2024年05月26日(日) 午後2時 東京芸術劇場 池袋
第266回日曜マチネーシリーズ
読売日本交響楽団
指揮 ユライ・ヴァルチュハ 首席客演指揮者
ヴァイオリン=周防亮介
コンサ-トマスタ- 長原幸太
リャードフ:魔法にかけられた湖 作品62
ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
ヴァイオリン アンコ-ル
タレガ(R.リッチ編)「アルハンブラの思い出」
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
・リャードフ:「魔法にかけられた湖」作品62
リャ-ドフ(1855-1914)はロシア・サンクトペテルブルク生まれの作曲家。リムスキー=コルサコフの作曲科に籍を置いたが欠席が多く除籍。1878年からペテルブルク音楽院で教鞭を執り、門下にプロコフィエフ。
1月にリャードフの交響詩「キキモラ」作品63をソヒエフ指揮N響で聴いた時はロシア5人組の後継者の曲としてロシアの民俗的雰囲気にデュカスの交響詩『魔法使いの弟子』の弟子のようにキキモラが変幻自在に動き回る曲想だった。
「魔法にかけられた湖」作品62は湖の情景を描いているがドビュシ-「海」の午前中の雰囲気やワーグナ-の「ワルキュ-レ」からのようなフル-トのメロディ-や後半は「トリスタンとイゾルデ」のような濃密な暗い雰囲気の曲想だった。
リャードフが「音の細密画家」といわれた本領を発揮した曲だった。
ユライ・ヴァルチュハはスラブ的な抒情をたたえた繊細な響きを創っていた。
リズム感が日本人指揮者にはないノリの軽さとエレガントで上品な感覚。
読響も指揮者の意図に沿った良い演奏だった。
聴いた場所の3階中央右寄りの前の席ではppでは弦の響きに豊かさが不足していた。
・ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
1940年に作曲され名ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフ初演でハチャトゥリアンが世界的に有名になった。
多民族国家のソ連時代を反映した民俗的な美しいメロディ-に古典主義の形式でソ連当局の歓迎しそうな健全な曲。
チャイコフスキ-のヴァイオリン協奏曲よりラロのスペイン交響曲を思い起こす明るいメロディ-と管弦楽。
ヴァイオリンの演奏の見せ場は多くハチャトゥリアン特有のリズミカルな曲は聴いていて楽しい。
指揮のユライ・ヴァルチュハのノリのよい伴奏がヴァイオリン独奏を引き立てていた。
ヴァイオリン独奏の周防亮介は素晴らしい出来栄え。
メロディ-の歌わせ方は情感が豊かでメリハリのエッジの効いた演奏は完成度が高くこの曲の演奏なら海外のオケで共演しても高い評価が得られるだろう。
欲をいえばヴァイオリンの音は客席までよくとおるが響きの豊かさが足りない。
日本の音楽系の財団などでもっと良い楽器を貸与できないものだろうか?
アンコ-ル
「アルハンブラの思い出」
美しいメロディ-にヴァイオリン奏法の編曲をした曲。
テンポが速くない曲では周防亮介の欠点がわかってしまう。
少し焦り気味に先へ急ぐ癖、完全に一音一音弾けていない音のつながり、音程の若干のずれ。
・チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
喜怒哀楽の変化量が少なく先のマーラ-3番で少し肩透かしのような情感が「悲愴」でもみられた。
情緒におぼれない知性的な指揮者の解釈の問題なので指揮が悪いわけではない。
後半の激しい響きと消え入るような響きの音の強弱のコントラストが指揮者の思ったようにはなっていないように見えた。
激しい響きの部分のパワ-は不足し消え入るような響きではオケの響きは痩せてしまう。
演奏者の技術と楽器の良し悪しに要因はあるが日本の各オケはppで豊かな響き、ffで豊かできれいな音を出すのは得意ではない。
前任の客演指揮者山田和樹はppは少し強めにしffの強さは抑え気味で音量差のダイナミックレンジは結果的に小さくなっていた。
座席は 3階-B列右よりのA席。オケの音は小さ目だがファゴット含め木管の音はすべて聴こえヴィオラがはっきり聴こえる。
席は9割以上満席に近い。多くは中高年の男女だが学生や20代の女性もいる。