夜明けのすべて | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『夜明けのすべて』(2024)

原作は瀬尾まいこの小説。

 

監督 三宅唱(『きみの鳥はうたえる』ケイコ目を澄ませて』他)

脚本 和田清人(『ギャングース』他)、三宅唱

 

上白石萌歌、松村北斗、光石研、りょう、芋生悠、内田慈、渋川清彦、藤間爽子、宮川一朗太、丘みつ子、久保田磨希、足立智充、山野海、斉藤陽一郎、他。

 

歳を経るごとにどんどんひどくなるPMS(月経前症候群)持ちの藤沢美紗(上白石萌歌)は、きつい処方薬のせいもあって前職を追われ、事情を受け止めてくれる会社、顕微鏡や望遠鏡の工作キットを作る栗田科学で働き始める。社長の栗田和夫(光石研)も弟を亡くしグリーフケアに通っている身で、何かを抱える人を社員に受け入れていた。

気をつけていてもどうしようもないPMSの症状。藤沢はある日、どこか無気力で人を寄せ付けない同僚の山添孝俊(松村北斗)の行動にイラつきが爆発してしまう。けれど、山添もまたパニック障害という疾患を抱えて人生諦めモードの中生きていた。

二人の間に、互いの疾患のことを知るほどに互助関係が生まれていく…。

自分のことはままならないが、他人になら力を貸せるかもしれない、一緒のプロジェクトに入ったことも手伝い、日々をまあまあ良い調子に過ごせるようになっていき、山添には元の会社に戻りたい一心だったのが現社員を続けることを選ぶ変化があり、藤沢には介護が必要になってしまった母(りょう)のために転職、実家へ帰る決意が生まれる。

 

すごく静かに、だけど人対人の会話だから痛さもあり、ふんわりしてるのに重い。上白石萌歌の演じるキャラクターのブスさ加減(褒めてる)がちょうどよく(池脇千鶴に通じる良さ)、松村北斗のうちの会社にもいそうというキャラクターも馴染みよく、とても良い作品だった。

 

山添の元の会社の上司辻本(渋川清彦)も姉を亡くしグリーフケアに通う身だった。最初は山添は出向かと思ってたけど、どうも辻本と栗田がそこで顔馴染みだった故とも考えられる。

 

すべての人は他人に知れず悩みを抱えているものだということなんだろう。また、栗田科学が地域貢献活動として移動式プラネタリウムを催す点から星が関連づけられている。

今見えてる星は何百年も前の星であり、遠い将来星の名も変わることを説き、命の単体としての短さと、それとは逆に生命体の脈々と継がれる永続性を感じさせる。そんな地球を含む宇宙において人間が生きることの小ささに複雑な気持ちが起こる。同時にそれしきのことかと短絡的に物事をとらえられる。まあ、私は死が怖く、空を見上げると無常感でいっぱいになるけれど。

 

タイトルは「夜明け前が一番暗い」というイギリスの言葉(シェークスピア「マクベス」)からのようだ。「夜明け前が一番暗い」=「朝の来ない夜はない」→苦しい状況はいつかは好転する、とか、苦難は終わりかけの時が一番しんどい、とか。夜明けは人生の全てを網羅しているということでは?

 

親身に寄り添う元同僚なのか彼女なのかの大島千尋役に芋生悠、相変わらず役が降りてて素晴らしい。なんてことない役なのに。

そしてりょうが成人女性の母親役…(T . T)無情なる年月よ…。

 

★★★★★

 

 

 

配給 バンダイナムコフィルムワークス、アスミック・ワークス