ジェニファーのしたこと | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『ジェニファーのしたこと』(2024)Netflix

2010年、実際に起きた事件のドキュメンタリー。

原題は『What Jennifer Did』。製作国はイギリス。

 

監督・脚本 ジェニー・ポップルウェル

 

ハン・パンビック・ハ・パン夫婦はベトナムからカナダへと渡ったベトナム移民で、一生懸命働き家を持つほどに成功をおさめる。夫婦にはジェニファーという娘が生まれ、教育はもちろん、習い事もさせ、不自由のない環境を整えた。2010年、オンタリオ州マーカムの自宅で事件が起こる。ジェニファーが大学も終えた24歳時。

夜半、恐怖に慄くジェニファー・パンからの通報が入る。何者かが侵入し、両親を銃殺し、自分は縛り付けられ身動きできないというのだ。駆けつけた警察、救急隊は凄惨な現場を目の当たりにする。母親は亡くなってしまったが、父親は一命をとりとめた。が、重体で余談を許さない。唯一、無事だったジェニファーへの事情聴取が始まる。

その事情聴取は14日間3回に渡って行われ、最初は精神的にまいってるジェニファーを案じながらされたが、調べていくうちにいくつかの疑問点、矛盾点が浮上する。容疑者エリック・カーティーデビッド・ミルバガナムも上がり、それらを丁寧に洗いながら、ジェニファーを詰めていく…。

 

結果からいうと、ジェニファーによる嘱託殺人。理由はダニエル・ウォンとの交際を認めてもらえなかったから。ダニエルにはジェニファーと別れ、すでに新しい恋人クリスティーンがいた。ジェニファーはまだ想いが残っていて嫉妬も働く。

また、ジェニファーは両親が期待を寄せるほど優秀な子ではなかった。実際は大学も落ちたのに、受かったと卒業まで騙し続けた。それだけ両親の圧が強かったのだろう。

ダニエルは大学にいってたが、麻薬に手を出していた。ジェニファーはダニエルとの仲に邪魔な両親(主に父)を殺害しようと、ダニエルの闇のツテで「ホームボーイ」なる人物レンフォード・クロフォードを紹介してもらい、仕事を依頼する。この時、ジェニファーにはすでに何の気もないダニエルが仲介を受けたのは金のためだったようだ。

 

親の期待や理想が負担になって起きた事件と言えるかもしれないが、だとしたら、歪な人間を作り出すのって意外に簡単じゃん、となってしまう。そうではなくて、もともと持ってる資質、人格による部分が大きいのではないかと思う。逃げ場がなくなったのにも関わらず、実は自殺幇助を頼んだのだと最後まで自身の罪を認めぬ抵抗をするジェニファーにはサイコ味を感じたし。

作品ではジェニファーは「愛と承認が欲しかった」とあるが、もっと根源的なもののように思える。ただただ「ダニエルを手に入れたかった、そのためにはどうするか」しかなかった、その執着は異常でしょう、ふつうに。

また、父親殺害を依頼したのは2回目だったという。そこまでの恨みの因が単にダニエルの交際反対だけというなら、その方がおかしい。そんなモンスター、作れるものなのか?

母親をも父親同等に殺害対象にしていたのかわからないが、犯人を前に母親が言った最後の言葉が、「娘を傷つけないで」だったそうだ。母親としての愛情はあった。それをジェニファーは感じ得なかったわけだ。

もともと何かが欠落していたのだと思えてならない。

 

刑罰は25年間仮釈放無しの終身刑、及び父親には娘からの接触禁止命令が出たが、再審請求、ジェニファーは無罪を主張しているらしい。

 

「殺人事件がもたらす高揚感は、疲れとともに冷める」という捜査官の言葉が、理解できるだけになんともいえない気持ちにさせられた。凄惨な事件事故、小さくはスキャンダルに人は興味をそそられる。

そして、縛られていて身動き取れないのに通報出来てる時点でおかしいと思った。動機含む手法は想像とは少し外れたが、この手のドキュメンタリーの衝撃には慣れが出てしまってるなぁと感じた。良くない、自分。
 
★★★