2024年7月6日午後9時15分 ヴェロ-ナ野外音楽祭 「Arena Di Verona Opera Festival 2024」 

ロッシ-ニ(1792-1868)「セビリアの理髪師」 全2幕

主な登場人物

アルマヴィーヴァ伯爵(テノ-ル):ディミトリ・コルチャクDmitry Korchak ロシア出身2018/2 新国立劇場「ホフマン物語」ホフマン役

バルトロ(バリトン)        :ミーシャ・キリラ Misha Kiria ジョ-ジア出身

ロジーナ (メゾソプラノ) :ヴァシリサ・ベルジャンスカヤ Vasilisa Berzhanskaya ロシア出身

フィガロ  (バリトン)    :ニコラ・アライモ イタリア出身 Nicola Alaimo 2023/2 新国立劇場ファルスタッフ役

バジリオ (バス)         :リッカルド・ファッシ Riccardo Fassi

指揮:ジョ-ジ・ペトロウ George Petrou ギリシア出身

管弦楽:アレ-ナ・ディ・ヴェロ-ナ財団管弦楽団

ヴェロ-ナ野外音楽祭は古代ローマ円形劇場の遺跡アレ-ナ・ディ・ヴェロ-ナで6月から9月にオペラなどが開催されます。大がかりなスペクトルのアイーダの舞台演出が有名で上演回数が最も多くなっています。

座席は歌手の声がよく聴こえそうな前から13列目の中央右寄りの2番目に高い席Poltronissima Gold。

Arena Di Verona財団HPの本人認証のSMSが着信せずチケット代216ユーロに代理店の手数料を支払い約47,000円。スタンド中央2階の前側なら半額近い117ユーロ。

S席相当でも2023年来日のローマ歌劇場ではB席の料金45,000円位ですが歌手の水準はローマ歌劇場同様に高かったです。

 

ボーマルシェの戯曲「セビリアの理髪師」がベースになってアルマヴィーヴァ伯爵がロジ-ナと結婚に至る物語、1816年ロッシ-ニが24歳で作曲。モーツァルトの「フィガロの結婚」は同じ登場人物でアルマヴィーヴァ伯爵結婚後の物語になっている姉妹作。

演奏開始前にドラを持った女性が2回登場し1回目はドラを1回、2回目はドラを2回叩いて会場を盛り上げます。

(第2幕が始まる前の写真)

1階席はほぼ満席、2階の舞台横のL,Rのスタンドの一部に空席、観客は1万人以上は入っていると思われました。

ヴェロ-ナ音楽祭のオケは10月から5月まではヴェローナのフィラルモニコ劇場の管弦楽団として活動しているようですがイタリアのオケならではのメロディ-を長く引きずらない序曲の演奏は歯切れがよくロッシ-ニの世界に引き込まれました。

舞台後方に反射板らしい緑の壁がしつらえてあり石造りのスタンドのクセのない残響も合わさって声は美声に聴こえました。

主要な歌手で共通しているのは全員声のとおりが良いことです。

アルマヴィーヴァ伯爵役とロジーナ役はロシア出身で声量もあり美声、難しいロッシ-ニの歌唱をこなしていました。

バジリオ (バス) のリッカルド・ファッシは他の歌手に比べ少し声量は小さいですが声の響きのとおりは良いです。

特に声量が大きいのはバルトロ役ミーシャ・キリラとフィガロ 役のニコラ・アライモの巨躯の二人。

ニコラ・アライモは輝きのある美声で2023年新国立劇場ファルスタッフ役同様に素晴らしい出来映えでした。

バルトロ役ミーシャ・キリラの悪役の目立った大きな声がより一層フィガロ役のニコラ・アライモの歌唱の引き立て役になっていました。

第1幕は終了し休憩となります。

 

オケピット

 

チェンバロ

 

バックスタンド中央

 

スタンド左から舞台を撮影

 

 

第2幕の筋書きは第1幕と変化はするものの曲想は基本的に第1幕を継承しています。

モ-ツァルト「フィガロの結婚」の感情の機微を捉える曲想の劇的な転換の上手さには「ナポリのモーツァルト」=ロッシ-ニは及びません。

6月指揮者の井上道義氏の話では自作オペラの早いテンポ3分間の部分では3日間作曲に時間がかかったと話してしていました。「セビリアの理髪師」は第1幕で39曲、第2幕で32曲と曲数が非常に多く、テンポが速めで美しい旋律と歌唱の難曲が多い名曲です。ベート-ベンは1822年ロッシ-ニに「セビリアの理髪師」へ絶賛のコメントを伝えたといわれています。

『私は町の何でも屋 Largo al factotum』は有名なフィガロの曲ですがモーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」と同じく重唱の名曲が多いのが特徴で聴いていてカオス状態の5重唱が最も聴き映えがしました。

1階前列では野外オペラであることを意識させない明瞭で美しい歌手の声を聴くことができ、また来年このオペラを聴いてみたいと思わせるほど歌手が充実した公演でした。