ミュージカル『レ・ミゼラブル』
2021帝国劇場(東宝)
(当ブログ内に映画版でネタバレしているので、ここではあらすじも割愛します。)
キャスト
ジャン・バルジャン=吉原光夫
ジャベール=川口竜也
ファンテーヌ=知念里奈
コゼット=熊谷彩春
エポニーヌ=屋比久知奈
マリウス=内藤大希
テナルディエ夫=斎藤司
テナルディエ妻=樹里咲穂
ガブローシュ=重松俊吾
アンジョルラス=相葉裕樹
指揮 若林裕治
ヒュー・ジャックマンの映画版はもう3回以上観てるし、そのサントラ盤はBGMにするほど。これをどう舞台にして、あの歌をどう日本語にして、俳優たちはどれだけの歌唱を見せる聴かせるんだろうと楽しみにしてた。その期待が裏切られることはなかったし、素晴らしくて感動した。
日本語歌詞は物足りなさが否めず、特にエポニーヌ像が映画と比べて雑な印象を受けたこと、ジャベールの自身の過去や宗教観の延長にある信念とバルジャンが突きつけた現実の間でのゆらぎが浅かったことなど残念だったけど、一音一文字らしいので仕方ない。
ガブローシュが撃たれるところから蜂起が失敗に終わるところまで、涙が出そうだった。演出力だ。
知念ファンテーヌが瀕死の状態でベッドに横たわりながら歌うことに驚き、吉原バルジャンが年齢に合わせた声質と歌い方に変えていくことに驚き、結婚式のシーンに続くマリウスの早着替えに驚いた。
他に、工場のシーンでのファクトリーガール(島田彩)がすごく良かった。ファンテーヌの登場なのに、ファクトリーガールに耳が行ってしまう。声質かな、存在感がある声をしてる。
娼婦が溜まってる路地裏のシーン、決起及びバリケード越しに戦うシーン、ジャベールが身を投げるシーン、ガブローシュが撃たれるシーン、下水道を進むシーン、が印象に残った。特にジャベールが川へ落ちるシーンの舞台演出は、なるほどそう付けるのかと、感心した。
そして、娼婦たちのシーンもそうだけど、テナルディエの宿屋での客たちのやりとりなど、その他群像シーン、目が追いつかない。この点だけでもリピートする気持ちがわかる。
私はこれが初めての日本版ミュージカル『レ・ミゼラブル』で、友人の薦めもあって吉原バルジャンを取った。その他のキャストは一切こだわらず、吉原バルジャン固定でなんとかやっと取れたチケット。
取れにくいとは聞いていたけど、なるほどコロナ禍でも見渡せる限りは満席。そして演者の高い技術、衣装も舞台装置も美術も構成展開も豪華でスムーズで映画版と遜色なし。
カーテンコールまでが感動的だった。なんのことはないただのカーテンコールなのに、舞台上の役者たち(カンパニーというのか)の一体感が美しくて、心からの拍手で称えた。こんな本気めったにない。だいたい普通はお約束だから…という拍手だし。そして客席は手を掲げての拍手多数でスタンディングオベーションである。コロナ禍でなければブラボーの嵐だったろう。
また観たい。
こんなクオリティの高いものを観たら、今後ゴリ押し俳優のミュージカルなんてまともに観られない。これがお金を取るプロの仕事だと思った。さすが毎回オーディションでのキャスティングだ。