マッチ工場の少女 | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『マッチ工場の少女』(1990/日本公開1991)

フィンランド映画

原題は『Tulitikkutehtaan tytto』、英題は『The Match Factory Girl』。

監督 アキ・カウリスマキ

 

アキ・カウリスマキ監督の労働者三部作と言われてる作品の3本目とのこと。(『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』)

フィンランドの当時の社会情勢もお国柄も知らないので、素直に物語を追うだけだった。

 

 

 

 

マッチ製造工場で働くイリス(カティ・オウティネン)はその収入をあてに働かない母親(エリナ・サロ)義父(エスコ・ニッカリ)と粗末な部屋に三人暮らし。兄(シル・セッパラ)は義父が嫌で家を出た。

年頃のイリスだが、身なりがみすぼらしいのか、容姿に恵まれてないせいか、ダンスホールに出かけても最後まで声をかけられることがない。そんなだから給料が出た日、思い切って派手なドレスを買った。両親にはなじられたが、そのドレスを着てイリスはクラブへ出かける。そこでようやく一人の男アールネ(ヴェサ・ヴィエリッコ)に声をかけられる。

イリスはハイセンスなアールネのアパートで一夜を共にする。アールネを好きになってしまったイリスだったが、アールネにとっては一夜の遊びでしかなく無碍にされる。以降連絡を取ることもできなかったが、やがて妊娠が判明する。イリスは多少の希望を持ってそのことをアールネに告げに行く。しかし結果は堕胎費用を渡されるに終わる。

ショックを受け、絶望を感じたイリスはアールネ、そしてヤリ目のたまたまその日出会った男、虐げてきた両親に毒を盛る…。

 

ほとんど台詞がなく、俳優の表情や所作の演技など映像で物語が進む。説明がないのは余計だからだろう。目に見えてる情報だけで充分だというのだろう。振り返ってみるとまさにそうで、これまで親切にも登場人物の年齢から性格、家族構成までぜんぶ文字や言葉にして教えられてきたんだなぁ、と感じた。映像作品において設定の詳細は受け手には実は説明いらないんじゃないか。目に見えるものがすべてである方が、自由度があり受け手に優しい気がする。もちろん、そこまで映像力を持ったクリエイターに限るけど。(でもこれ、一応、挿入歌がバックを照らす効果を担っている)

 

ジャンルはサスペンスかもしれない…と思ったけど、コメディらしい。え?どこが?とよくよく見返すと、相手の行動所作に半ばシニカルに反応する演技はユーモラスかもしれないと思った。ジワリとくるおかしみだ。

年頃と書いたけど、イリスは少女という年齢ではないと思う。むしろいき遅れでは?(笑)。アキ・カウリスマキ監督作品の常連女優らしい。なんとなくわかる気がする。癖強めで。

 

両親が日がな一日見てるテレビのニュースは天安門事件を中心にその時の世界情勢が報道されていて、ほぼ見たことのある映像だったの、リアリティがあって良かった。感情が昂ることなく平然と視聴する両親(イリスも)、他国のことなんてそんなものだろうことがよく表れていてなお良かった。

あと、マッチってそうやって作られているのか、と知れたの良かった。

いい作品を観たな、と思った。

 

★★★★(★)