なぜだかありがたい感じがする Paul Auster の作品が、月額プランの対象になっていた。確かではないが、対象はどうもときどき変わっているようなので、今のうちにということで、日本語で読んだ記憶のない本書を早速ダウンロードした次第。

「ありがたい感じ」に通じるが、ポール・オースターが好きと言うと何となくカッコいい。そんな下心が私にもあったせいで、好きな作家の1人としていたが、本心、リストから外すのが正直なのではないかと、作品を読む度に考える。


本書の3作も序盤から興味を惹かれる設定なのだが、盛り上がりのないままというか、ドッキリしないというか、物足りない感を抱かされる。
いや、逆か。読み終えて何か物足りなさがあるのだが、いくつかの独特な面白いポイントがある。

この本には、本編終了後に作者のインタビューが収録されていて、それがとてもよい。
作者の声や話し方を聴くと、作者は、本を読むことも書くことも愛していて、尊大でも卑屈でもない。相手の話を聞いて(一方通行でなく)会話にしていて、自ら説明を楽しんでいる。良い人の印象だ。
本編は、それぞれ、設定や話の中のアイディアが面白いのに、やはり、平たんな印象で物足りなさがあったけれど、巻末インタビューのおかげで読後の満足度が上がった。
当然のことだけれど、作品は人が書いたものだということ。何もかもすべてが自分と同じ感覚の人なんていない。
友人を見回してみても、合わない部分があっても、結構、オッケーだもんな。

とは言え、物足りなかった感覚を忘れて、また、ポール・オースターを読みたくなるまでに、しばらく時間がかかるだろう。
 

The New York Trilogy
著者: Paul Auster
ナレーター: Joe Barrett
再生時間: 12 時間 41 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2009/08/11
言語: 英語
制作: Audible Studios
https://www.audible.co.jp/pd/B07DQJGH85
 

オーディブルにまだ慣れていない頃に読んだので、読み始めてからシリーズものだと気づいたが、支障はなかったし、面白いのでそのまま一気に読んだ。

物語の中心人物は2任の女(姉妹)。姉妹の父は、かつて、逮捕直前に死んだ殺人鬼であった。父が死んだ当時、妹はまだ生まれて間もない赤ん坊だったが、姉は物が分かる年になっていて、幼い頃の環境の影響を受けた姉は、人を殺したり傷つけたり、自傷行為をするため、閉鎖病棟の中の一生を余儀なくされている。
冒頭、シリーズ主人公の女刑事 D.D.は、ある殺人事件現場で何者かに襲われて大けがをするが、彼女のリハビリを助けるクールな治療師が、姉妹の妹のほうである。妹は、生まれつき身体の痛みを感じることができない体質で、温度変化なども危険なので、厳格な自己管理の生活である。
D.D.ら刑事たちは気が付かないが、読者には、彼らの追う殺人事件に妹の行動が重なって見えてくる。
そんな妹と、目くらましのための設定だと思っていた姉との、悲しい物語だった。

Detective D. D. Warren シリーズは短編・長編合わせて多数ある。シリーズの主人公である D.D.は、えらく優秀という設定の刑事だが、いいとこ取りばかりであまり活躍しない。しかし、このシリーズの面白さは彼女ではなくて、事件の渦中の人物の物語だ。だから、D.D.を持ち上げるだけの短編は(全部は読んでいないが)面白くない。
長編は、本作と別の数作を除き、Flora Dane という、ターミネーターみたいな若い女と彼女の経験が取り上げられるので、発表順を無視してランダムに読んでいると、「あれ、これ読んだやつかな」と混乱する。確かに、Floraのエピソードは凄まじく、いつの間にか、シリーズ名も "D.D. Warren and Flora Dane Novel" となるのも仕方ない。

書籍情報をコピしていて、いま、気づいたが、私が読んだのは要約版だった。なるほど、他の長編と比べて短かったな。最初に読んだせいか、分からなかった。
この作者の作品はどれも、文体とナレーターの技量とのおかげで、分かりやすく、聞きやすい。

Fear Nothing
Detective D. D. Warren, Book 7
著者: Lisa Gardner
ナレーター: Kirsten Potter
シリーズ: A D.D. Warren and Flora Dane Novel
再生時間: 6 時間 51 分
要約版 オーディオブック
配信日: 2014/01/07
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/B07DYTVQB7

 

昔よく見ていた「土曜ワイド劇場」とか「火曜サスペンス」とか(金曜は何だったかな)は、慣れてくると明らかというかあからさまに伏線を拾っているカメラワークや、漏れなくきっちり説明するところが、小馬鹿にするポーズを取りながら、実は楽しくて好きだった。"The Professor" から始まる、元教授の弁護士 Tom McMurtrie のシリーズの語り口は、「火サス」や「土曜ワイド」を彷彿させる。どの作品も、あまり長くない中に展開を詰め込んでいるのも、2時間ドラマ的だ。
そういうわけなので、法廷ミステリであり、トラックの違法な過剰勤務による事故から始まる話であっても、硬派・社会派小説と見誤ることはない。
ただし、2時間ドラマのように、最後まで誰が犯人か分からない(分かるけど)、というのではなくて、善い者と悪い者ははっきり区別されている。もう少しグレーなものを組み入れるほうが面白さが増すのではないか、などという、読者のお節介はまったく聞こえないどころか、悪い者はどこまでも際限なく悪い。
ということで、せっかくの設定ながら、法廷ミステリとしての味はあまり感じられないシリーズだけれど、「火サス」あるいは「土曜ワイド」的な味に魅かれて、読んでしまう。

シリーズ第2作のこの "Between Black and White" は、一番面白かった。本作の中心人物 Bo は、(第4作によると)老弁護士 Tom が家族の次に愛しているという存在に設定されていたそうだが、第1作で名前を聞いた記憶はない。そこは別に気にすることではないが。この Bo の人生がものすごい。が、ここも2時間ドラマ並みの速度で、深く入ってゆくことなく、どんどん進む。
衝撃なのは、裁判の結末が判明してから、最後の最後に明らかにされる Bo の人生に関わる秘密だ。「そこまでして、どうするの」と唖然。

シリーズ第1作では、雑に始末した点がいくつか気になったが、雑なところは第3作の話になっていた。知らずに雑と言って悪かった、という気持ちで読み進んだものの、第1作でのチョイ役がなぜだかモンスターになっていて、シリーズ最終作はそいつの話になる。
3作目の途中から、何だかどんどんハチャメチャになってきて、あさっての方向に走ってゆく作者の遠ざかる背中に、「読者は「おーい、どこ行くんだよー」と叫ぶしかない。
とにかく、そっちの方向について行ったら、結局、第1作から想定されている場所と同じ終点にたどり着いた。終点はここしかないんだけれど、途中からあんな道を通ってくる必要あったかな。普通の道のほうがよかったのでは。

2作目まででよかったのではと思います。


Between Black and White
McMurtrie and Drake Legal, Book 2
著者: Robert Bailey
ナレーター: Eric G. Dove
シリーズ: McMurtrie and Drake Legal Thrillers
再生時間: 9 時間 37 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2015/12/27
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/B01L9ZCU1Q

The Professor
McMurtrie and Drake Legal, Book 1
著者: Robert Bailey
ナレーター: Eric G. Dove
シリーズ: McMurtrie and Drake Legal Thrillers
再生時間: 10 時間 22 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2015/12/27
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/B07F1PXSTB

 

タイトルのウマさだよな。Cleo McDougal と固有名詞を出されれば、どんな人だ? とまず引っ掛かる。
私なんぞは、かつての映画「ブリジット・ジョーンズの日記」を取りとめなく思い出した。'Regrets Nothing' というのだから、気の強い女の話だろうとは思うが、何と、大統領を目指すような政治家だとは。これでもう、読むよね。
コンテンツの作りもウマい。出だしから無駄なく人物を印象付け、もったいぶった描写なしに、軽快な店舗の会話で環境設定されてゆく。映画やテレビドラマの台本でこそないが、とてもよく再現されたノベライズ本といった感じ。
登場人物の配置と属性も、これは映像という観点からだけではなくて、現代の大衆向けコンテンツのスタンダードと言うべきなのかもしれないが、自由なようで実は典型である。
つまり、安心して楽しめるハリウッド映画です。

ただし、いや、だから、ある朝、"Cleo McDougal is not a good person." と新聞に大々的に広告を掲載したのが、かつての親友だというのは、一気に引き込まれる書き出しだが、すべて解決してみると、どうしてあんなに怒っていたのか、考えてみると無理やりのような。もう話は終わってるから=映画終わったから、もうどうでもいいんだけどさ。

本書自体は映画化されるのかどうか、雑にググっただけでは分からなかったが、作者の別の作品は映画化されたか決まっているか、らしい。やっぱりね。
作者はマーケティングを勉強した人だそうな。飛ばし読みなので不正確かもしれないが。やっぱりね。

日本の最近の小説でも、最初からありきなのかどうか、映像化を見据えた作品とか、そうでなくても、読んでいてカット割り付きの映像が浮かんできてしょうがない作品が多い。そういう作品も、もちろん、あってよいと思うけれど、同じ書物を読んでも、読む人それぞれが別のイメージを思い浮かべるというのが、文字で書かれた本の面白さだから、そこが失われることがないようにと願う。
オーディブルのような朗読本は、朗読者の読み方によって、文字を直接読むよりも読者のイマジネーションの幅が狭められることにはなるけれど、それはまた少し別の話。そういう話は、いつか、朗読本好きの人や文字を読めない本好きが集って語り合いたい。

Cleo McDougal Regrets Nothing
著者: Allison Winn Scotch
ナレーター: Julia Whelan
再生時間: 10 時間 21 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/08/01
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/1799759032
 

Lisa Gardnerの作品を続けて読んでいたせいか、私の履歴とは関係なく推奨しているのか、この本がお勧めにいつまでも腰を据えていた。お勧めには信用が薄いので読まずにいたのだが、以前このブログに記録した "The Light Through the Leaves" からのつながりで、駐車場で子どもがうんぬんとの内容紹介だった "The Servants of Twilight" が面白かったので、同じ作者のこっちも読んでみた。

生物改造で誕生した恐ろしい敵との闘いの話。たぶん映像化されているだろうけれど、スリルとアクション、そして、なぜだかほんわかした雰囲気がどこかにいつも漂っているのが、ハリウッドっぽい。日本で同じような小説や映画が作られるとすると、金箔したシーンの中にあるのは悲壮感とか生真面目さみたいなものになりそうで、根明な感じを想像するのは難しい。
元来、私は、今はまったく流行らない(どころか、高原するのも少々の有機が必要な)コスモポリタン主義なのだが、だからと言って、アメリカはああだ、日本はこうだ、と言うのは全然おかしくない。コスモポリタン主義が厳密にどういうものだか実はよく知らないが、私の主義は、「どこもみんな同じ」ではなくて、「違う者同士が違いを許容し合う」である。異端や半端を排除してはいけない。散らばり、こそが重要だ。現代科学技術の根本でもあるんだから。
ズレたことをまたまた記して、いつも通りに数行を削除しようかとも思ったけれど、本日は気分としてこのまま残す。

この作品の後も、作者の Dean Koontz はお気に入りになりつつある。人物の造形や人間関係に、物語の顛末や会話に、にじみ出てくる、作者の優しい人間性が私には心地よい。小説界でもう無意識に横行する、美女とか美男にして即席のインパクトを狙ったりすぐに恋愛を持ち込んだりしないところもよい。まあ、結局、多少はそうなっているが、ストーリーが進む前に急いでそうやってはいないという点で、他と比較しての「よし」。

それから、この作者は犬が好きだね。私も犬好きだ。別のシリーズでも、やはり犬が出てくる。今のところ私には、Dean Koontz と言えば犬、である。
作品のように特別なことをしなくても、犬にとって、人間の言葉なんか分かるのは簡単だ。犬だけでなく、多くの生き物は人間よりもはるかに何でもできるし、知識も理解もずっと上である。生物の中で、人間がどの程度のランクにあるのか分からないが、かなりの下位にいるはずだ。伝達できず、概念の形成もできないので、言葉を使うしかなく、肉体と知恵でできることがほとんどないので、道具を使うしかない。欲望を抑えることができず、過ちに学習しない。
そんな人間の世界でも落ちこぼれの私だ。社会の役に他党などと、無駄な努力や疲労は、きっぱり振り捨て、これぞという本を求めて、今日もオーディブル三昧だ。

Watchers
著者: Dean Koontz
ナレーター: Edoardo Ballerini, Dean Koontz
再生時間: 16 時間 31 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2018/05/15
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/B07DNS3TLP

The Servants of Twilight
著者: Dean Koontz
ナレーター: Hillary Huber
再生時間: 15 時間 46 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2021/10/26
言語: 英語
制作: Brilliance Audio
https://www.audible.co.jp/pd/B09HY43WY6