さて、いよいよフリーの演技の日になりました。
ショートの後、どうやって立て直してきたのか、非常に気になるところでしたが、もうこうなったら祈るしかない。
日本で見守っているブログ友達さんたちの悲壮感も、ツイッターなどから伝わってきました。
以下、お馴染みのCBC解説グループ:赤がブレンダさん、青がカートさん、そして緑がトレイシーです。
(スタジオ中継を担当している)スコット、これから登場する何人かの選手は最終グループに入っていても良さそうなのだけど、これもその一人。日本のユヅル・ハニュウです。
彼は去年の世界選手権で銅メダルを獲った時、たったの17才でした。それを今シーズンは見事な成績で裏付けたのですが、この世界選手権に来る時点でちょっとした怪我を負っているそうです。それで先日のショートではジャンプミスが出てしまいました。現在9位、3位に10点差をつけられています。
This is a program choreographed by David Wilson, to selections from Notre Dame de Paris soundtrack
このプログラムはデイビッド・ウィルソンの振り付けで、音楽はノートルダム・ド・パリのサウンドトラックから何曲かを編集したものです。.
Big moment, this was not good in the warmup, quad toe...
さあここで重要な場面、ウオーミングアップでは良くなかった、クワッド・トウ...
Hold on! Saved by a beautiful low knee, and patience.
踏ん張れ!素晴らしく深く曲げた膝で持ちこたえたね。辛抱強く。
次のエレメントが最もリスクが高い。クワッド・サルを予定してて...
これはすごい頑張りだったわ。しっかり集中して、この着地もこらえた。
(ここからしばらく解説者は沈黙して見守る)
(トレイシーさんの声が上擦って)
TRIPLE AXEL – TRIPLE TOE!!
トリプルアクセルートリプルトウ!
Second triple axel....
二つ目のトリプルアクセル...
思うに、今日、ぼくたちが目の当たりにしているのは生まれつきの才能、だけじゃない。生まれつきの才能を、新しく加わったトレーニング・スケジュール、そして集中力が底から支えているってことじゃないかな。
ショートの時は怪我のせいで圏外、でもロングでは持ち前の闘魂のおかげで戻ってきた
He said he was so angry at himself after the short program, he said I am going to come back strong, and I am going to take revenge.
彼、ショートの後は自分に腹が立ってしょうがない、って言ってたの。でも絶対に立て直して、リベンジしてやる、って。
さああと一つ残ってる、トリプル・ルッツ...
(最後のスピンに入り...)
REVENGE!
Well nothing came easily in that program for the reigning world bronze medalist.
この演技、昨年の銅メダリストにとって楽なものはひとつもなかった。
ブライアン・オーサーが「よくやった」と言っています。
四大陸選手権のあと、ユヅルはインフルエンザにかかって、練習を二週間休んでしまった。リンクに戻って来た時は、すごく嬉しそうに「ぼく、本当にスケートが大好きなんだ」って言って。
でもそこで膝を負傷して、また一週間、休まないといけなかった。このロンドンに来るまでほんの三日間、限られた練習しかできなかった。
このお知らせのあと、すぐにまた世界選手権の模様をお伝えします。
(CMが入る)
世界選手権という舞台は、時に選手の闘争心をいっそう掻き立てます。今日のユヅル・ハニュウがその良い例です。現在、キス&クライで振付師のデイビッド・ウィルソンと並んでいます。
(スロー再生を見ながら)
He used the word “Revenge”. I can’t think of a better revenge than two quads.
彼は「リベンジ」という言葉を使ったけど、四回転二つに勝るリベンジは思いつかないね。
He had to FIGHT for everything. You could see that he wasn’t his
best, and I know what those legs feel like at the end of the program.
There was nothing left.
今日の彼は(エレメンツの)どれもこれも、気合いで乗り越えてたね。明らかにコンディションはベストとは言えない。それでプログラムの最後の方で、あの脚がどんな状態になってるのか、ぼくにはよく分かる。もう力なんて何も残ってないんだよね。
Here he’s looking at the judges saying “That was
it, guys, I gave it everything I had...”
それでここは彼がジャッジを見て「これでもうおしまいです、皆さん。ぼくは全てを出し切りました」って言ってるところだね。
And everything he had was a couple of triple axels, a quad toe and another quad sal,
その全てっていうのがトリプルアクセル二つ、クワッド・トウに、もうひとつ、クワッド・サル
His coach Brian Orser is back in the wings with Javier Fernandez,
コーチのブライアン・オーサーはリンクの袖でハビエル・フェルナンデスと控えています。
これは振付師のデイビッド・ウィルソンだね、横に座っているのは
and that score more than enough to give Yuzuru the lead at the moment, here at the world championships.
そして、このスコアによって、ユヅルは今大会の暫定首位を獲得しました。
...and a lot of respect.
あと、(このスコアによって)リスペクトも得られたね。
(「えええええい!」という、どうやら羽生選手らしき声がして、お辞儀をしながら立ち上がる)
Now he knows he can do it, even when it’s not easy.
これで彼は、しんどい時でも結果は出せるってことが自分で分かったからね。
なんというファイター、ユヅル・ハニュウ
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私はこの日、自宅でバナーづくりの会のSさんたちを招いてテレビ観戦していたのですが、その模様はこちらでリアルタイムのものがありますので、よろしければどうぞ:
手芸仲間と乾杯!
もちろん、この時のツボは演技最後のカートさんの「リベンジ!」ですが、その他にもあります。
トレイシーの、感情移入が分かりすぎるほどの声。演技の途中は祈るように、そして3Aのコンビネーションが決まるとほとんど悲鳴。最後の三回転の前ではもう誇らしさでワナワナしてるのが分かります。
彼はね、インフルエンザにかかってね、それで病み上がりでやっと練習に戻ってきた時はほんっとうに嬉しそうでね、でもすぐに膝を怪我してね、それでもこの大会にやって来たのよ。それで今日のこの演技でしょ?どお、この子の根性!!
と、すっかり我が子のことのように喜んでいます。
(追記1)
ツボをもう一つ書き忘れていました。これもカートさん発言で、羽生選手が演技の最後の方でジャッジに対して
”That was it guys, I gave it everything I got”
って言ってるんだね、と笑いネタを入れたところ。それまでほとんど、カートさんお得意のギャグらしきことが出てこなかったのはこの時の羽生選手の緊張感、悲壮感を彼も感じていたのだと思います。
でも映像とカートさんのこのコメントを重ねると、本当に羽生選手がそう言ってるように思えてくるからまた笑えますね。
そして最後に写真を載せましたが、この黄色いバナーはトロントの宮城県人会の会長さんが持っていらしたもので、タイミングよく、カメラが映し出してくれました。本当に良かったです!
羽生選手のカナダでの初めてのシーズンがこうして幕を下ろしたわけですが、その陰で彼を支えたコーチ、スタッフ、そして家族の方々にとっては忘れられない10か月間だったと思われます。
2013-2014年のシーズンはソチ、そして世界選手権での金メダル獲得があったため、とかく注目を浴びがちですが、私はその前年のこのシーズンも印象深かったです。
なのでこうやって当時の気持ちに戻って、羽生選手の大会や演技を追うのはとても良い作業になりました。全てが新鮮、全てが不安、まだコーチたちとのコミュニケーションも手探り状態である中で奮闘する羽生選手と一緒に、ファンも成長(?)して行った一年でした。
あー、やっとなんとかここまでこぎつけました。。。。何か追記があればまたの機会に。