我慢が足りないダメ人間が、一瞬で「7回選ばれた人」に変わった瞬間
私には、人に胸を張って言えない経歴がある。それは、7回の転職歴だ。
ずいぶん落ち着きがない、と思うだろう。私自身もずっとそう思っていた。
転職回数が増えるたびに、「また辞めたの?」「我慢が足りないんじゃない?」「飽きっぽい性格なんだね」と、誰かに言われたわけでもないのに、勝手に自己嫌悪に陥り、反省会を開いていた。
だから今の会社の面接を受けたときも、履歴書にぎっしり並んだ会社名のオンパレードを見ては、ウジウジと気後れした。
「7回も転職しているなんて、絶対にマイナス要素だ。どう言い訳しよう……」
面接だけじゃない。転職を繰り返してきた過去は、「ひとつのことも続けられないダメな人間なんだ」という、私のこじらせた劣等感そのものだった。
そんな私が50代になったある日、セカンドライフを考えるセミナーに参加した。
これからの人生を模索しようと集まった者同士で語り合う時間、私はいつものように自虐混じりにこう漏らした。
「私、7回も転職を繰り返していて、何ひとつ続けられたことがないんです。特別な資格も、これといった特技も、なーんにもなくて……」
すると講師の方が、首を大きく横に振った。
「それは、まったく違いますよ」
いやいや、違わないです。履歴書を見れば一目瞭然です。心の中でそう返した私に、講師はニッコリ笑って続けた。
「7回転職したってことは、7回採用されたってことですよね」
ん?そうだけど……。
「今、お話を聞いていて思ったんですけど、 7人もの目の肥えた面接官が、あなたと対話して『この人と働きたい、雇いたい』って思ったんですよ。それって、すごい才能ですよ」
「ええ!いや、でも、そんなこと言われたことないけど、そんな風に解釈しちゃってもいいんでしょうか……」
私の返事は、想定外の嬉しい言葉に一瞬パッと顔を明るくしながらも、「待て待て、舞い上がっちゃダメだ」とブレーキをかける、なんとも弱気なものだった。
頭の中では「えっ、えっ、えっ」と3回繰り返した。それくらい私にとっては真逆の言葉だったからだ。
だって「7回辞めた人」が「7回選ばれた人」になったんだよ。
それは、我慢が足りないダメ人間が、文字通り面接の達人へと変わった瞬間だったのだ。
同じ事実なのに、職歴欄の長さも内容も何ひとつ変わっていないのに、別の人の視点を通しただけで、これほどまでに短所が長所に、劣等感が自己肯定感に変わるのかと感動した。
その日以来、私は転職歴を隠さなくなった。むしろ話題にするようになった。新しい出会いの場でも「私、7回転職してるんです!」とあいさつ代わりにぶっちゃけるのが定番になっている。さすがに「趣味は転職です」とまでは言わないけれど、言いたくなる気持ちは毎回ある(笑)。
もちろん資格や技術で勝負できる人は素晴らしい。でも私は、それらを持っていない。だからこそ、「おっ、この人いいな」と思わせる「私という人間力」で勝負しようと、自分にGOサインを出せるようになった。
言葉には人生を変えるほどの力がある。
本のフレーズかもしれないし、誰かの何気ない一言かもしれない。それは長年抱えていた思い込みを一瞬でひっくり返してくれる。
私にとっては、「7回転職したってことは、7回採用されたってこと」その一言だった。
私の履歴書は、「根性なしの証拠」から「採用実績7件」という胸を張れる経歴書へと変貌を遂げた。
恐るべし言葉の魔力。そして、ありがとう、あの一言。
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