※本の内容紹介があります。ネタバレご注意ください。

 ユマニチュード4つの柱最後は「立つ・歩く」。関係性の構築の上に、多様なケア場面を使って1日合計20分の立位を目指す、1回40秒の立位保持をめざす、というものです。理学療法士からはリハの世界でもPOC(Point of Care)リハとして提案されているものと似ているとの声が上がりました。つまり、車いす移動の時に40秒、ポータブルトイレから戻るときに40秒、午前午後の体操の時に1分ずつ、とかいう具合ですが、これ、よほどチームとしての意思統一ができていないと、合計が何分かさえもわかりませんね。

 また、立たせるときの介助にはやはりかなりスキルが必要なんだと思われます。重さを支えてはいけない、むしろ立つ方向に抵抗を少し加えて反発を誘発する、力を必要とする場合はたいていケアの技術が間違っている、とか。やはり多数の直接介助の場面を通して培われた典型的な(おそらくアルツハイマー病や加齢脳の)反応のパターンに対する経験に裏打ちされたものである印象を受けました。

 訳語のせいなのか、率直な表現に私たちが慣れていないせいなのか、「高齢の女性の両膝を力ずくで拡げて陰部洗浄をしようとする看護師さんの行動(中略)、一般には性的暴行と表現されるものです」とか「(ベッドの)あいだには、椅子を置くスペースもありません、車いすも入りません。そこで働く看護師さんの中にはこの状態が寝たきりの患者さんを増やしている要因だと危惧している人は誰もいませんでした」とか、私たちから見ると、少なくとも今はこんなレベルにはなく、ちょっと現場の看護師さん読んだら怒るんちゃう?という意見も聞かれました。

  ユマニチュード4つの柱「みる」「話す」「触れる」「立つ・歩く」これをさらに同時に二つ以上組み合わせるアプローチや、関係性のための最初の40秒と最後の40秒のスキルについて学びました。出会いの準備・ケアの準備・知覚の連結・感情の固定・再開の約束の5つのステップには感心させられました。毎回の訪問診療の手順にも取り入れたいなあと感じました。

 全体を通してかなりインパクトの強い本でした。スキルやコンセプトのすばらしさはわかったが、チームで共有して組織的に取り組めたらどんなにいいだろう、というのがメンバー多数の感想でした。

 次はまた物語風の教材がいい、ということで、5冊目には「起業家ナース」という本が選ばれました。一般社会人から看護師になり、さらに介護施設のオーナー経営者になった著者の一人称ドキュメントです。看護師視点からみた介護事業所の在り方を問いかけるような内容も関心持てると介護職Nが言ってました。「僕らて、他の職種からどう思われてんにゃろう?」 (医師K)

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