こうやって珍しく頑張っているのには訳があって、実は皆様にひとつお願いがあるのです。
改めて別の記事にしますが、CBCでは今年の春ごろから色々な予算カットによる人事異動や人員削減があり、最も打撃を受けているのがスポーツ部門です。せっかく日本の皆様にも人気のあるCBCのフィギュア・スケート番組がその影響を受けないよう、何か出来ないかと考えています。
まあ、それについてはこの次の記事で…今のところはいつものカートさんたちの素敵な解説をお楽しみください。
さて、2012年のグランプリ・ファイナルはオリンピックの会場となるソチで行われました。スケートアメリカの時も飛行機に乗り遅れた結弦くん、今度はソチに行く飛行機がボコ遅れしたらしく、7時間とかを空港で待たされたのでしたね。国際移動が多い場合、こういった危険が潜んでいます。
この時のフリー演技については逐一、聞き取りをしていませんが、主なところをかいつまんでお伝えします。特にカートさんの最後のコメントにご注目ください。
演技が始まり、最初の4回転トウループへの助走に合わせてカート:
Well sometimes he’s like a wild horse who doesn’t know his own speed, and gets himself into situations he can’t control.
彼は時として野生の暴れ馬みたいで、自分のスピードが自覚できずに制御不可能な状況に陥ってしまう。
When the plan meets the talent, this guy is SCARY GOOD!
でも、作戦と才能が合致すると、こいつは恐ろしいほどの力を発揮する!
Four revolutions, count them quick!
さあ回転4つ、急いで数えて!
見事に着地、感に堪えないといった感じでトレイシー:
OH MY GOODNESS!! That was sooo smooth on the landing
んまああああ、どうしましょ!着地の滑らかなことと言ったら…
ここでは4回転サルコウをやるつもりが…ダブルになってしまった。
するとカートさんがお得意のジョーク:
Nice big double, still a double
大きくて綺麗なダブルだったね、でもしょせんダブルだけど。
ここからプログラム中盤は羽生選手のトリプル・アクセルの質に関して、入り方、着地などを讃えるトレイシーとカート。後半も次々とエレメンツをこなしていき、いよいよ最後のジャンプにさしかかる。
So far he has managed his energy well, he has one more difficult jump the Triple Lutz...
ここまではしっかりと体力を温存して来て、あと一つ、難しい技をのこすのみ。トリプル・ルッツ...
やった!さあここからはもう最後まで全開よね
(注:この"just give'r"というのは「とことん行ってしまえ!」といったニュアンスの表現です)
That’s when he’s dangerous
こうなったら彼はヤバイんだ
I think this program has actually pulled him back a little bit, calmed him down, and this is a good stepping stone in the growth of his career. I sort of enjoy the “wild Hanyu” a little bit more, but unfortunately for me, he’s not going to be technically as consistent
思うに、このプログラムは彼の手綱をちょっと引いて、落ち着かせようとしているんだね。彼の選手人生においては良い布石となるように。ぼくとしては「ワイルドな羽生」の方が好きなんだけど、まあ残念な事にそうなったらテクニカルな面で安定感に欠けてしまうから。
This program, whereas it’s not as exciting, it’s a great stepping stone for him, and maybe next year, he’ll be able to do both again
このプログラムはあまりエキサイティングとは言えないけど、彼にとっては良い布石ってことで、来年になったらまた両方(エキサイティングなことと、テクニカルな面で難しいこと)が出来るようになるかも知れない。
この二つ前に滑ったフェルナンデス選手(同じクリケットクラブ所属)も歴代5番目の高得点を出したことを踏まえて、ブレンダ・アービングが
What's in the water at the Cricket Club?
クリケット・クラブの水に何か入ってるの?
と言い、みな、大ご機嫌。
この放送後、またCBCのホームページにはカートとPJクオンのポッドキャストが掲載されました。
その聞き取りと訳のほぼ全文は別の方のブログ(まささん、勝手にリンクさせていただきます!)に私が提供しましたので、良かったらご覧ください。こちらです。
(クオンさんには日本にもCBCの解説やポッドキャストが評判であることを伝えてあったので、冒頭では二人が日本のファンにメッセージを送っています。)
でもこの記事では単にカートさんの言ってることの中で、特に羽生選手に関わっているところを抜粋します。
ファンからの質問で、「Predictions for Japanese nationals? 全日本の予想は?」と聞かれ、
カート:
I have to go with Hanyu, I think he’s going simply because he seems to be the one skater that’s building.
(優勝は)羽生だと思う。何故って、彼ひとりが、勢いのある選手みたいだから。
Pj:
I agree
同感
What I really figured out ー and it’s my opinion and I keep it to myself and I am always right, but that’s what’s fun about skating is that everyone’s opinion is always rightー
やっとちゃんと分かったことがあって ― で、これはぼくの意見だってことで、でもぼくはいつも正しいんだけど(スケートでは誰でも正しいってところが面白いんだけど)-
I think his long program this year is designed to calm him down. And it’s not as exciting as it could be, and it’s not the tour de force that it might be because of his talent. It’s designed to teach this boy how to get out there and be a little bit on the brakes, and settle down, and do a couple of quads, and win.
羽 生の今年のロング・プログラムは、彼を落ち着かせるために意図されたものなんだって思う。だからもっとエキサイティングなものであってもおかしくなかった し、彼の才能をもってすればもっとすごい力作であっても良かったんだけど、そうじゃない。この少年に、ちょっとブレーキをかけて、落ち着いて、クワドを二 個くらい決めて、勝ってこい、っていうことを教えるようなものになってる。
And pace yourself (and pace yourself)
で、ちゃんとペースを考えろ、と。(そう、ペースを考えろ)
And so now I’m thinking, oh my gosh, all of that talent is being harnessed to somewhere he can control it, whereas before he couldn’t. And I’ve always said, he’s going to be so dangerous when it happens.
だ からやっと今になって思うんだけど、うっわあー、あのすごい才能が、彼自身でコントロールできるところまで制御されてるんだ、って。だって以前は彼、その コントロールするってのができなかったから。で、僕は前から言ってるんだけど、そう(コントロールできるように)なったら、奴はものすごく恐ろしいぞ、っ て。
フリー演技の放送中に解説の中で言っていることに呼応しているわけですが、カートさんは「ノートルダム」のプログラムをシーズンの最初の頃に観ていて、何となく音楽がスローだとか、盛り上がりに欠けるとか(一度は「このプログラムの音楽、ぼくは零点をつけちゃう」とまで言ったり)苦言を漏らしていました。
ところがこの12月になってやっと、「これは実は作戦だったんだ」と気が付いたと言っています。
彼の「読み」が当たっていたのかどうかはブライアンたちに聞いてみないと分かりませんが、このカートさんの分析が公開されると、一部のファンの間では「ノートルダム=大リーグボール養成ギブスプログラム」として知られるようになりました。
(↑ これをまたリアルタイムで読んでいた人、どんくらいいます?)
そしてこれからは2012年末の全日本選手権へと続くわけですが…