2024年9月1日午後2時 所沢ミュ-ズ キュ-ブホール 埼玉県所沢市

マルシン・ディラ ギタ-・リサイタル

 

 

前日8/31は台風のさなか京都市青山音楽記念館午後3時に演奏会。新幹線が不通となり埼玉県まで車で移動したのだろうか?結果的には無事に演奏会は行われた。

マルシン・ディラは1976年ポーランド生まれ、国際ギタ-コンク-ルでは有名なロサンジェルスのGFA国際ギタ-コンク-ルで優勝、5回目の来日。ディラ本人は上の写真より髭が濃くふけている。

 

・S.L.ヴァイス(M.ディラ編):リュート・ソナタ 第34番 ニ短調

ヴァイス(1687-1750)はポーランド人、ドイツの宮廷で活躍、同年代のJ.S.バッハ(1685-1750)と即興演奏の共演をしたといわれている。

リュート・ソナタ 第34番はリュ-トの曲らしいフレ-ズは残っていてバッハと同じような舞曲で構成されているがメヌエット2曲は省略して演奏。バッハより重々しさはなく聴き疲れせずBGMで使うには良さそう。

マルシン・ディラのギタ-はイタリア人ガブリエレ・ロディの新しい楽器。高音は金属的な音が聴こえないのが特徴で聴いていてとても柔らかい響き。

マルシン・ディラのギタ-演奏は控えめで奥ゆかしく繊細。スペイン人のメリハリをつける演奏スタイルではない。

 

・W.T.マティーカ:ギター・ソナタ ロ短調 Op.23

W.T.マティーカ(1773-1830)はチェコ生まれ。第1楽章は切迫した連打がシュ-ベルトの「魔王」のピアノ伴奏みたいに感じたが会場の冊子ではハイドンのピアノソナタ第47番第3楽章を引用、第2楽章は第47番第2楽章を引用していると記載。

ほぼハイドンのピアノ曲のギタ-編曲版を聴いたみたいだが何も知らなければ作曲技術が高い名曲に聴こえる。

演奏はクラシカルでクラシック・ギタ-演奏そのもの。

 

・L.バークリー:ソナティナ Op.51

L.バークリー(1903-1989)はイギリスの作曲家でフランス音楽の影響を受けている。20世紀の12音技法を取り入れているが曲は難解さがない。トレモロ、ハーモニックス、ラスゲア-ド(かき鳴らし)奏法を取り入れているがマルシン・ディラは上手さを誇示することはなく忠実に音楽に即した表現に徹していた。

 

・J.ロドリーゴ:祈りと踊り

ロドリーゴ(1901-1999)はアランフェス協奏曲が有名だが「祈りと踊り」はファリャの賛歌として「恋は魔術師」など引用されている。

マルシン・ディラの演奏はファリャのスペイン音楽の情熱的な激しさはなく音の響きに敏感で繊細な演奏。

 

・J.M.サンチェス=ベルドゥ:Kitab I

J.M.サンチェス=ベルドゥ(1968-)はスペイン出身、現代音楽の領域の曲でメロディ-ははっきりせず作曲家の意図がはっきりわからないがギタ-の胴を叩く奏法など音の響きが目まぐるしく変化しギタ-の響きの可能性を追求していることはわかる。マルシン・ディラの演奏は特殊奏法でもノイズは大きく出さず聴いて耳障りにならない。

 

・A.ピアソラ:5つの小品

ピアソラ(1921-1992)はアルゼンチン生まれのタンゴの革命児、最初はクラシック音楽の作曲家を目指したがタンゴに回帰。マルシン・ディラの演奏はピアソラの哀愁が表現され、今回の演奏会で最も印象が強い。

 

マルシン・ディラの演奏を総括するとギタ-を弾くときのノイズは目立たず金属的な響きは抑えられ柔らかく美しい響き。曲の解釈は自己主張せず曲のあるがままの姿を映し出す演奏だった。

席はXB列右、前から2列目の右で演奏者から5m位で細かい音がはっきり聴こえ良席。

318席のチケットは完売、台風の影響か少し空席があった。

曲目

・S.L.ヴァイス(M.ディラ編):リュート・ソナタ 第34番 ニ短調
・W.T.マティーカ:ギター・ソナタ ロ短調 Op.23
・L.バークリー:ソナティナ Op.51
---
・J.ロドリーゴ:祈りと踊り
・J.M.サンチェス=ベルドゥ:Kitab I
・A.ピアソラ:5つの小品

アンコール

・バリオス :マズルカ・アパショナ-タ

・ロドリ-ゴ:古風なテイエント