二つ前の記事に関する追記と補足です。
私が町田選手のSPに関するカートの解説ですごく印象に残ったのは、彼が町田選手に対してものすごく尊敬の念を感じているな、ということでした。
たとえば:
Well, that’s the power of complete and total, utter commitment to your craft.
まあ、それが自分の分野に対して完全に、全身全霊で打ち込んでる、ってことの威力だよね。
"commitment" とか "totally committed" という言葉をこちら(特に北米か?)の人はよく使います。
これは日本語になかなか訳しにくいのですが、イメージとしては
「中途半端」の真逆、
ですかね。
つまり、何かに完全に傾倒する、後戻りできないところまでとことん行く、みたいな感じです。
なのでカートは町田選手の演技を見て、ここまで到達するのにどれだけ彼が打ち込んだのか、"complete and total, utter" とこれでもか、の単語を並べて「脇目も振らずに、ただそれだけのために」というニュアンスを表現しているように思います。
そして続きの:
The ability to... Anybody, you’ve never seen anybody do skating or play the
piccolo or ride a horse, it doesn’t matter, but if you do it from the bottom of your toes, you’ve got me at hello.
それが出来るっていう…誰でも良いんだけど、スケートしてるところとか、ピッコロを演奏しているところとか、馬に乗ってるところとか、それまで見た事がなくても、つま先の底からやってくれたら、もうのっけからぼくは受け入れちゃうね。
これもカートさんの興奮した口調で言われているのですが、要するに、町田選手が見せてくれたような演技なら、スケートを見た事がない者でも感動するだろう、ということです。
中でも「つま先の…」のくだりは彼特有の言葉の遊びで、普通は「from the bottom of your heart」(心底から)と言うところを、スケートなので「つま先の底から」と言ってるのだと思います。
そしてどんな分野においてもこのような真剣な取り組み方をされたら、文句言わずに降参しちゃう、ということのようです。
なお、"you've got me at hello" はかつての映画の「Jerry Maguire」でルネー・ツェルウィガーが言ったセリフで有名ですが、トム・クルーズが必死で彼女を説得しようとしているところをさえぎって、「(長々と言葉を並べなくても)最初から私はあなたに夢中なんだから」、みたいな場面だったと記憶しています。
これと同じで、もうなんだかんだ言わなくても、全部、受け入れちゃう、大好き、応援しちゃう、という勢いを感じました。
And this gentleman has passion.
で、この人が情熱を持ってることは疑いようがない。
この「ジェントルマン」という言葉遣いにも敬意を感じました。別にここでは「紳士」「紳士的」という意味合いはなく、カートなら普通はスケーターの事を THIS GUY と言うところをあえてGENTLEMAN を使っている。しかも二度、それをしていますね。
翻訳する時に「このお方」ってまで言おうかと思いましたが、まあそこまですることはないかと思って、「この人」にしました。ちょっとぎこちないですかね?あるいは「町田氏」でも良いかも知れません。
ご意見をお聞かせください。
He goes into his quad very straight, he does a double scull which seems
to set him up, everything is square, and everything is where he left it
the last time he did this jump.
クワッドへの入り方が真っ直ぐだね。ダブルスカリングをして、これでしっかりセットアップが出来上がる。全てが正対してる。全てが前にこのジャンプをやった時のままの状態。
ここの下線部はカートが町田選手のジャンプ技術に関して強調したい事です。
つまりあるジャンプに関して、毎回、同じ動きを同じように再現できる能力。
このクワッドへの入り方は、この一つ前に跳んだと時と全く同じ角度、動きで入って行ってるので、「全てが前にこのジャンプをやった時のままの状態で置かれている」ので今度もそのまま、再現できる
ということです。ちょっと分かりにくいですよね?でもなるべく直訳してカートさんの口調をお伝えしたいと思いました。
なお、コメントの中で質問をいただきましたが、「お辞儀」に関して。
And THAT’S A BOW! I’m sorry, you deserve a good bow. And I do seminars sometimes and we actually practice bowing.
これこそ「お辞儀」ってものだね。いや悪いけどさ、(これだけやったんだから)ちゃんとしたお辞儀をしないとダメでしょ。よくセミナーとかで、お辞儀の練習とか実際、させるんだけど
私の力不足かも知れませんが、これはカートが町田選手のお辞儀を絶賛しているのです。
みんな、見てよ、このお辞儀、これこそ立派なお辞儀でしょ!
と言ってるのです。
その後の「いや悪いけどさ」っていうのも皮肉と言うか、「だってそうでしょ」っていう意味です。その続きには「これくらいやらなくちゃ」というニュアンスですが、ちょっと伝わりにくかったですかね?
元の記事にも補足しておきますね。
以上、補足でした。また何か質問があればどうぞ。