「あたしと仕事、どっちが大事なのよ」
この台詞を聞くたび、なぜか背筋が伸びる。
というより、現場の写真を見せられて、
なぜか自分が反省文を書かされている感覚に近い。
理屈で考えれば、答えは簡単だ。
生活がある。責任がある。仕事は大事だ。
でもこの問いは、優先順位の確認ではなく、
たぶん「今、同じ水位で慌ててくれるか」という生存確認に近いかもしれない。
問題は、そこから先だ。
仕事を理由に距離を取るのは、実はかなり卑怯な作業でもある。
忙しさは万能の盾で、「向き合えない自分」を正当化してくれる。
しかも厄介なことに、それはたいてい事実のような気もする。
一方で、この問いを投げる側も、
論理的に正しい答えを求めているわけではない。
欲しいのは説明ではなく、生理反応かも。
困る顔とか、言葉に詰まる沈黙とか、予定が少し狂う気配とか。
つまり「私はちゃんと影響を与えている存在か?」
という不安の確認なのだと思う。
結局この問いに模範解答はなさそう。
あるのは、その瞬間にどれだけ無様になれるかだけだ。
仕事も大事、でも今はあなたが大事。
そう言いながら内心で狼狽している、その姿こそが答えなのかもしれない。
……と、現場にすら立てていない人間が、
机の上で反省文だけを積み上げている。
どうやら私は、恋愛という科目の履修登録の前に、
「恥をかく覚悟」を登録し忘れて生きているようです。


