2024年5月30日午後7時 東京都交響楽団 第999回定期演奏会Aシリ-ズ 東京文化会館 上野

指揮 井上道義

曲目

・ベート-ベン 交響曲第6番「田園」

・ショスタコーヴィチ 交響曲第6番

 

 

 

・ベート-ベン 交響曲第6番「田園」

よく演奏されるこの名曲をわざわざ聴きに来た観客は少ないだろう。

隣の席にいた男性と会話しても同感のようだ。

この名曲の演奏に井上道義の演出の妙味が隠されていた。

照明を落とした舞台に小編成の弦楽器奏者、途中からトランペット、トロンボ-ン、打楽器奏者が加わる。

 

弦楽が小編成だとバロック音楽のような透明な響きに近づく。

編成が大きい弦楽器は響きがざわついて濁るが小編成だと響きの透明感が格段に優れ新鮮な響き。

おまけに木管のメロディ-がはっきり聴こえ曲想の田園風景が一層はっきりする。

 

井上道義の指揮はバレエの音楽のようでバレエの伴奏の音楽ではなく主役のダンサ-の踊りのような音楽。

小編成の「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」のオーソドックスな「田園」の曲想とは異なるがバレエ音楽好きにはこれはこれで面白い解釈の演奏。

嵐が吹き荒れ雷のようなティンパニ-の音が出るところが最大の聴きどころだった。

モーツァルトのドンジョヴァンニのフィナ-レ直前の地獄に落ちるドンジョヴァンニの場面のようにベート-ベンの仕掛けがここで入ってくる。

照明もせっかくだから雷のように点滅させると面白いと思うがクラシック音楽の演奏会では色々制約が多い。

 

都響の練習が不足しているのか演奏前に木管の奏者が練習。

いい予感はしなかったが案の定、金管でミスが目立った。

 

・ショスタコーヴィチ 交響曲第6番

この曲は4楽章ではなく3楽章の構成。

会場で配布された冊子によると第1楽章が抜かれた形とか「月光」がモデルとか諸説があるが意図は不明とのこと。

この曲を聴いた印象ではチャイコフスキ-の「悲愴」の冒頭に似た重苦しい開始の雰囲気。

そのあとも「悲愴」の雰囲気の軍楽隊の行進のようなメロディ-が現れる。

最後に交響曲の第4楽章がなく拍子抜けのように曲は終える。

人気が今一つ高くない理由はこの辺にありそうだ。

しかしショスタコーヴィチの曲想にいつもの謎がなく素直に純音楽として書かれた名曲に聴こえた。

ショスタコーヴィチはこの曲が気に入っていたらしい。

 

井上道義の指揮は派手なアクションは控えめでショスタコーヴィチの複雑な性格を表現しようとしていた。

井上道義のオーソドックスな指揮はオケも演奏しやすそうで透明感の高い響きで井上道義指揮のラストに敬意を表した本気度の高い演奏だった。

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席は4階 2列 中央付近、各楽器の音は小さめだがはっきり聴こえる。5階より天井が高いので圧迫感が少ない。

オケへの演奏に美しい響きのホールの残響音の応援はなくデッドで演奏のミスが目立ちやすい。

 

チケットは完売し、ほぼ満席。観客は中高年の男性が多い。

 

 

楽屋口から出てきた疲れた表情の井上道義氏

 

自分でおしゃれな愛車を運転してご帰宅の井上道義氏

 

退団したヴィオラの店村 眞積 (たなむら まづみ)氏が首席ヴァイオラの席で演奏。

 

南ドイツ フュッセン付近の田園風景 北海道美瑛の景色に似ている