読み始めてすぐ、いや、本当は読み始める前から、探しているような本ではないことは明らかだった。
読書が好きと言えるほどの作者や作品の知識を持たず、極めて狭小な範囲のものしか読まないため、この作品が属するジャンルを何と呼べばよいのか分からないが。一時期(?)流行ったケータイ小説みたいな感じかな。いや、ケータイ小説も読んだことなく、イメージで物を言っている。
電車のシートにややだらしない気味に座り、せっかくの景色や人間観察なんぞに関心を持たず、ひたすら液晶画面を見つめて文字を打ち込む。そうやって作っているのがケータイ小説という、イメージで物を言う、再び。
いくらアメリカだからって、いくらニューヨークだからって(あ、もしかしたらニューヨークじゃなかったかも。ま、いいや。)、夫の金で毎日、美容と美食と遊びの性ばかりの妻たちが、まるでママ友たちみたいに表面仲良しグループでサロンやレストランに集ったりしているかね。妻の誕生日に豪華な戸建ての家でパーティはいいが、庭に誰もいない物置のような小屋があったり、そんな小屋が二階建てで、いくつも部屋があって、物音がして上がって行ったら思いもかけず死体を見つけるという場面にぴったりだったり。偏見的思い込みとは分かっているが、電車内でわき目も降らず小説を紡ぎ出している作者の姿が浮かんでしまう。
こんなに貶しておいて、実はあまり我慢する気持ちにもならず、スイスイと最後まで読んだ。
短い章ごとに第一人称が区別されていて、しかも、それが章のタイトルにまでなっている親切さで、人物形成と人物関係が小説とは思えないほど分かりやすい。だから、半端な集中でもスラスラ進む。これは絶対に考えさせられた李しないと見限ろうとするが、死体と写真に写っているって、それどういうこと、シリアス過ぎる。まさか、社会的切り口もあるのか、と疑わせる。一瞬だけど。ってなことで、最後まで到達。終盤のどんでん返しに、ケータイ小説をダメ押しされた。
さすがに、本編修了時には、「なんじゃこりゃ」と声が出たが。エンドクレジットを聴きながら、最後まで読んでしまった理由(言い訳)を探した。それが、まあ、すぐ上に書いたようなことである。
Rick Lewis: Audible hopes you've enjoyed this program!
しュさい: Well, after all, all in all, I enjoyed.
WHAT'S WRONG?
One of Us Is Dead
著者: Jeneva Rose
ナレーター: Andi Arndt, Hillary Huber, Elizabeth Evans, Brittany Pressley, Cassandra Campbell
再生時間: 9 時間 22 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2022/04/26
言語: 英語
制作: Blackstone Publishing
https://www.audible.co.jp/pd/B09G8VRRKD
パルコに芝居を観に行くことになり、同行の友人が前もって劇評など送ってくれる熱心さだったのに合わせ、うろ覚えの記憶をはっきりさせるため、オーディブルで聞いておくことにした。
朗読図書はあくまでも朗読図書であって朗読劇にして欲しくない、というのが、戯曲好きの私の心からの希望だが、今までに見つけた戯曲はどれも、複数人数で配役を割り振った朗読劇か、あるいは、実際に演じてもいるらしきものの録音ばかりだ。この作品も音響効果付きの朗読劇版。妻が像を結ばない。
オーディブル版でも、パルコでの部隊を観ても、アーサー・ミラーの作品からは、もう、なぜか空虚で心に響くものがなくなってしまった。「セールスマンの死」の後に、シアターコクーンで「みんなわが子」が上演されていたのも観たが、やはり同じように感じた。20年かそれぐらい前に戯曲を読んだときには、当時もすでに物語の年代とは時代は移っていたものの、描かれた人々の、「セールスマン~」の閉塞感とか、「みんな~」の足元の脆さとかに、感情移入することはできた。いま、それができないのは、だから、物語の部隊と時代が違うという理由ではない。
アーサー・ミラーの描いた行き場のなさは、私にとってもはや身につまされるものではない。今の世の中への、他社への、自身への、失望や不信や戸惑いややるせなさのほうが、セールスマンのウィリーや彼の家族のそれよりも、もっと重苦しいものに思えるからだ。
Death of a Salesman
著者: Arthur Miller
ナレーター: Thomas Mitchell, Arthur Kennedy
再生時間: 1 時間 26 分
オリジナル版 オーディオブック
配信日: 2010/03/29
言語: 英語
制作: Naxos AudioBooks
https://www.audible.co.jp/pd/Death-of-a-Salesman-%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF/B07DQG1P92?action_code=ASSGB149080119000H&share_location=pdp&shareTest=TestSha
夫のことでイライラしているときに、遊んで興奮してギャーギャーとうるさく騒ぐ2人の息子をようやく車に乗せ、家路をたどる途中で、まだ赤ん坊の女の子のことをすっかり忘れて、籠ごと駐車場に置いてきてしまったことに気づく。まあ、とんでもないことだけれども、ありそうでもある。
彼女は、夫も幼い息子たちも完全に捨てて、社会から逃れて山の中でキャンプして暮らす。
一方、こちらも社会との関係を断って暮らす女に拾われた赤ん坊は、女から、普通の人間の子ではない特別な子どもだと聞かされ、学校にもいかないで育てられている。
キャンピングカーで山の中で暮らしたり、森に囲まれた一軒家だったり、それでもって、見回りのレンジャーがいたり、家の周囲を柵で囲ってカメラやブザー付けたり、などなど。アメリカじゃないと、こんな話は作られないだろうね。
不幸な母親も、不幸な娘も、どちらもそれぞれ自分のことだけの性格だ。そして、二人とも、はねつけられながらも好意を与え続けてくれる友人やその家族に恵まれ、献身的な男に支えられる。
我の強い女、よいように使われることを屁とも思わない愛情深い友人、女にすべてを捧げることが当然な男。やっぱりアメリカだ。
The Light Through the Leaves
著者: Glendy Vanderah
ナレーター: Susannah Jones
再生時間: 14 時間 14 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2021/04/01
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/1713560941
町中に本屋があって、また、私も何かと本屋に行っていた頃には、海外の作家にはまるで興味がなかったので、作家の名前を全然知らない。翻訳ミステリの文庫本では、比較的古いミステリとかアンソロジーには解説が付いていて、その本に登場しない作家の名前が出てくることもしばしばなので、ありがたい。
初めてシャーリー・ジャクスンの作品(翻訳もの)を読もうと思ったのは、ヘレン・マクロイか誰か、当時、面白がって読み始めていた海外女流作家ミステリ作品の開設の中に出てきていたのを、同時期に久しぶりに再読した、宮部みゆきの「模倣犯」のエピグラフにも登場していたからだ。
以来、私はこの作家が好きなわけだが、残念なことに、オーディブルには、古い作品は製作されていなかったり、月額に含まれる対象外だったりするものが多く、Jackson作品はウィッシュリスト行きとなっている。
本書は、そんな中でも貴重な月額対象ものである。
セーラム魔女裁判と言えば、アーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」。
舞台作品は、新国立劇場小劇場で、鈴木杏が演じたアビゲールが強烈だった。演出は宮田恵子。
その後、シアターコクーンでも別カンパニーによって上演されて、こちらは夫婦役の堤真一と松雪泰子の印象が強く、アビゲールはうるさいばかりでよくなかったと記憶する。海外から招かれた演出家によるものだったが、ミュージカルならともかく、日本語のセリフが分からない演出家が演出するのには無理があるんじゃないだろうか。
気に入っていた新国立版が、後のコクーン版に上書きされてしまったので、そろそろまた新しく上演してほしい。
書物ではなく部隊のことになってしまった。
本書は短く、一気に読める。Shirley Jacksonのクールな筆致が冴える。
The Witchcraft of Salem Village
著者: Shirley Jackson
ナレーター: Gabrielle de Cuir
再生時間: 3 時間 9 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2014/10/28
言語: 英語
制作: Skyboat Media, Inc.
https://www.audible.co.jp/pd/1483033376
ロボトミー手術といえば、戯曲の「カッコーの巣の上を」(劇書房、Dale Wasserman 著、小田島雄志訳)の強烈な印象を思い出し、それから、まだ何かあったなと、しばらく考えて、東野圭吾の小説「宿命」を思い出す。ちなみに、戯曲の原作小説「カッコーの巣の上で」(by Ken Kesey)と映画は未読・未見である。
「カッコー~」は、患者たちが描かれることで悲しみや憤りの感情が揺さぶられる傑作で、手術をする側は冷徹なシステムであった。「宿命」では手術する側の事情も書かれていたが、ミステリ小説なので、背景事情の説明の位置づけだ。
本書では、ロボトミー手術を推進する医師の、医業で名声を得ることへの執着から暴走していく様子を主軸にしている点が面白い。
一方、「カッコー~」や「宿命」では別世界だと思っていた患者のほうは、知人や自分でもおかしくないような身近さを感じた。今の時代は誰が精神を病んでもおかしくないと、私自身が考えているからだろう。
医師は、当然、悪役なのだが、いま現実に活躍し、また、活躍しようとしている優秀でアグレッシブな人たちも、より豊かな社会のための成功を追求しているのであり、両社の違いは何なのだろうか。
ただ、そういう素晴らしい人たちに対しては、私が本書の主人公の医師に向けた「名声を得ることに執着」とか「暴走」という言葉を、使っていないだけのことかもしれない。
The Lobotomist's Wife
著者: Samantha Greene Woodruff
ナレーター: Cassandra Campbell
再生時間: 9 時間 4 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2022/02/01
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/B09FRQFNN9