『茶飲友達』(2023)
2013年に実際に起きた高齢者向け売春クラブ事件から着想を得た作品。とのこと。
監督・脚本 外山文治=とやまぶんじ(『ソワレ』他)
音楽 朝岡さやか
岡本玲、磯西真喜、梅沼美羽、渡辺哲、瀧マキ、岬ミレホ、長島悠子、百元夏繪(ひゃくもとなつえ)、クイン加藤、海江田眞弓、楠部知子、中山求一郎、アサヌマ理紗、鈴木武、佐野弘樹、光永聖、中村莉久、牧亮佑、名越志保、重岡サトル、池浪玄八、五頭岳夫、山下ケイジ、吉田茂樹、荻野祐輔、大河内健太郎、横山美智代、山形美智子、吉澤憲、福田温子、伊藤慶徳(いとうけいとく)、大森勇一、谷川美枝、石川佳代、大根田良樹、伊藤祐輝、高橋清、峰秀一、他。
高齢者向けの売春クラブ「茶飲友達(ティーフレンズ)」を仲間数人と運営する佐々木マナ(岡本玲)。ティーガールと称する風俗嬢は65歳以上の女性。新聞の三行広告で利用者を募っている。「煎茶コース」と「玉露コース」があるが、ほとんどが本番有りの「玉露コース」を選び、さらに会員になって定期的に利用する。
ある日、スーパーで万引きで捕まりそうになった女性松子(磯西真喜)を救ったマナは、「茶飲友達」に誘う。独身できた松子は親を見送り、孤独で自死をも考えていた。そんな松子に親身に寄り添うマナにほだされ、ティーガールになる。最初は抵抗もあったが、No.1のティーガールの手解きもあり、やがて人気No.3までいく。
しかし一度は自死を考えた松子は、会員客の自殺を見て見ぬふりをして事件化、「茶飲友達」が摘発を受けることになる。そこで今まで仲間、ファミリーと思ってきたスタッフやティーガールたちが次々に自分都合でマナを見捨て去っていく…。
ティーガールたちの事情、スタッフたちの事情、利用客の事情、そしてマナ自身の事情を描きながら、高齢者と若者に巣食う孤独感と閉塞感が露わになっていく。
松子も「騙されたって利用されたって良かった」と言う。もしかしたら何か変わるかもしれない、確かにマナを始めとした人との触れ合いが力になりはしたが、現実は万引きは治らないし、それは希望がない孤独感から逃げられなかったということなのだろう。だから客が首を吊るのを黙認した。
気の毒だったのは、妻に先立たれ腐っていくだけの生活を送っていた時岡(渡辺哲)。「茶飲友達」を利用することでイキイキとしたなりに変わっていった。なのに、おしゃれをしていつものように電話をかけるが、摘発を受けたので不通。力なく座り込む時岡に、この先をどう生きるんだろうかと考えてしまった。
スタッフの千佳(海沼美羽)は妻子ある男の子供を身籠る。その男と一緒になることは諦めたが親のいない千佳には子供を産まない選択肢はない。
他にも脱サラして夢のパン屋を開店したものの失敗し、車中泊している父親を抱えるスタッフ。パチンコ依存症のティーガールは打つ金欲しさにどんな嘘も重ねる。
捕まったマナが事情聴取で女性刑事に「自分の寂しさを他人の孤独で埋めるな」と言われる。自分では希望を与え、居場所を作ってあげてるつもりになっていた。マナは厳しい母親に虐げられてきた。その母親は今、余命いくばくもない状態で、看病をしている弟(重岡サトル)からは手助けを乞われていた。けれど憎くて、自分が家に居場所がなく風俗へ落ちたのも母親のせいと思っているマナ。本当は母親を求めて、ティーガール、特に松子に母親の愛を求めていた。それを突かれて悔しさと絶望に呆然とする表情が素晴らしかった。
また、これ、やがては誰にでも来る未来であること、それは劇中の若いスタッフにも来る。今は小馬鹿にし笑っていても、いずれはティーガールたち、老齢の客たちの気持ちがわかるようになる。それが見える作品で、ヒリヒリした。なにしろ老人ホームにまで出張する。もちろん民間施設なので知人を装えば問題なく面会可能。そして松子のいる空間で首を吊る客、その寂しさ、気持ちがわかるからあえて止めることをしなかったし、最期を独りにしないためにも居ようと思ったのだろうし、客も逝けたのだと思う。しんどい。
総じて、人は人を求め、そこにぬくもりを期待し、永続的な愛を追うものなんだなぁと思った。なかなかに切なく、また役者が素晴らしく、グッとくる作品だった。
★★★★★
配給 イーチタイム
