※本の内容の紹介があります。ネタバレご注意ください。

 介護の明日を考える会(通称かいあす)のWEB輪読会ミーティングは、2023年8月から5冊目の教材「起業家ナース」を読み始めました。

 親の会社の倒産に始まり、歯科助手・金融関係・宝飾関係をへて、看護助手・看護学校・急性期看護で現場経験を積んだ筆者が51歳にして一念発起介護施設のオーナーになり、介護現場の改善に奮闘するノンフィクションです。勉強会前に読み始めている人もいたらしいです。

 メリヤス工場を経営する両親のもとに生まれた筆者は、進路に迷っていたおり、親の工場の倒産に突然直面し、働きだします。最初に勤めたのは歯科医院の歯科助手。しかしエプロンよりも、ハイヒールでオフィス街を闊歩するOLへのあこがれが募り2年で退職、金融関連の会社に就職、クレジットカードの受付窓口業務をデパートの店舗などで行う業務につきます。ところが、目の前でてんかん発作を起こしてしまったお客に遭遇し、こんな大変なことが起こる仕事は続かないと退職してしまうのです。これを契機にいよいよ医療職かと思いきや、次に就職したのは宝石鑑定所です。ここで彼女はバブル景気とその凋落を体験し、いつの時代も需要が安定している医療の道(厳密には医療機関)をようやく志すことになるのです。看護助手として勤務した病院では、「どうせそんなとしかできひんやろ」と看護師からつぶやかれた彼女は発奮し、看護学校を受験することを決意します。これまでの転職理由と少し風向きが変わってきます。合格した時27歳になっていたといいます。

 初回は、その後看護師として勤務した法人が運営する介護施設の管理者になるところまで読みましたが、ある輪読会メンバーは「ここまで来るのに前振り長いすね」としびれを切らしたようでした。しかし、バブルの話、看護師の看護助手へのつぶやきなど時代や職場の背景を感じれたのは、どんな時代に何を考えてキャリアを重ねたのかを理解する助けになったかもしれません。

 この筆者、働きながら准看資格とって、今度は国境なき医師団に参加しようと英語の勉強のためにと退職します。その退職金で渡米して金が尽きたら帰国してバイトしまた渡米と繰り返しかなりの英語力身に付けて帰国し、いざ医師団への参加申請しようとして、正看でないと申請できないと初めて気づいた、と書いてありました。

 正直、かなり、行き当たりばったりの前半の人生に、輪読会メンバーからは、「ちょっと変わった人かも」の声が聞かれだしました。しかしメンバーの中には営業職から介護職に転職して今がある、という者もいて、これを機会にその経験や原点を聴けたことはいい交流だったと感じました。

 この教材から、メンバーには、社会福祉士の親と作業療法学生、という、成人親子での参加という新しいパターンがあり一同歓喜にわく場面もありました。(医師K)

 (続く)