2022夏期連ドラ視聴したものまとめ③トラコ、初恋 | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

こちら、2022年夏期連ドラ、最後まで視聴したものまとめになります。

 

 

 

『家庭教師のトラコ』

(水曜22時〜日本テレビ系列)0720〜全10話

脚本は遊川和彦(『弥生、三月君を愛した30年』、『35歳の少女』『過保護のカホコ』『家政婦のミタ』『女王の教室』他)。演出は伊藤彰記、岩本仁志

 

橋本愛、中村蒼、美村里江、板谷由夏、鈴木保奈美、細田善彦、丸山智己、細田佳央太、加藤柚凪、阿久津慶人、矢島健一、他。

 

養護施設で育った根津寅子(橋本愛)福田福多(中村蒼)は仲良しだったが、福多が里子の最後のチャンスを掴んで以降音信不通となっていた。養護施設を出てから一人で生きてきた寅子は社会に不満を持っており、もっとお金は正しくつかわれるべきと独自の理想を持っている。それを実現させるために家庭教師を始める。福多は余裕のある家庭で育てられ、東大〜財務省とエリートコースを歩んでいたが重責から辞職し、寅子との再会により、寅子の壮大な計画に力を貸す。

寅子が目をつけたのが夫(矢島健一)が銀行家の富裕層上原家里美(鈴木保奈美)はホステス上がりの後妻で連れ子の芸人になりたい守(細田佳央太)がいる。前妻の優秀な二人の子のように守には東大に入ってもらうつもりでいる。それから玩具メーカー勤務の夫(細田善彦)と新聞社勤務だったが異動辞令が承服できずフリーライターになった真希(美村里江)中村家。娘の知恵(加藤柚凪)を名門私立小学校に入れたいと思っている。そして親の代の食堂を継いでいるシングルマザーの下山智代(板谷由夏)。小学生の息子高志(阿久津慶人)は優秀だが家にお金がないことを知ってて遠慮がち。本当は塾にも通いたいし私立中学に行きたい。智代が癌になったことから医者になりたいと思うようになる。離婚した夫(丸山智己)なら余裕もあり、才能を伸ばしてあげられるのだが…。

 

家庭教師が子供たちに社会を生き方を人を思いやる心を、倫理道徳を教えていく→結果親たちの意識変革にもなるドラマかなと序盤はけっこう面白く見ていた。ところが、上原が不正に得たいわゆる裏金10億を脅迫によって引き出し、上原本人の名前で養護施設に寄付をする、これが生きたお金の使い方=目的であり社会の意識改革…というが、どんなお金であれ他人の金に変わりはなく、それを右から左に流しただけ。これが寅子のやりたかったこと、社会改革かとゲンナリした。狙う懐は上原家、その手伝いに元新聞記者の真希、智代はついでというターゲットの決め方からどうかと思う。

寅子の社会の何を見てきたのか、いや、自分の不幸は社会のせいとしてきた寅子の目的が子供っぽすぎて、これはまさかの愚作かとがっかりした中盤。ここで初めて脚本家の本当の意図は何だろうと考えられたので、まあ、流れがどういこうと視聴を続けられた。

その後、寅子の実母が見つかり、里美、智代、真希と偶然とはいえ過去に関わりがあったことが判明するが寅子はそれにまったく気づいてなかった。この偶然は里美、智代、真希の心に作用しただけというあってもなくてもかまわない展開を見せる。

自分が不幸なのは社会のせい、人のせいとしてきた寅子に、はからずも寅子よって自立心や人を思いやる心、頑張る勇気を知った子どもたち、その子どもたちの成長によって母親も成長した。結局、こじらせ寅子を正しい道へ導いたのは家庭教師先の親子。という人情ドラマ…言いたいことはやはり社会がどうのではなく、自分がどうであるか、というもので、見続けて良かったと思ったのも束の間、ラスト1話での寅子のキャラ崩壊と福多の結婚式ブッチにこっちの血管が切れそうになった。

とんでもない教育の新しい形を見せてくれるのかと思ったら、オーソドックスな義理と人情、人の良心によって成長を果たす寅子の物語だった。それならそれで、ラスト1話は蛇足。

話には関係ないが、最終回での橋本愛のやる気のない演技はひどすぎる。もう仕事放棄レベル。よくあれでOK出したな、演出家。もともとうまくないのに。橋本愛的にも納得のいかない展開だったんだろうな。

まあ、展開はご都合だが、所詮ドラマ。

クソドラ。

 

★★

 

こちら動画一覧

 

 

 

 

『初恋の悪魔』

(土曜22時〜日本テレビ系列)0716〜全10話

脚本は坂元裕二(『Woman』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『カルテット』『anone』『大豆田とわ子と三人の元夫』他)。演出は水田伸生(『舞妓Haaaan!!!』『謝罪の王様』『あやしい彼女』他)、鈴木勇馬(『二月の勝者』他)、塚本連平(『レオン』他)。

 

仲野太賀、松岡茉優、林遣都、柄本佑、伊藤英明、安田顕、佐久間由衣、満島ひかり、毎熊克哉、玉城ティナ、田中裕子、山谷花純、他。

 

キャラクター設定がとにかく細かく、だから行動に無理がない。そして徹底して個性を大事に描く。その個性に役者がぴったりはめてくる。技量があるからできることで、松岡茉優が私的にはもう少し…だったけど、総じて見ればなくはない程度に収まっていた。なんと言っても林遣都が好演で、安田顕と絡むところなど、一人一人で見たら癖強すぎて近寄れないタイプの人間なのに、この二人の間には何か繋がるものがあり、互いの波長が合っていることが面白かった。今季イチ面白かった。柄本佑もおかしかった。仲野太賀もやはり間合いが秀逸。台詞付きの出番はあまりなかったが、佐久間由衣もこの役は良かった。伊藤英明といい、毎熊克哉といい、まさかのキャラにしてキャスティングの素晴らしさ、本当に役者の凄さ、表現力の幅の広さを見たなと。

 

警察署に勤める四人が部署の垣根を超えた友情(?)で繋がり、事件の真相をあばいていく中で、重大な事件の隠蔽にたどり着く。

警察官の兄朝陽(毎熊克哉)が殉職した弟の馬淵悠日(仲野太賀)は警察署でも部署は総務課勤務。ある日兄の上司だった警察署長の雪松(伊藤英明)から兄の死に何らかの関係があるかもしれないと匂わされ、停職中の刑事鹿浜鈴之助(林遣都)の動向の監視役を命じられる。鹿浜は推理好きの猟奇犯罪マニアで、今隣りに住む男(安田顕)が怪しいと目をつけているところだった。また、細かい性格の会計課の小鳥琉夏(柄本佑)は署内で疎んじられていたが、新人刑事の服部渚(佐久間由衣)だけはやさしく話を聞いてくれることから、渚の力になりたいと悠日に今刑事課で抱えてる事件の解決糸口を一緒に見つけて欲しいと持ちかける。悠日は推理マニアの鹿浜を取り込むことを思いつく。三人で事件を探ろうという中、たまたま入った資料室で生活安全課刑事積木星砂(松岡茉優)に出くわす。流れで四人で事件を推理することになる。しかし、推理がうまくいってもその手柄は渚のものとならず、要領のいい同僚に持っていかれるのだった。その後も何度か試みるのだが、結果は同じな上、小鳥の想いは宙に浮いたまま。

そうしてなんだかんだ四人の事件推理チームができあがる中で、渚に想いを寄せる悠日、同じく想いはあるのに認めない意固地な鹿浜の過去など描かれ、やがて悠日の兄朝陽の死に疑念がわき、隣人の森園真澄(安田顕)はシリアルキラーなんかじゃなく元弁護士の小説家であり、とある事件を独自調査していることが判明、また星砂が朝陽のスマホを所持していたこと、解離性同一性障害が発覚することで状況は複雑を極める。

星砂の過去をたぐりつつ、雪松と息子弓弦(菅生新樹)の関係、新たな事件の関係者の登場が過去へつながり…。

 

8話でタイトル回収。まさかそこがタイトルにかかるとはひとつも思い及ばずだったし、悪魔という表現がまたかわいらしい。こういう裏を書かれる感じが大好きだ。そして事件が全面解決する頃には、視点が悠日から鹿浜に移っていた。確かに悠日の軸で進んでいたはずなのに。トリッキーだ。

とにかく台詞が面白い。ただの掛け合いではなく意味もある。間がいい。ちょっと変わった隅にいる人、あまり積極的には関わりたくないでも気になる人を描くのうまい。そして必ず心に刺さるような過去、展開が組まれてる。最後にはほろりとさせつつ、続く日常へ戻す。脚本、本当に素晴らしい。

 

これでいてミステリーサスペンス。しかしコメディ。

解離性同一性障害ではなくても、人の中にはもう一人の自分がいる。

マーヤのヴェールを剥ぎ取るんだ。

 

★★★★★