【ndjc】パーマネントランド | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『パーマネントランド』(製作2011)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

全作品30分程度のショートムービー

 

監督・脚本 中江和仁(『劇場版きのう何食べた?』他)

 

廃村が決まった山奥の村に暮らす年老いた母富子(喜多道枝)を移住させるためにやってきた息子の幹夫(佐藤貢三)とその妻(春木みさよ)と子供たち。友人のケン(森下能幸)の母親もようやく街の新築住宅に移り、あとは富子と近所の頑固じじいトウベエだけになった。うまく説き伏せられないまま幹夫は富子が畑に行ってるすきに移住承諾書に判を押してしまう。いざ、立ち退きの日、水回りを自分で壊さなければならなくなった時、幹夫の頭には「ここで死なせてほしい」と言った富子の言葉、「家を殺すことはおかんを殺すことと同じだ」と言ったトウベエの言葉がよぎる…。

 

人と土地の関係性を問う作品だった。

住めば都とは言うけれど、何十年もその土地で生き、新しい住宅に移ったところで年老いた人間に何が見いだせるだろうか。新境地を開き、充実した明日が約束されるだろうか。

劇中で片付けをする幹夫も、自分の思い出の品物を懐かしそうに愛おしそうに、捨てるのをためらうシーンがある。土地にも家屋にも生きた証の時間が刻まれているのだ。実家を自分で片付けるのは寂しいかもしれない。

水道が使えると、いったん出て行っても戻って来てしまう人がいるから水回り壊さねばならないと役所の人は言う。それは他人が壊すわけにいかないと言う。しかしハンマーを受け取れない幹夫。このシーンは胸がつまった。水道はライフラインだもの。

それから幹夫が富子を引きずり声を荒げるシーン。子供より小さくなった母親の体のリアリティに心が痛かった。

 

富子は引っ越した先でどんな残りの人生を送るのか。

台詞は必要最低限、背景と行動所作、表情で語る映像表現ならではの手法だったし、話もとても良かった。

 

★★★★★

 

 

制作プロダクション パレード