『勝手口の少女』(製作2023/公開2024)
ndjc(New Directions in Japanese Cinema)
文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品
監督・脚本 山本十雄馬(やまもととうま)
中学生の謙一(斎藤汰鷹)は母親博子(黒沢あすか)から虐待を受けている。謙一の目つきを嫌っている。この日も成績が落ちたことをなじられ、スマホを壊される。謙一は博子を階下へと突き落としてしまう。
一命はとりとめたものの意識は戻らないまま入院となった。ある日の夜、鈴の音が聞こえ外を見ると、一人の女性がボストンバッグを持って敷地を出て行っていた。翌日の夜には勝手口から泣き声が聞こえ、確かめに行ってみるとセーラー服の少女(石田莉子)が膝を抱えて泣いていた。次の瞬間、居間の灯りがついたかと思うと、父親(山田浩市)に皿を投げつけられるなど虐待を受けてる少女がいた…その名を博子と言った。病床に眠る母親の額を見ると、少女と同じ場所に傷があった。少女は母親だった。
母親も虐待を受けて育ち、たったひとりの友達猫のみぃちゃんも父親に殺められていた。その猫の鈴の音が博子の宝だった。
母親の命と、母親への憎しみと、博子への同情とが入り混じる謙一が描かれる…。
一歩間違えれば人生を終わらせる犯罪にも発展する、虐待の連鎖を描きつつも、病床の母親もまた謙一と同じ夢を見ていたというファンタジー仕立て。
博子より謙一の方が辛いであろう設定。友達のみぃちゃんがいて、家を出さえすればとわずかな希望を持てる博子の方が少しマシ。でも、出たところで、結局父親のところ(実家)に戻ってきているという現実は辛い。それだけ虐待は尾を引くということか。
謙一の目つきが嫌いなのは、父親と似ていたからだと言う博子だが、最後は好きだと言う。複雑だ。
音楽 後藤沙希乃
制作 東映東京撮影所
★★★(★)