【今日の1冊】川村裕子『王朝文化辞典』 | ことのは徒然

ことのは徒然

日々の徒然に思いついたことを書き留めてます。

今日ご紹介するのは

川村裕子『王朝文化辞典』

 

最初、タイトルを見たときには、国語の資料集みたいなものかな、と思ったんです。平安時代の衣食住や行事とかが、簡単なイラスト入りで説明されているやつ。古典の教科書の最後にまとめられている資料編の拡大版みたいな感じ。

 

で、まず、目次を見てみました。

 

Ⅰ 王朝の空間

Ⅱ 王朝のライフ・サイクル

Ⅲ 王朝のファッション

Ⅳ 王朝の日常

うん。想像通り。

 

で、例えば、Ⅰの空間だったら、「寝殿造り」「寝殿内部」「格子」「御簾」「屏風」……と項目が立っています。

うんうん。これ、辞書だよね。資料だよね。

「『御簾』ってどんなんだっけ?」って思ったら、目次を見て、「あ、御簾は43ページか」って、43ページを開くやつ。

 

たしかに、そういう使い方もできそうなんだけど、でも、違うんですこれ。イラストがあって、それについての説明もあるんですけどね。単なる説明じゃないんです。

 

なんと、読み物として楽しめるんです目

というか、ほぼ読み物ですね。

ありそうでなかった、読む辞典!

しかも、語りかけるような口調で文章が綴られているんです。

 

例えば最初の「寝殿造り」。

簡単な導入のあとに「さあ、それでは、早速彼らが住んでいた所に行ってみましょうか。」と促され、「あそこに、何かずいぶんと大きなお邸(やしき)が見えますね。」と続きます。まるで、ツアーコンダクター。読者は、作者に先導してもらう形で、寝殿造りのお屋敷を見て回るという趣向です。

 

「おや、あそこに何かを見つめている女性がいますよ。」と注意を促してから、しれっと『蜻蛉日記』が引用されます。そして、この日記の作者を紹介しつつ、作品の中に描かれている「寝殿造り」の様子を一緒に読んでいくという……。

 

この引き込み。圧巻です。

 

うわー、これですよ。

こういうことなんだと思う。

ずっと昔の、今とは異なる文化を持っていた人たちの生活を、今の私たちと同じ地平でつながっているものとして知っていく。

学びでイチバン大切なモチベーションだと思うんです。過去の人々の営みは、今の私たちに連なる何かであり、そこから私たちが得られるものがあるという感じ。それをこんな自然な形で実現してるのが、もうすごい。

 

引用もね、すごくわかりやすい現代語訳が示されていて、そのあとに( )でちっちゃく原文が入ってる。普通と逆ですよね。でも、そのおかげで、かなりハードルが下がってる。気になる人は原文もあわせて読めばいいし、それが負担ならとりあえず現代語訳だけ読んでいけばいい。ほんと気軽に楽しめます。

こんなちょっとした工夫で印象ってずいぶん変わるんだな、と勉強になりました。

 

で、なんと500ページ近い本文が、万事この調子。

読者に語りかけながら、流れるようにアテンドしていくんですよ。もちろん有名な作品の有名な箇所がふんだんに引用されていて、しかも、要所要所にしっかりとイラストが添えられている。これが、わかりやすさと美しさを両立させたモノクロ画。モノクロなのに雰囲気あるのがすごい。Amazonで表紙を見たときに、絵本でもないのに画家さんの名前が著者と併記されているのはなんでだろう、って思ってたんだけど、なるほど、納得です。

 

ところで私。実は、この本読み終わってません爆  笑

さすがに500ページはなかなか時間がかかります。

読み終わってないのに紹介とか、無責任かなと思ったんですけど、本当におもしろいので、少しでも早くお知らせしたい! ということで、フライングしましたニヤリ

 

大丈夫。この感じだと、最後までおもしろいはず。先に読み終わった方がいらっしゃったら、ぜひ感想教えてくださいニコニコ

私も楽しみながら読み進めていきますグッド!

 

✨Twitterで毎日配信中✨

https://twitter.com/mko_kotonoha

 

◆ ◆ ◆