ところがふたを開けてみれば


ボルトの勝利。


タイムは必ずしも良くなかったけど、要するに勝負に勝った。


ガトリンとボルトの違いは


Who can elevate their game when it matters most
ここ一番といった時に、自分のパフォーマンスのレベルを上げられるのは誰か


ということでしょう。


他の選手に比べて、特にレース後半になるとまるでひとつよけいに「ギアがある」かのような、「ターボのかかった」ような走りを見せていた20代前半のボルトはもちろん、凄かった。


でも29歳になり、さんざん色んなメダルや記録や賞を獲得して来たけれど、体力には衰えが見え始めたこの段階で



まだ大舞台で勝って見せるその驚異的な底力。



スピードだけではなく、メンタルの強さにおいても彼はひとつ、余分にギアを持っているのではないかと思いました。


一番、苦しい時にこそ発揮される新しいエネルギー源
(身体的にも心理的にも当てはまる現象です)


これを英語では


getting a "second wind"
(wind=「息」という意味)


とも言います。


これ以上、もう無理だというところに来ているのに、何故か急に湧き上って来る新たな「元気」



このしくみを意識的にか、無意識的にか、身に付けている者は強い。



ボルトの今大会での優勝を目の当たりにして、思ったことでした。