スケートカナダでメディアセンターのボランティアをさせてもらった時、選手た;ちが演技を終えて間もなくメディアの待ち構えるエリアに連れて行かれ、そのすぐ後には記者会見に登場する様子を見ることができました。
まだ興奮(喜び・悔しさ)冷めやらぬ中、大勢の記者の前で自分がたった今、終えたプログラムについて感想を聞かれたり質問に答えたりするのはとても大変だな、ということがよく分かりました。
そんな精神状態でまともな事を言える方があっぱれだと思うのですが、選手たちはたいてい無難にインタビューや記者会見をこなします。
なのでパトリック・チャンがオリンピックという最大の舞台で、SP後に言った言葉の揚げ足を取る必要もないのかも知れませんが、ちょっと書いておこうと思いました。
パトリックはSPを終えて羽生結弦をほぼ4点差で追っている。
インタビューを総合すると得点には満足していて、二位でフリーに行けるのは全然、構わない、いつも追われる身だからこうやって追う側にいるのは自分にとってむしろやり易い、ユヅルは(首位に立って追われるのは)初めての経験だろうから、しかもこんな大きな大会で自分の背中に貼り付けられたターゲットを重く思うかも知れない、などなど。
これらのセリフを饒舌なパトリックが例の「イッ」とした笑顔で言ってる図が容易に想像できます。もちろん、自分を奮い立たせるために言ってたり、理論的には確かにそうだ、と思えるふしもあります。
でも、私が言いたくなったのは
違うよパトリック。
結弦くんは追われる立場になったのは初めてじゃないんだよ。
大きな大会だけを挙げたとしても、先シーズンのNHK杯、全日本選手権、今シーズンのグランプリファイナル、そしてまた全日本選手権でも、彼はとんでもない緊張感の中、その背中のターゲットを追いかけて矢を放って来る選手を振り切って勝って来ているんだよ。
「日本の選手じゃなくて良かった、全日本選手権を闘うのは大変だろうから」
と、パトリックはいつか言ってました。
その経験こそが今の結弦くんの強さを作ったのに。
それを言えば、君だってこれは初めての状況でしょう。自分でもそこそこ良い演技をしたと思っているのにショートを終えた時点で二位、って言うのは。
かつての世界選手権だけをとっても、後ろから追いかける必要がなかったし、完ぺきな演技をしなくても勝てて来たのだから、全く間違いを許されないという重圧を感じるのはそれこそ初めてのチャレンジじゃないかな。
いや、待てよ、一回だけあったっけ。二位から追いかけて、フリーでノーミスの演技をした、っていうのが。それが去年のGPF。
うーん。
結弦くんは「いつも通りにやるだけ」って言ってるけど、彼のいつもどおりは「一心不乱に、一生懸命、必死に、全てを出し切って」なんだと思います。
だから確かにオリンピックだけど、何も違わない。
いずれにしても今日のフリーは二人の一騎打ち、とてつもないレベルの闘いになるだろうし、そうなってくれることを祈っています。
May the best man win.