5ヶ月ぶりに、本紹介の復活です。
また、ほそぼそと続けて行こうと思います。
うまくSNSと連動させながら進めていきたいと思います
復帰1本目は、国語教材ライターらしく、国語辞典でスタートします。
今日ご紹介するのは
『新明解 国語辞典』
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230501/01/mko-kotonoha/e0/3a/j/o1080107815277779221.jpg?caw=800)
このサイズの国語辞典では日本で一番売れていると言われています。
私の手元にあるのは、第6版ですが、最新版は第8版。全面改訂だったようなので、どう変わったのかは気になるところです
思い起こしてみると、私が初めて手にした大人の国語辞典が『新明解国語辞典』でした。
小学校のころは、小学生用の国語辞典を使っていたんですが、中学生になったときに、大人用の辞書を使うようにと言われて、家にあったのが『新明解国語辞典』だったんです。
アクセント表記
辞書って、どれも同じようでいて、結構違うんですよね。
個人的には、『新明解国語辞典』の最大の特徴はアクセント表記じゃないかなと思うんです。初めて発見したときにはびっくりしましたね。
あるとき、多分高校生になってたと思いますが、学校の宿題で言葉の意味を調べていてたら、ちょっと気になることが……。
意味調べって地道でめんどくさいじゃないですか。すぐに集中力が切れちゃうんですよね。そうすると、関係ないところパラパラ見てたりして、で、「あれ?」と。
なんか、見出しの言葉のあとに、□で囲まれた数字が書かれているんですよ。□1とか、□2とか。1とか2なら気にならなかったかもしれないんですけど、□0っていうのがあって、これが違和感あるんですよね。ゼロって何よ? 普通1からじゃないの? みたいな。めっちゃ気になったんです。
で、この数字は何を表してるのかなぁ、と思って、辞書の最初の方の説明を見たら、なんと、「アクセント」を示しているらしいと。
実は、この数字がアクセント記号になっていて、裏表紙の見返しに、その番号の意味が書かれてるんですよ!!!
これ、著作権が微妙なんですが、どうしても言葉で説明できる気がしないので、写真を掲載させてください。
ちょっとおもしろそうだったので、早速声に出して試してみたわけですよ。
宿題そっちのけで
そこでまた、目からウロコの発見!!!
実はこの表を見たらわかるのですが、同じ1拍の言葉でも0と1の2種類あるんです。
なんと、日本語のアクセントは、その後にくる助詞とセットになってるんですね。
この写真の表で言うと、
「葉」と「木」
その単語1語だけを発音するなら、どっちも同じなんです。当たり前ですよね。1音しかないんだから、差のつけようがない。
でも、日本語って、その後に助詞(てにをは)などをつけて話しますよね?
そうすると違いが出てくるんです。
「葉が(茂る)」と言うとき、「葉→が↑」って、「が」が上がるんです。
で、
「木が(茂る)」って言うときは「木→が↓」って、「が」が下がるんですよ!
ちょっと、声に出してみていただけます?
ね?
違いますよね?
ちなみに「は」を「は→が↓」と、「が」を下げて言ってみてください。
「歯が」となりませんか?
で、新明解で「歯」を引いて答え合わせをすると、「歯」は□1になってます
お、おもしろすぎる。
えーーーー、知ってました? 気づいてました?
私は、あのとき初めて知ったんです。
感動しましたね。
ただ単に、見落としていた辞書の機能に気づいただけなんですけど、もうなんか、世紀の大発見したような、めっちゃオトクな気分
その後しばらく、新解さんの適当なページを開いては、アクセント記号を見てそれに合わせて発音してみるという遊びがマイブームになりました。そうやって意識的に音に出してみると、毎日当たり前に使っている言葉が、ちょっとよそ行きというか、なんだろう、外国語というほどではないんだけど、違う言葉に感じられるというか……。母語を客観視する新鮮さ、みたいなのを感じたんだと思います。
アクセント表に合わせて声を出してみるのは結構楽しいので(何のトクにもなりませんが)、新明解国語辞典を持っている方にはオススメの暇つぶしです
でも、当時、その「ワタシ的世紀の大発見」のアクセント記号を友達に伝えたら、「えー、私の辞書にはないよ」と言われてしまいました。
へー、全ての辞書にあるわけじゃないんだ、とちょっと残念。だって、英語の辞書には必ず発音記号があるのに。
そう考えたら国語辞典に音に関する表記がないのはおかしいですよね。
国語辞典は日本人のためのものだから不要とか?
いやいや英英辞典だって発音記号出てるよ! だとしたら、日本語の発音記号が出ててもいいくらいでは? なぜなら、日本語は五十音とか言われてますけど、「ん」には「n」と「m」があったり、発音としては微妙なところあるんですよね。まあ、そこまでやるのは大変かもしれませんが、アクセントは、あったら絶対に便利!
しかも、この表。すごくないですか? 助詞まで含めた複雑なアクセントのルールが、拍数とアクセントパターンを縦横に置いて、こんなにコンパクトに1つの表にまとめられてるなんて!! 当時、この表そのものにも感動したのを覚えてます。さすが、言葉のこと知り尽くしているプロ!って感じがしますよね。膨大な言葉を分類して、法則を見つけて、わかりやすく整理する。考えただけでワクワクします。
で、今、ふとアクセントはいつから辞書に載っていたのかな、と気になったので調べてみたところ、「明解国語辞典」で既にアクセントが載ってたようなんです。Wikipdiaには「アクセントに関しては金田一春彦が協力した」ってありました。
おお、金田一春彦さん!
当時、もうこの表の形に整備されてたのでしょうか。気になるところですが、今のところ調べる術がないので、これについては宿題とさせてくださいませ。
運用欄
で。私の手元にある第6版で、アクセントの他におもしろいな、と思うのが「運用」という項目です。これが実生活に即していて、「あ、そういえば確かにそうだね」と、「当たり前」にイレギュラーな使い方をしていることに気づかせてくれる内容なんです。
例えば、「おかあさん」。
(以下、全て『新明解国語辞典』第6版より引用)
「意味」はこんな感じ。
「母」の尊敬語。自分の母親に呼びかける(を指して言う)語。また、相手や話題にしている第三者の母親を指していう。
うん、うん、その通り。わかりやすい。
で、「運用」。
(1) 他人に対して自分の母親を言う場合は「はは」が普通だが、親しい間柄では「うちのお母さん」のように言うこともある。
(2) こどものある夫婦の間で、夫が妻に呼びかけるのにも用いられる。
(3) 母親の立場にある女性に呼びかける(を指して言う)のにも用いられる。例「そこのお母さん/全国のお母さんがたの願い」
なるほど。
(2)(3)などは、日本語ネイティブの私たちには当たり前だけど、辞書の定義にはないですよね。
外国の方が(2)の場面に出くわしたら、びっくりするんでしょうね。「え? ずいぶん歳が近そうだけど、親子なの? どんな複雑な家庭環境?」とか、思ってしまうかも。そう考えると、この運用欄は日本語を学ぶ外国人にも役立ちそう。
(3)もそうですよね。
例えば商店街で、お魚屋さんのおじさんが、通行人に「そこのお母さん、今日はアジが安いよ!」って言ってても全然変じゃないけど、これ、英語で「Hey、mother!」はナイな。いや、なんだそれ? 学生の英作文とかにありがちだけど
という感じで、運用は結構おもしろいので、もう少しご紹介しちゃいます。
辞書遊びあるあるなんですが、「よろしくない」言葉を引いてみましょう。
「馬鹿」。
意味はいろいろ載ってますが割愛します。
運用が、なぜが「馬鹿」丁寧なのが笑えます。
(1)a 人をののしる時によく用いられる一方、心を許し合える間柄の人に対しては親近感を込めて何らかの批判をする際に用いられることがある。例「あのばか〔=ばかだといえる間柄の人〕が、またこんあことをして/ばかばか〔=女性が、相手を甘えた態度で非難して言う言葉〕」
b 度を超えて人がいい様子を、ほほえましく思って(皮肉って・自嘲して)言うことがある。例「あいつ(おれ)もばかだねえ」
(2) 「そんなばかな」などの形で、あまりにも意外なことに出会って、あり得ないことだという気持ちを込めて感動詞的に用いられることがある。例「もうすぐ会が始まるのに司会者が来ていないだと、そんなばかな」
女性の「ばかばか」の例が個人的にツボです。「女性が」って書くのはジェンダー的に勇気がいりそうだけど、イメージとして伝えるには「女性」と言いたいのもわかる。第6版は2011年発行だから、今ほどうるさくなかったのかな。最新版がどうなっているのか知りたいところですが、手元になく。わかる方がいたら教えてほしいです
この項の運用は、外国人だけじゃなくて、小学生とか中学生とか言語経験値の低い子供が本などを読んでいて、状況がよくわからないというときのつまづきの解消になりそうな内容だなぁと思いますね。経験値が低いと、知らない運用も多いですから。
コミュニケーションでも役立ちますね。「おまえもばかだねえ」って言われてね、表面的な言葉に反応して「カチン」ときちゃうことありますけど、相手からしたら「ほほえましく」思ってる(愛情表現)かもしれませんよ、っていうね。まあ、「皮肉って」いる可能性もありますけど
とにかく、この「運用」欄を見ていると、言葉としての定義と運用には乖離がありうるってことが、楽しみながら実感できます。
もう1つ出しちゃおうかな。
「ねぼける」の運用。
「何をねぼけているのだ(、顔でも洗ってこい)」などの形で、状況がよくつかめなかったりしてピント外れの言動をする人に対して、軽い非難の気持ちを込めて、からかって言うのに用いられることがある。
これ、「(、顔でも洗ってこい)」のくだり、いります?
でも、あったほうが確かにニュアンスがよくわかる
こういう、細かいところにツッコミを入れながら読むのも楽しいです。
世の中には、辞書や事典や図鑑などを「読む」人がいるようですが、なんでそんなことするのか、私には皆目見当もつきませんでした。でも、こんなふうに見ていくと、なるほど、知識の宝探しみたいな感じで楽しいのかもしれないなぁ、なんて思います。
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