『ほかげ』(2023)
監督・脚本 塚本晋也
音楽 石川忠
趣里、森山未來、塚尾桜雅(つかおおうが)、河野宏紀、利重剛、大森立嗣(おおもりたつし)、他。
終戦間もない東京。瓦礫の中にかろうじて焼け残ってる居酒屋のような家屋に一人住む女(趣里)は夫も息子も亡くし、売春斡旋業の男(利重剛)に客を紹介してもらっていた。ある日、闇市で盗みを働き追い立てられた戦災孤児(塚尾桜雅)が逃げ入ってくる。また、客として気の弱そうな復員兵(河野宏紀)もやってきて、流れ上、三人で数日を共にする。けれど、復員兵は金を持ってこないし、戦災孤児はまともに働いているかも疑問だ。しかも孤児は拾ったという拳銃を持っていた。女が梅毒に罹ったこともあって、やがて三人はバラバラになる。そんな中でも孤児は新しく出会ったテキヤの男(森山未來)に雇われ仕事を得る。女との生活のためにちゃんと働こうとしていた。しかし、その仕事はテキヤの男の元上官(大森立嗣)への復讐の手伝いだった。
孤児はテキヤの男からの報酬を電車賃分しか受け取らない。女からまともな仕事でちゃんと働くことを言い聞かされてたからだ。テキヤ男との仕事が終わったら戻るとしていた孤児は、奥の部屋から出てこない病床の女と、それでも暮らしたくて闇市で働き口を探す。どうにか決まったところで、銃声が空に響き渡る。女のところに置いた拳銃に一発残っていた銃弾だった。
戦争によって傷つきトラウマを持ち生きる希望などとうてい待てない人々、過酷な戦中に辛酸を舐めた人々、またそこから立ち上がり未来に向かおうとする生命力あふれた人々が描かれる。
心の弱い人、強い人、優しすぎる人、状況を割り切れる人らに自分を重ね、戦争の怖さ、悲惨さも疑似体験できる。
復員兵が生きる屍のようになってガード下で時を過ごしている図はきつい。戦争という非日常を乗り越えるには心がどれだけ疲弊し、破壊されるだろうと、それはテキヤの男の上官だった男の優しそうな笑顔の裏にも隠されていると思える。テキヤの男も売春女も区切りをつけないと次の道が見えて来ないのだろう。女はついに見えずじまいだったが。一方で孤児はどうなっただろう。まともな仕事を選ぶ必要もなくなった。テキヤの悲しさ、復員兵の辛さ、女の優しさを知ったこの孤児のその後の物語が見たいと思った。
趣里の演技、表情、仕草は良いのだけど、台詞を発する声、言い方がちょっと痛かった。もう少し柔らかいほうが響く気がする。そのくらいの温度にはできる役者だと思うんだけど、監督はOK出したんだから正解なのか。残念だったけどな。
★★★★
