アスリートの心:金スマの織田信成特集を見て複雑な心境 | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

すっかりサボっていて久しぶりのブログ更新となります。

実は一昨日より神戸の実家を訪れているんです!

この夏は次男が大阪でバイトをすることになり、友人のNちゃんのところに3週間ほどお世話になったあと、オバアチャンちに移動しました。その世話を手伝いに私が帰省しているという次第です。

さて、昨夜は「金スマ」に織田信成くんが出演するとあって母と一緒に楽しみにしてテレビの前に座っていました。まあ、テレビ欄に「泣くな!織田信成」などとあったので、大まかな内容は予想できたのですが、案の定、織田くんの今ではお馴染みの号泣シーン満載でしたね。

最後に司会の中居正広が

俺、織田くんが泣いてるの見ても全然、泣く気にならないもん」、つまり、かえって笑いたくなる、というような事を言いました。

それを聞いて私はそれまでもらい泣きをしていたのですが、えらくムカつきました。

何に腹が立っているのかその瞬間ははっきりしませんでしが、思わず

「こら、何言うとんねん!」

と、とりあえずは画面に向かって言ってました。

さて、それから就寝し、時差ボケのおかげで今朝は3時半から目が覚めているのですが、改めて考えてこの記事を書くに至っています。

中居正広のコメントを聞いて何に腹が立ったのか?

たぶんそれは、ソチ・オリンピック以降、織田くんのキャラに当て込んでやたら同じようなパターンのバラエティ番組が彼を出演させ、号泣させてはまたそれを持ち上げたり茶化していることにつながっているのでしょう。

私は当然、織田くんの身内でも何でもないので、本人が承知の上でそのような番組にそのような役割を演じるために出演していることに提言する立場ではありません。

しかし、中居正広に代表されるバラエティ番組の制作者側の人間が彼に対してだんだん、横柄な発言をし、オモチャ扱いするのに懸念を覚えているのです。

金スマを見ても、織田信成くんが一体、どんな苦労をして、どんな思いでスケートをやって来たのか、その辺りはほとんど触れられていません。

そんな意図を持って作られた番組じゃないんだから、と言われればそれまでです。

そのような内容が望みであれば、先日放映された「アナザースカイ」だけを見ていれば良いのです。

それでも私はあえて言いたい。

織田くんはオリンピックに出た、超一流のアスリートなんだ。

つい数ヶ月前まで、日本のトップスケーター達とソチへの切符を争っていた、いや、世界のトップスケーターたちと十分、競い合える実力の持ち主だったんだ。

それを忘れないでほしい。

織田くんはただ、そういったアスリートには珍しいほどの優しく、素直な心を持ち、それを表現することをいとわない人なんだ。それが仇となっては悲しい。

昨年、10月にスケートカナダの舞台裏で私が見た光景。

羽生結弦選手はSPが終わった時点で、パトリック・チャン、そして織田信成選手に次いで三位だった。

フリーを滑り終わってバックステージに引き上げてきたところ、その羽生選手がたくさんのメディアに囲まれながらモニターを見ていると次に滑った織田選手のスコアが表示され、羽生選手の方が二位に浮上したことが判明した。

しばらくして、織田選手が引き揚げてきた。メディアの質問に答え、これから表彰式、という時、織田くんは同じくバックステージに待機していた羽生選手を見つけ、満面の笑みで走り寄った。

「おめでとおおおおおおお~」

と心底の喜びを込めて、両手を差し出して駆け寄った織田選手を見て、私は正直、驚いた。

え、だって、君、今負けたんだよ?今年のGPシリーズは君にとってものすごく大事なんじゃなかったっけ?悔しくないわけないのに、なんでそんなに爽やかな声出すの?


と思ったからだ。

今、思い返しても、あの時の大会でもしも、順位が逆だったら、織田2位、羽生3位、だったら、もしかすると羽生結弦は自力ではGPFに出場できていなかったかも知れない。

織田選手同様、高橋大輔選手の欠場によってやっと出られるという結果になったかも知れない。

そう考えるとつくづくあのスケートカナダでの結果が重みを増してくる。

でもあの瞬間、織田選手は全く何の迷いもなく、後輩選手への祝福の言葉を口にしていた。

「それがノブのキャラなんですよ」


と彼を良く知る人が言った。にわかには信じがたいが今となって本当にそうなのだと思える。

だからと言って彼が勝ちたいと思っていなかったわけではない。現に競技の日、彼は誰よりも前に会場に到着し、一人で音楽を聴きながら黙々とランニングやウオーミングアップをしていた。

リンクに上がる前は集中するために誰とも喋らず、キリッとした面持ちで待機していた。

これほどのレベルに到達したアスリートがどんな過酷な練習に耐えてきたのか。面白おかしく語られる数々のエピソード、採点ミス、用具の不具合、これらが彼をどんなに傷つけたのか。

それを思うからこそ、私は腹が立つ。



あら、いつの間にか「ですます調」から脱して、お得意の説教調になってました。でもそれほど憤慨した、ってことです。

奇しくも「金スマ」放映と同じ日、日本で「アナと雪の女王」がボコ流行りしてリピート観賞が続出しているとか、カラオケで主題歌が歌われまくっているとか、コスプレまで登場する騒ぎとなっているのもテレビで放送されていました。

息子はそれを見て、

「でもさー、こんなのもあと二か月くらいしたら皆、忘れるんだよね。マスコミにちょっと取り上げられて行列の出来る店が次の年には潰れているってのと同じで」


と言いました。

織田選手が賢く、今のブレイクを自分のために利用してくれることを祈っています。