老兵は死なず 1 | 日々幸進(ひびこうしん)

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日々、自分が楽しくて生きている事を簡潔に記しておきたいと思います♪
演劇、音楽、TVドラマ、映画、バラエティ、漫画、アニメ、特撮、他を色々自分の視点で面白しろ可笑しくね♪

土曜日の夜、僕は仕事で 『夜勤管理員』 の受け継ぎをしてきた。

今日は、その時に出会った 『警備員』 の方の話をしよう。


彼・・・・・M本さんは、夜 勤務をする警備員だ。

時間は夕方の6時過ぎから次の日の朝9時までの警備だ。


M本さんは、この警備員になるまで他の仕事をされていた。

ほんの3年前までは・・・・・

そう、

その3年前までM本さんは何と○○銀行に勤めていたらしい。

しかし○○さんの金融政策により、破綻して潰れてしまったのである。

だが、M本さんの銀行は最後まで頑張ったそうである。

頑張ったが、最後の最後で破綻し解雇された。


それが3年前の出来事。

M本さんは32年勤め上げた銀行は跡形もなく消えた。

そしてM本さんも職を失った。

銀行にさえ勤めていれば、老後は安心・・・・・という時代は今は昔。

M本さんは、2人の子供を何とか育て上げたが、手元にお金は残らなかった。

だから仕事をしている。


M本さんは喋る時のクセなのか、何度も舌打ちをする。

怒っている訳ではない。

クセなのだ。

スグに普通に笑い話を始める。


人間には持って生まれたものがある。

それは僅かな差だが、【陰】 【陽】 に別れる。

M本さんは間違いなく 【陰】 かも知れない。

話していても、スグに無口になって挙動不審になる。

それが精一杯なのだという事は分かる。

何故なら僕も不器用だからだ。

だからこそM本さんの生き様が・・・・とても応援したくなる気持ちがわく。

勿論、何も出来ない。

同じ時間を過ごし、バカ話しをして笑い合うことしか出来ない。


警備員の服を着て寒空の中、外へ巡回に出るM本さんの背中を見て胸が熱くなる。


何が出来る。

何も出来ない。


『いってらっしゃい』


僕は明るく声をかける。

それが僕の出来る全てだ。


ちっぽけな僕の全て。



朝、M本さんと職場を離れた。

一緒に僕が帰る駅までの距離を歩く。

僕は電車だが、M本さんはバスだ。

その方が近いのだという。

M本さんは僕を気遣い何度も、

『大変やったろう?』

と、口にした。


僕は今、自分が歩んでいる人生に対して、M本さんが向かっている人生と何が違うのか?

涙が出そうになる。

憐れなのではない。

同情ではない。

ただ、こみあげるものがある。


生きる。


その事に対して 【真摯】 なM本さんに頭が下がる。

駅で別れたM本さんの背中を見送る。

縮こまっているはずの大きな背中。



また、会いに行きます♪