2024年5月27日午後7時 サントリ-ホール
山田和樹指揮モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 p 藤田真央 第2夜
曲目
前半
・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
・ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 p 藤田真央
・ピアノ アンコ-ル
矢代秋雄「夢の舟」p 藤田真央、山田和樹
矢代秋雄 24のプレリュ-ドより第9番
後半
・サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op. 78 R. 176 「オルガン付」
アンコ-ル
・F.シュレ-ガ- 舞踏劇ロココより第3番マドリガル
・ビゼ- アルルの女 第2組曲第4曲「ファランド-ル」
・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
「牧神の午後への前奏曲」は1894年作。会場配布の冊子には「昼寝から覚めた牧神が夢うつつにニンフや美神ヴェヌスを抱く幻想に捉われるが、再び気だるいまどろみに落ちる」と書かれている。
WIKIPEDIAには1894年3月テレーズ・ロジェと婚約、ドビュッシーの恋人だったガブリエル・デュポンにより破談、12/22リリー・テクシエと最初の結婚と身辺はあわただしい女性関係。
牧神のフル-トがドビュッシー自身で次々に女性が登場し抱くのは夢や幻想ではなくドビュッシーの現実世界の反映。
ワ-グナ-の「タンホイザ-」状態なのがドビュッシー自身、タンホイザ-を救うため自己犠牲となったエリーザベトに相当するのが自殺未遂をした恋人のガブリエル・デュポン。
「牧神の午後への前奏曲」は何もいきさつを知らなければひたすら美しい画期的な印象主義の管弦楽法の名曲。
モンテカルロ・フィルの首席女性フル-トの音色に酔い、ハープや弱音器を付けた弦楽器の美しい響きはマーラ-の第3番や第4番の交響曲のように天国的だった。
・ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 p 藤田真央
1978年、40年以上前に聴いたアルゲリッチ,小澤征爾指揮ボストン響の演奏と比較し過去の演奏のうんちくを語るのは野暮だろう。
男性的な豪快なタッチのアルゲリッチに比べると藤田真央は昨日同様女性的、繊細で美しいピアノ。
日本人ピアニストがこんなに完璧に弾けるようになったのは喜ばしい。
特徴的だったのは第2楽章の美しいメロディ-でppを強調しラヴェルの名曲を慈しむかのような演奏。
豪快なアルゲリッチにはない日本人のデリカシ-に美点がある。
・サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op. 78 R. 176 「オルガン付」
モンテカルロ・フィルを意のままに操った山田和樹の指揮は3月小林研一郎指揮/日本フィルの同曲の演奏スタイルに似ているように感じた。
山田和樹は東京芸術大学指揮科で小林研一郎に師事した経歴を持つが山田和樹の指揮の演奏中は何故か小林研一郎の指揮を思い起こしてしまう。
その理由を考えると
・テンポ感覚がおおようでゆとりがある間の取り方はオケの音量を最大に到達させるためのコツ。
・ppは両者共強めでpに近い、響きの薄いオケを上手く聴かせるためには必要な指揮の技術。
・ゆったり踊るような聴き手を優雅な気分にさせる指揮技術。
・最後はあおるようなaccelerando(アッチェレランド)でぐいぐいラストに向かって突進加速する。
こうすれば間違いなく観客の大歓声は保証される。
これらの指揮技術を駆使した山田和樹の集大成のようなサン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付」だった。
アンコ-ル
・ビゼ- アルルの女 第2組曲第4曲「ファランド-ル」
昨日と違って最初からプロヴァンス太鼓が置いてあり、締めの曲だとわかる。
昨日勘違いしたのはプロヴァンス太鼓が熱気をあおっていたのではなく山田和樹がテンポを加速して煽ったということ。
今日近くで見たらプロヴァンス太鼓奏者とティンパニ-奏者は正確に指揮に合わせていた。
モンテカルロ・フィルの長所は
・日本のオケにはない華麗な響き
・山田和樹の指揮にピッタリ合わせられるリズム感の良さ
・日本のオケよりパワ-がある。特にチェロ、コントラバス、金管、打楽器
・打楽器の奏者間で音の合わせが揃っている
座席は2階RA4列のA席、舞台右の2階バルコニ-席。昨日の後方の席から比べるとチェロとコントラバスの音量は小さい。
ここではモンテカルロ・フィルの響きのあらが良くわかる。パリ管と音色の美しさの違いは歴然としている。
音量がffになった時の弦楽器の音はサン=サーンス:交響曲第3番の最後では良く響き音の硬さは軽減されて聴こえた。
チケットは完売でほぼ満席。中高年の女性が多めで若い観客も見受けられた、藤田真央の集客力だろう。
モンテカルロの風景
フランスからトンネルを抜けるとモナコ モンテカルロ駅だった
コンパクトで瀟洒な教会
お土産に旧市街のチョコレ-ト屋さん
モナコ王室こだわりの海洋博物館
ヨットハ-バ-
F1のスピンカ-ブ
正面にカジノの建物