『∞ゾッキ』(2022)
『ゾッキ』公開から1年、今度はテレビドラマ。蒲郡編、豊橋編、豊田編とあり、各、その市の特色を紹介する「旅ゾッキ」と、ドラマ「ゾッキ」、そしてそのメイキングの「裏ゾッキ」で構成されている。全てBS放送、及び配信されたもの。
【蒲郡編】
「旅ゾッキ」は愛知県出身の松井玲奈が旅をし、ナレーションを前野朋哉。そのナレーション、ナレーターとしては声色を特徴づけテンション高めでやってたけど、コメント入れはふつーに前野朋哉になるその落差が面白かった。
「裏ゾッキ」はそのまんま、市民ボランティアスタッフ協力のもとドラマ「ゾッキ」メイキング。
ドラマ「平田さん(万引き、理想の人)」
原作 大橋裕之
監督 竹中直人
脚本 和田清人、竹中直人
長井短、山下リオ、マキタスポーツ、沖祐市(スカパラ)、中村達也、井口昇、土佐和成、大橋裕之、希咲美羽
カフェで働く平田正子(長井短)は正義感にあふれ、自分の意見をはっきり言えるかっこいい女性。平田さんに憧れている同じくカフェで働くメガネ(山下リオ)はそのまったく逆の性格。でも平田さんのようになりたいと思っている。
町の本屋で起こった万引き犯(大橋裕之)をおさえたり、自転車屋(土佐和成)の悪行を正したり、大好きなラーメンを食べてる横での喧嘩騒ぎをおさめたり、平田さんの活躍を描く一方、メガネの恋の成就に協力する平田さんだったが…。
★★★★
もう、なんてことない日常のなんてことない一コマの可笑しみを抜き出した作品。ただただ平田さんがクールでかっこいい。冷静に考えると社会不適合者だけど、最後に俗っぽさが出てたのがいい。長井短好きなので満足。ほんとにこんな人なんじゃなかと思えてしまうくらいハマってた。
【豊橋編】
「旅ゾッキ」は豊橋出身の松井玲奈が旅人。ナレーションは前野朋哉。蒲郡同様、市民協力があるので、観光名所や名物が紹介されて、旅行の際には参考にしたいものばかり。
「裏ゾッキ」では、美術部のこだわりを中心に見せている。映画は多くの人の一人一人のこだわりが集結されているのだなと思った。
ドラマ「見張り台」
原作 大橋裕之
監督 山田孝之
脚本 小寺和久、山田孝之
久保田直樹、渡辺憲吉、北原芽依、齋藤里菜
何を見張っているのかよくわからないが、いくつかの高くそびえる塔が立ち並び、そこで敵の侵攻があった時にはのろしをあげる、という見張りをする仕事についた五木(久保田直樹)。30年勤務してきたベテランの本田(渡辺憲吉)が間もなく定年となるので引き継ぎも兼ねた交流がある。また、隣りの塔の女性監視員に興味をそそられる五木…そんな自由もあるゆるい仕事。しかして、本田の勤務最終日に起こったこととは…。
★★★★
スイカの落下からのラストの画が、こだわりを感じるほどきれいだった。
【豊田編】
「旅ゾッキ」は鈴木福が巡る。
「裏ゾッキ」は蒲郡に続く豊橋、豊田ということで、市民参加もだいぶ融通が利いている感じだ。
ドラマ「シーン1」
原作 大橋裕之
監督 齊藤工
脚本 倉持裕
田中光、田中麗奈、望蘭(みらん)、土佐和成、渡辺憲吉
ホームセンターに入る男(田中光)、そのホームセンターの自動扉に念を送る女の子(望蘭)、ホームセンターの中で男が会った女(田中麗奈)。その女と男の間には何やら思い出したくない気まずい過去がある様子。その二人のやりとりの正解を導き出すまでホームセンターから出られないというタイムリープが起こる…。
★★★★
「平田さん」に出ていた自転車屋の店主(土佐和成)が画鋲を買っていたり、「見張り台」に出ていた本田(渡辺謙吉)がランタンを物色していたりするのが、地続き感があって良かった。物語とは逆で時間軸と人の存在を感じられて。
「裏ゾッキ」でその存在を明かされていたけど、ホームセンターの店長が指を怪我している。それがすごく気になっていたのだけど、物語の中では触れられることはない。そこが良かった。
なんでもない日のなんでもない出来事をなんてことなく描いてる。人間の普段見えない隠している部分がチラッと出てしまう一瞬を描いてるのかもしれない。シュールと言えばそうだけど、この作品群はもう少し軽い気がする。そして各監督の好みも色も出てる気がする。その上で、私は長井短が好きなので、「平田さん」が一番良かったかな。